GHS分類結果(過年度実施分類結果の再分類)

名称:アセトアルデヒド
CAS番号:75-07-0

結果:
物質ID: 21B3073
分類実施者: 厚生労働省、環境省
分類実施年度: 平成21年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H21.3版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関する原子団を含まない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分1 危険 H224: 極めて引火性の高い液体及び蒸気 P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P233: 容器を密閉しておくこと。
P240: 容器を接地すること/アースをとること。
P241: 防爆型の電気機器/換気装置/照明機器/...機器を使用すること。
P242: 火花を発生させない工具を使用すること。
P243: 静電気放電に対する予防措置を講ずること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
引火点-38℃(密閉式)(ICSC(2003))は<23℃、沸点20.2℃(ICSC(2003))は≦35℃であることから区分1とした。なお、国連危険物輸送勧告(UN1089)はクラス3、容器等級Iである。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 自己反応性に関する原子団を含まない。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 発火点が175℃(NFPA(13th, 2001))で70℃を越えている。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属または半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含まない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - 酸素を含む有機化合物であるが、この酸素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - 低沸点の液体に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4 警告 H302: 飲み込むと有害 P301+P312: 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P330: 口をすすぐこと。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットLD50値1930 mg/kgおよび660 mg/kg(EHC167(1995))に基づいて区分4とした。
1 急性毒性(経皮) 区分外 - - - - ウサギLD50値3540 mg/kg(HSDB(2005)に基づいて、分類JISの区分外(国連GHS分類の区分5)とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分4 警告 H332: 吸入すると有害 P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
ラットLC50値13300ppm/4h(EHC167(1995))に基づいて区分4とした。なお飽和蒸気濃度は990,000ppmであり、LC50値は飽和蒸気濃度の90%より低い濃度であるため、「ミストがほとんど混在しない蒸気」としてガスの基準値を用いた。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データなし。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分外 - - - - ウサギの皮膚に適用して軽度の刺激性(mild irritation)との報告(ACGIH(7th, 2001))、別のウサギを用いた試験(OECD TG404:GLP準拠)で刺激性なし(not irritating)との結果(IUCLID(2000))に基づき、分類JISの区分外(国連分類基準の区分3または区分外)とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2A 警告 H319: 強い眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
ウサギの眼に適用した試験で重度の刺激性との報告(ACGIH(7th, 2001))、およびEU分類がR36/37であること(EU-Annex 1(access on May 2009))から区分2Aとした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 区分1 警告 H317: アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P333+P313: 皮膚刺激又は発疹が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P272: 汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
モルモットを用いた皮膚感作性試験(CCET:modified cumulative contact enhancement test)において接触アレギー物質と結論されているが(PATTY(5th, 2001))、国際的に認められるテストガイドラインに準拠した試験方法ではない。一方ヒトに対する2件のパッチテストでそれぞれ2人および3人に陽性反応が見出され、試験の結果として感作性あり(sensitizing)と報告され(IUCLID(2000))、またFrosch接触アレルゲンリスト(FROSCH, TEXTBOOK OF CONTACT DERMATITIS)に収載されているため区分1とした。
5 生殖細胞変異原性 区分2 警告 H341: 遺伝性疾患のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
