GHS分類結果(過年度実施分類結果の再分類)

名称:レソルシノール
CAS番号:108-46-3

結果:
物質ID: 21B3062
分類実施者: 厚生労働省、環境省
分類実施年度: 平成21年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H21.3版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHS定義による固体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHS定義による固体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHS定義による固体である。
6 引火性液体 分類対象外 - - - - GHS定義による固体である。
7 可燃性固体 分類できない - - - - データなし。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性ならびに自己反応性に関連する原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 分類対象外 - - - - GHS定義による固体である。
10 自然発火性固体 区分外 - - - - 発火点が585℃(ホンメル(1996))で70℃超である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 融点が140℃以下の物質に適した試験法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属又は半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - GHS定義による固体である。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - 分子内にフッ素または塩素を含んでいない。酸素を含むが、この酸素は炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 分子内に-O-O-構造を含んでいない。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - 固体状の物質に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4 警告 H302: 飲み込むと有害 P301+P312: 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P330: 口をすすぐこと。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
List1の評価文書に記載のラットLD50値:980 mg/kg, 202 mg/kg, 301 mg/kg, 370 mg/kg,(いずれもCICADs71(2006))4件中3件が区分4に該当することから、区分4とした。
1 急性毒性(経皮) 区分外 - - - - ウサギLD50値:3360 mg/kg(NTP TR403(1992))、3830 mg/kg(DFGOT vol.20(2003))および2830 mg/kg(CICADsNo.71(2006))に基づき、JIS分類基準の区分外(国連GHS分類の区分5に相当)とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義による固体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 区分外 - - - - ラットでの1時間暴露によるLC50値:21.3〜78mg/L(4時間換算:5.3〜19.5mg/L)(IUCLID2000))に基づきJIS分類基準の区分外(国連分類基準の区分5)とした。(なお、毒性値(5.3〜19.5mg/L)が飽和蒸気圧濃度(0.0029mg/L)より高く、当該物質は融点110℃の固体のため粉塵での試験と判断した。)
2 皮膚腐食性/刺激性 区分2 警告 H315: 皮膚刺激 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P332+P313: 皮膚刺激が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P362: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
試験物質500mgを水で湿らせウサギに24時間適用した2つの試験(DFGOT vol.20(2003)、CICADsNo.71(2006))で、皮膚一次刺激指数がそれぞれ2.8および4.4であり、軽度〜中等度の刺激性と評価されている。また、ヒトの皮膚へのばく露が皮膚炎、充血、掻痒を起こすとの報告(PATTY(5th, 2001))、また、268人の工場労働者を対象とした疫学調査の結果、皮膚炎の発生は当該物質使用の過程におけるばく露との間に直接的関連が見られたとの報告(NTP TR403(1992))がある。以上の動物試験の結果およびヒトの情報に基づき区分2とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分1 危険 H318: 重篤な眼の損傷 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
ウサギを用いた試験(ACGIH(7th. 2001))で角膜に非可逆的な潰瘍を生じ、また、別の試験(CICADs vol.71(2006))では刺激性スコア105/110で極めて重度の刺激性(extremely irritating)との評価結果に基づき、区分1とした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データ不足。なお、ゴムタイヤ工業で新たにレゾルシノールを含む樹脂を導入後、ばく露された労働者600人中210人が気道の炎症性障害を起こした(DFGOT vol.20(2003))。その原因として樹脂中の揮発成分または濃縮産物に対する遅延型過敏症が示唆されたが、反応を起こした化学物質の確認はなされていないので、この調査の結果を現在の評価に使用することはできない(DFGOT vol.20(2003))としている。
