GHS分類結果(過年度実施分類結果の再分類)

名称:オルト-アニシジン
CAS番号:90-04-0

結果:
物質ID: 21B3094
分類実施者: 厚生労働省、環境省
分類実施年度: 平成21年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H21.3版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性に関わる原子団を含まない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分外 - - - - 引火点:118℃(開放式)(ICSC(1999))というデータがあり、密閉式でも93℃を超えると判断した。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性・自己反応性に関連する原子団を含まない。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 発火点が415℃(ICSC(1999))で70℃を超えている。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属または半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含まない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - フッ素または塩素を含まず、酸素は炭素のみと化学結合している。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - -O-O-構造を含まない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データなし。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4 警告 H302: 飲み込むと有害 P301+P312: 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P330: 口をすすぐこと。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットLD50 = 2000 mg/kg(ACGIH(2001))、1890 mg/kg(EU-RAR(2002)、1150 mg/kg(環境省リスク評価第4巻(2005))に基づき区分4とした。
1 急性毒性(経皮) 区分外 - - - - ラットにおいて2000 mg/kgで死亡例を認めなかったこと(EU-RAR(2002))に基づき区分外とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - エアロゾルとして、ラットLC50>3.87 mg/L(EU-RAR(2002))。区分を特定できないので「分類できない」とした。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分外 - - - - ウサギの皮膚刺激性試験(OECD TG404)において紅斑と軽度の浮腫が観察されているが、パッチ除去後72時間以内に全て消失との記述(EU-RAR(2002))に基づきJIS分類基準の区分外(国連分類基準の区分3)とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2B - 警告 H320: 眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
ウサギの眼刺激性試験(OECD TG404)において結膜の浮腫と発赤、虹彩炎、角膜炎が観察されているが、適用後7日以内に全て消失との記述(EU-RAR(2002))に基づき区分2Bとした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - モルモットを用いた皮膚感作性試験で「a weak sensitizer」とする記述があるが、不十分な情報のため評価の妥当性に欠けるとしている(EU-RAR(2002))。また、本物質に代謝されるo-aminophenolを用いたマウスのLLNA試験(OECD TG429)で、用量に依存した陽性結果が得られたが、構造類似物質であるo-phenetidineでは陰性の結果が得られており、本物質を皮膚感作性物質とするには疑義が残るとしている(EU-RAR(2000))。以上の報告の他にデータはなく、データ不足により「分類できない」とした。
5 生殖細胞変異原性 区分2 警告 H341: 遺伝性疾患のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
マウスの骨髄細胞を用いた小核試験・ラットの肝細胞を用いた小核試験(体細胞in vivo変異原性試験)において陰性(DFGOT vol.10(1998))であるが、BigBlueマウス系を用いたトランスジェニックマウス変異原性試験における陽性結果(EU-RAR(2002))に基づき、区分2とした。なお、一部のin vivo DNA合成または付加体試験、宿主経由試験でも陽性結果(DFGOT vol.10(1998))があり、Ames試験・CHO細胞やヒトリンパ球を用いた染色体異常試験(in vitro変異原性試験)では+S9の有無にかかわらず陽性、陰性両方の試験結果の報告がなされている。また、EU分類では、MutaCat.3;R68に分類されている。
6 発がん性 区分2 警告 H351: 発がんのおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
IARCで2B(IARC73(1999))に分類されていることに基づき区分2とした。ACGIHではA3(ACGIH(2001))に分類されている。なお、ラットおよびマウスに2年間混餌した試験において、ラットでは膀胱と腎盂の移行上皮癌の有意な発生増加、マウスでは膀胱の移行上皮癌と移行上皮乳頭腫の有意な発生増加がそれぞれ報告されている(IARC27(1990))。
7 生殖毒性 分類できない - - - - データなし。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分2(血液、中枢神経) 警告 H371: 臓器の障害のおそれ(血液、中枢神経) P309+P311: 暴露したとき、又は気分が悪いとき:医師に連絡すること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットに用量690 mg/kg以上の経口投与後、メトヘモグロビン増加(EU-RAR(2002))が観察され、また別のラットの経口投与による試験(DFGOT vol.10(1998)、EU-RAR(2002))では、うずくまり、よろめき、自発運動低下、眩暈などの中枢症状が用量1250〜2000 mg/kgで認められている。さらに、呼吸障害、反射神経損傷等の中枢症状が用量3.87 mg/Lの吸入ばく露でも軽度ながら見られる(DFGOT vol.10(1998))、以上より区分2(血液、中枢神経系)とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分2(血液) 警告 H373: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害のおそれ(血液) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットの経口投与による4週間の試験において、溶血性貧血が80 mg/kg(90日補正:24.8 mg/kg)以上で認められている(EU-RAR(2002)、DFGOT vol.10(1998))ことに基づき区分2(血液)とした。なお、ヒトへの影響としてオルト・アニシジン(0.4ml/m3)に1日3.5時間、6ヶ月間のばく露を受けた労働者に貧血症状は現れなかったものの、スルホヘモグロビンとメトヘモグロビンの増加、さらには赤血球内においてハインツ小体が認められた(DFGOT vol.10(1998))との報告があるが、1例報告であることからヒトのデータは分類に採用しなかった。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分2 - - H401: 水生生物に毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
甲殻類(オオミジンコ)での48時間EC50=6800μg/L(環境省リスク評価第2巻, 2003)であることから、区分2とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分外 - - - - 急速分解性があり(TOCによる分解度:92.9、72.3%(既存点検, 1977))、かつ生物蓄積性が低いと推定される(log Kow=1.18(PHYSPROP Database、2009))ことから、区分外とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

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厚生労働省モデルSDS

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