GHS分類結果 (過年度実施分類結果の再分類)

名称:ノルマル-プロピルアルコール
CAS番号:71-23-8

結果:
物質ID: 21B3052
分類実施者: 厚生労働省・環境省
分類実施年度: 平成21年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H21.3版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性に関連する原子団を含まない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分2 危険 H225: 引火性の高い液体及び蒸気 P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P233: 容器を密閉しておくこと。
P240: 容器を接地すること/アースをとること。
P241: 防爆型の電気機器/換気装置/照明機器/...機器を使用すること。
P242: 火花を発生させない工具を使用すること。
P243: 静電気放電に対する予防措置を講ずること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
引火点(15℃)は<23℃かつ沸点は97℃であること(ICSC(J)(1999))、及びUNRTDG(UN1274)ではクラス3IIに分類されていることから、区分2とした。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性又は自己反応性に関連する原子団を含まない。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 発火点が371℃(ICSC(J)(1999))で70℃超である。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属又は半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含まない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - フッ素及び塩素を含まず、酸素を含む有機化合物であるが、この酸素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - -O-O-構造を含まない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データなし。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分外 - - - - ラットLD50値:1900 mg/kg(ACGIH(2004))、1870 mg/kg(PATTY(4th, 1994))、5400 mg/kg(PATTY(4th, 1994))、6500 mg/kg(PATTY(4th, 1994)、EHC102(1990))、2200 mg/kg(環境省リスク評価(第6巻、2008))より、区分4相当が2件、JIS分類基準の区分外相当が3件、したがって該当数の多いJIS分類基準の区分外(国連GHSの区分5または区分外)とした。
1 急性毒性(経皮) 区分外 - - - - ウサギLD50値:6700 mg/kg(PATTY(5th, 2001)、ACGIH(2007))、4060 mg/kg(ACGIH(2007))、4000 mg/kg(PATTY(5th, 2001))および4050 mg/kg(EHC102(1990))に基づき、JIS分類基準の区分外(国連GHS分類の区分5または区分外)とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - データ不足。 なお、ラットに4000ppm(9.84 mg/L)を4時間ばく露により、6匹中2匹が死亡している(EHC102(1990)、PATTY(5th, 2001))。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データなし。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分外 - - - - ウサギを用いた試験で極めて軽度の刺激性(very slightly irritating)あるいは刺激性なし(not irritating)との報告(PATTY(5th, 2001)、IUCLID(2000))に基づき、区分外とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分1 危険 H318: 重篤な眼の損傷 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
ウサギの眼に適用した試験において重度の結膜炎、虹彩炎、角膜混濁および潰瘍形成が認められた(ACGIH(2004)、PATTY(5th, 2001))との報告があること、及びEU分類ではXi;R41とされていることから、区分1とした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - モルモットのmaximization test(IUCLID(2000))およびマウスのear-swelling test(EHCNo.102(1990))の結果がいずれも感作性なし(not sensitizing)と報告されている。しかし、前者はList2の情報で、かつ具体的なデータの記載もなく、後者は分類のため推奨された方法ではない。したがって「分類できない」とした。なお、ヒトではパッチテストで陽性を示した1例の症例報告(EHCNo.102(1990))がある一方別途「感作性なし」との評価されたパッチテストの結果(IUCLID(2000))もある。
5 生殖細胞変異原性 分類できない - - - - ラットに経口投与後の骨髄を用いた染色体異常試験(体細胞in vivo変異原性試験)が実施され、染色体の構造異常と数的異常が報告されている(BUA Report No.190(1998))が、証拠として不完全であり、試験法にも欠陥があると記述されているので分類には用いない。なお、Ames test、ハムスター培養細胞を用いた小核試験および姉妹染色分体試験(ACGIH(2007)、PATTY(5th, 2001)、EHC102(1990))の結果はすべて陰性であった。
6 発がん性 区分外 - - - - ACGIH(2007)でA4に分類されていることから、区分外とした。なお、2つの動物試験において肝臓の肉腫の増加が認められているが、試験デザインの情報が適切ではなく、1用量の試験であることからA3とすることはできなかたとしている(ACGIH(2007))。
7 生殖毒性 区分2 警告 H361: 生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットを用い、雄は6週間吸入ばく露後に非ばく露の雌と交配、雌は妊娠1日目〜9日目に吸入ばく露を行った試験において、母動物の体重増加抑制や摂餌量の減少など一般毒性の発現用量で、雄の生殖能低下(ACGIH(2007))、吸収胚の顕著な増加(環境省リスク評価(第6巻、2008)、PATTY(5th, 2001))が報告されていることから区分2とした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分3(麻酔作用、気道刺激性) 警告 H336: 眠気又はめまいのおそれ(麻酔作用、気道刺激性) P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
マウスで吸入ばく露により深い麻酔を起こしたとの報告(EHC102(1990)、PATTY(5th, 2001))があり、ウサギで経口投与による麻酔作用のED50値は1440 mg/kg bwとの記載(EHC102(1990))もあり、区分3(麻酔作用)とした。また、ヒトにおける刺激性(目および鼻)を示す閾値は4000〜16000ppmとされていることから区分3(気道刺激性)とした。なお、単回ばく露後の主要な毒性影響は中枢神経系の抑制である(EHC102(1990))と記述され、また、唯一ヒトの中毒事例として、化粧品調製剤に溶剤とし含まれる本物質約半リットルを摂取後、意識消失を起こし4〜5時間後に死亡したの報告(EHC102(1990))があるのみで、その他には有害影響の報告はない。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 分類できない - - - - データ不足。なお、ラットに13週間あるいは1年半に及ぶ経口ばく露により、肝臓で脂肪変性、壊死、線維化など、骨髄の造血実質過形成などが報告されている(環境省リスク評価(第6巻、2008)、EHC102(1990)、BUA Report No.190(1998))が、いずれもガイダンス値範囲を超える用量での所見のため分類できない。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - 3以上13を超えない炭素原子で構成された一級のノルマルアルコールであることから、国連GHSの区分2に該当するが、区分1を示すデータはなく、区分2を使用しないJIS準拠のガイダンス文書にしたがって分類できないとした。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分外 - - - - 甲殻類(ミジンコ)での48時間LC50 = 3025 mg/L(EHC102, 1990, 他)であることから、区分外とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分外 - - - - 急性毒性区分外であり、難水溶性ではない(水溶解度=1000000 mg/L(PHYSPROP Database、2009))ことから、区分外とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。


分類結果の利用に関する注意事項:
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 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

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厚生労働省モデルSDS

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