腹腔内投与したマウスあるいはラットの骨髄細胞を用いた小核試験(体細胞in vivo変異原性試験)での陽性結果(CERI・NITE有害性評価書No.61(2004))に基づき、区分2とした。なお、腹腔内投与したマウスの精子細胞を用いた小核試験(生殖細胞in vivo変異原性試験)で陰性、極めて高用量の経羊膜投与したラットの胚細胞を用いた染色体異常試験では陽性結果(CERI・NITE有害性評価書No.61(2004))が報告されている。また、腹腔内投与したマウスあるいはチャイニーズハムスターの骨髄細胞を用いた姉妹染色分体交換試験(体細胞in vivo遺伝毒性試験)、さらにin vitroでは哺乳類培養細胞を用いた染色体異常試験や小核試験で、いずれも陽性結果が報告されている(CERI・NITE有害性評価書No.61(2004))。
6 発がん性 区分2 警告 H351: 発がんのおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
IARCによる発がん性評価でグループ2Bに分類されている(IARC71(1999))ことから区分2とした。 なお、ラット雌雄各105匹から成るグループに最長28ケ月間、吸入投与した発がん性試験において、高用量(2700ppm以上)で鼻腔癌の発生頻度の増加が報告されている(IARC36(1985))。また、雌雄のハムスターに52週間吸入投与により2500-1650ppmで気道の腫瘍(喉頭癌と鼻腔癌)の発生が報告されている(IARC36(1985))。
7 生殖毒性 区分2 警告 H361: 生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットの妊娠10、11及び/又は12日目に腹腔内投与により、親動物に影響がない用量で吸収胚の増加、合指、水頭、外脳、白内障などの奇形の発生頻度の増加(CERI・NITE有害性評価書No.61(2004))が見られ、マウスでも器官形成期に腹腔内投与により外脳、多肢、外反足などの奇形が報告されている(CERI・NITE有害性評価書No.61(2004))。一方、生殖毒性については、用量依存性が認められるものの母動物に対する毒性が適切に評価されておらず、ばく露も一般環境で起きる経路ではなく腹腔内投与のように注射等のため、現状では生殖・発生毒性について適切な報告がないとの見解が述べられている(環境省リスク評価第1巻(2002))。したがって、区分1Bとするには証拠としての確からしさに疑義があり、区分2とした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(呼吸器系、中枢神経系)、区分3(麻酔作用) 警告
危険
H336: 眠気又はめまいのおそれ(麻酔作用)
H370: 臓器の障害(呼吸器系、中枢神経系)
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P307+P311: 暴露した場合:医師に連絡すること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトで「アセトアルデヒドの偶発的な暴露により、頭痛、昏睡、目、皮膚、呼吸器、喉の刺激、気管支炎、肺水腫、運動麻痺、死亡がみられている。」(CERI・NITE有害性評価書No.61(2004))、「全身的には麻酔作用及び意識混濁、気管支炎、肺浮腫等を起こす」(環境省リスク評価第1巻(2002))、さらに蒸気の吸入または経皮ばく露後の症状として、呼吸器系の症状の他に中枢神経系の抑制、高濃度では死に至る可能性のある麻痺が記載されている(PATTY(5th, 2001))。以上の知見に基づき、区分1(呼吸器系、中枢神経系)、区分3(麻酔作用)とした。なおEU分類ではR37(気道刺激性)が付されている(EU-Annex 1(access on May 2009))。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(上気道) 危険 H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(上気道) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットの吸入試験により、4週間ばく露(蒸気)では低用量720mg/m3(90日補正:0.222 mg/L)以上の群で鼻粘膜変性(CERI・NITE有害性評価書No.61(2004))、5週間ばく露では437mg/m3(90日補正:0.168 mg/L)で嗅上皮過形成と鼻粘膜炎症(CERI・NITE有害性評価書No.61(2004))、52週ばく露では全用量群(1.365〜5.460 mg/L)で嗅上皮の変性と気道上皮による再生(IRIS(1998))、さらにハムスターの90日吸入ばく露では0.435 mg/L以上で気管の重層上皮の変化(IRIS(1998))がそれぞれ報告され、そして高用量における早期死亡の原因は過剰量の角質と滲出物による鼻腔の閉塞であると記述されている(IRIS(1998))。以上より、区分1(上気道)とした。なお、ヒトへの影響の記述として、肺浮腫、気管支炎、麻酔作用(ACGIH(7th, 2001)、CaPSAR(2000))があるが、何れも単回ばく露としての影響の記述しかない。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分3 - - H402: 水生生物に有害 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
甲殻類(ミシッドシュリンプ)での96時間LC50 = 27.4mg/L(NITE初期リスク評価書, 2007)であることから、区分3とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分外 - - - - 急速分解性があり(BODによる分解度:80%(既存点検, 1980))、かつ生物蓄積性が低いと推定される(log Kow=-0.34(PHYSPROP Database、2009))ことから、区分外とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

厚生労働省モデルラベル

職場のあんぜんサイトへ

厚生労働省モデルSDS

職場のあんぜんサイトへ


To GHS Information