4 皮膚感作性 区分1 警告 H317: アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P333+P313: 皮膚刺激又は発疹が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P272: 汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
モルモットを用いたマキシマイゼーション試験において陽性率30%(3/10)〜70%(7/10)と陽性結果が得られている。ヒトでは足底ゆうぜいの治療のため、当該物質を含む製剤を使用後に水疱性皮膚反応を起こした患者のうち数人がパッチテストでもまた当該物質に顕著な反応を示し、感作性のリスクがあるため高濃度のレゾルシノール製剤を局所適用すべきではないと結論付けられている(DFGOT vol.20(2003))こと、また、タイヤ工場の労働者268人中42人が主に当該物質との皮膚接触後に弱い刺激性の皮膚症状を呈したとの報告(CICADs vol.71(2006))もある。以上の動物およびヒトにおける陽性の情報に基づき区分1とした。
5 生殖細胞変異原性 区分外 - - - - 経口投与後のラットの骨髄細胞を用いた小核試験および腹腔内投与後のマウスの骨髄細胞を用いた小核試験(体細胞in vivo変異原性試験)でいずれも陰性結果(NTP TR403(1992))に基づき区分外とした。なお、ラットの骨髄細胞を用いたin vivo姉妹染色分体交換試験(体細胞in vivo遺伝毒性試験)で陰性、さらにin vitro試験では、エームス試験で陰性、チャイニーズハムスターの卵巣細胞および肺線維芽細胞、マウスのリンパ腫細胞、ヒトリンパ球を用いたin vitro染色体異常試験は全て陽性結果(NTP TR403(1992))が報告されている。
6 発がん性 区分外 - - - - IARCではGroup 3(IARC vol.71(1999))に、ACGIHではA4(ACGIH(2001))に分類されていることに基づき区分外とした。なお、ラットおよびマウスを用いた2年間経口投与試験(NTP TR403(1992))において、両動物種ともばく露に関連する腫瘍発生頻度の増加は見られず発がん性の証拠は見出されなかった。
7 生殖毒性 区分外 - - - - ラットを用いた経口投与による2世代生殖試験(CICADs(2006))において、高用量群で全世代期間中体重増加抑制が認められたが、交配、受胎、妊娠などの親動物の性機能および生殖能に関する指標には影響が見られなかった。さらに、ラットおよびウサギの主として器官形成期に経口投与した複数の試験(DFGOT vol.20(2003)、CICADs(2006))において、一部の結果では母体毒性の指標として体重減少が確認されているが、胎児毒性および催奇形性など仔の異常または奇形の発生は観察されていない。したがって、親動物の性機能、生殖能のみならず、仔の発生に対しても悪影響がないことから区分外とした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(中枢神経系、血液) 危険 H370: 臓器の障害(中枢神経系、血液) P307+P311: 暴露した場合:医師に連絡すること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトで複数の症例報告(DFGOT vol.20(2003)、PATTY(5th, 2001))があり、皮膚疾患治療のため本物質を含む軟膏またはクリームを使用後、意識喪失、振戦、痙攣、散瞳、錯乱、健忘、見当識障害などを呈し、中には死亡に至ったケースもある。また、誤飲した子供の症例(PATTY(5th, 2001))では眩暈、傾眠、振戦が認められている。その一方でレゾルシノール中毒の主な症状として、中枢神経系への影響が明記されている(ACGIH(7th. 2001)、(DFGOT vol.20(2003)))ことから、区分1(中枢神経液)とした。上記症例において特に乳幼児の場合(DFGOT vol.20(2003)、PATTY(5th, 2001))の症状として、ヘモグロビン尿、チアノーゼ、メトヘモグロビン血症が認められていることから、区分1(血液)とした。なお、本物質の主な影響が呼吸器系および心血管系であることを示す記述は特にないので、旧分類で根拠とした呼吸困難、頻脈、血圧低下はメトヘモグロビン血症によるチアノーゼに伴う症状と捉えた。また、動物試験では、振戦、攣縮、強直性・間代性痙攣などの症状がラットに経口投与後に観察されている(CICADs71(2006))。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(甲状腺) 危険 H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(甲状腺) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
皮膚に異常のある患者が治療のため本物質を含む製剤を長期間使用し、甲状腺肥大または甲状腺機能低下を起こした複数の症例報告(CICADs71(2006)、DFGOT vol.20(2003))があり、また、職業ばく露により甲状腺腫や甲状腺機能低下の発生を疑う疫学調査の報告(CICADs71(2006))もある。さらに、動物試験ではラットに経口、吸入または経皮の各経路のばく露により、甲状腺の肥大、過形成、甲状腺腫誘発を示す所見が得られている(CICADs71(2006)、DFGOT vol.20(2003))。これらの知見に基づき区分1(甲状腺)とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分2 - - H401: 水生生物に毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
甲殻類(オオミジンコ)での48時間EC50 = 1.28 mg/L(SIDS, 2009)であることから、区分2とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分外 - - - - 急速分解性があり(BODによる分解度:66.7%(既存点検, 1976))、かつ生物蓄積性が低いと推定される(log Kow=0.8(PHYSPROP Database, 2009))ことから、区分外とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

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厚生労働省モデルSDS

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