GHS分類結果(過年度実施分類結果の再分類)

名称:プロピオン酸
CAS番号:79-09-4

結果:
物質ID: 21B3051
分類実施者: 厚生労働省、環境省
分類実施年度: 平成21年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H21.3版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHS定義による液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHS定義による液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHS定義による液体である。
6 引火性液体 区分3 警告 H226: 引火性液体及び蒸気 P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P233: 容器を密閉しておくこと。
P240: 容器を接地すること/アースをとること。
P241: 防爆型の電気機器/換気装置/照明機器/...機器を使用すること。
P242: 火花を発生させない工具を使用すること。
P243: 静電気放電に対する予防措置を講ずること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
引火点53℃(密閉式)(ICSC(J)(1997))であり、≧23℃および≦60℃である。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHS定義による液体である。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性ならびに自己反応性に関連する原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 発火点485℃(ICSC(J)(1997))で70℃超である。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHS定義による液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属又は半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含んでいない
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - 分子内にフッ素または塩素を含んでいない。酸素を含むが、この酸素は炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHS定義による液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 分子内に-O-O-構造を含んでいない。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - 金属を腐蝕するとの情報がある(ICSC(J)(1997))が、規定試験法によるデータなし。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分外 - - - - ラットLD50:2600 mg/kg(PATTY(5th, 2001))、4260 mg/kg(ACGIH(2001))に基づき、JIS分類基準の区分外(国連分類基準の区分5)とした。
1 急性毒性(経皮) 区分3 危険 H311: 皮膚に接触すると有毒 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P322: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P361: 汚染された衣類を直ちに全て脱ぐこと。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ウサギLD50:496 mg/kg(ACGIH(2001))に基づき区分3とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義による液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分外 - - - - ラットに飽和蒸気(4650ppm=14.01 mg/L)を8時間暴露し死亡が認められなかった(ACGIH, 2001)ことからLC0(8h)>14.01 mg/L/8h、即ち、4時間暴露ではLC0(4h)>19.9 mg/L?20 mg/L/4hとなり、JIS分類基準の区分外(国連分類基準の区分5または区分外)とした。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - 1時間暴露のラットLC50値19.7 mg/L(4時間換算値:>4.9 mg/L)が得られている(IUCLID(2000))が、このデータのみでは分類できない。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分1 危険 H314: 重篤な皮膚の薬傷及び眼の損傷 P301+P330+P331: 飲み込んだ場合:口をすすぐこと。無理に吐かせないこと。
P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ウサギでの皮膚刺激性試験では、重度の刺激性がある(PATTY(5th, 2001)との記述、壊死が認められる(ACGIH(2001))、(PATTY(5th, 2001))、あるいは腐食性である(IUCLID(2000))との記載に基づき区分1とした。EUでもR34に分類している。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分1 危険 H318: 重篤な眼の損傷 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
ウサギを用いた試験において重度の傷害を起こし重症度評価10段階中9を示した(HSDB(2006))こと、また、別の試験では腐食性(corrosive)の結果が得られた(IUCLID, 2000)ことに基づき、区分1とした。なお、当該物質は皮膚に対しても腐食性物質として分類されている。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データ不足。なお、急性ばく露を受けた作業者の1人に軽度の咳と喘息性反応が見られたとの報告(ACGIH(2001))があるが、この結果のみでは証拠として不十分なため分類できない。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - データなし。なお、本物質のカルシウム塩またはナトリウム塩については、モルモットのマキシマイゼーション試験の結果、感作性なしと報告されている(IUCLID(2000))。
5 生殖細胞変異原性 区分外 - - - - 生殖細胞in vivo経世代変異原性試験(ラットに経口投与による優性致死試験(IUCLID(2000)))および体細胞in vivo変異原性試験(チャイニーズハムスターに腹腔内投与による小核試験(PATTY(5th, 2001))、ラットに経口投与による骨髄細胞を用いた染色体異常試験(IUCLID(2000)))の結果がいずれも陰性であったことに基づき区分外とした。なお、in vitroではエームス試験(PATTY(5th, 2001))およびヒトWI38細胞を用いた染色体異常試験(IUCLID(2000))の結果はいずれも陰性であった。 なお、プロピオン酸カルシウムについて、ラット優性致死試験およびラット骨髄細胞染色体異常試験において陰性(PATTY(5th, 2001))であった。
6 発がん性 分類できない - - - - ラットに長期(生涯)混餌投与した試験において、前胃に前癌病変として乳頭腫や過形成が認められたとの報告(PATTY(5th、2001))があるが、データ不足のため分類できない。
7 生殖毒性 分類できない - - - - ラット、マウス、ハムスターおよびウサギの妊娠期間に混餌投与した試験では、母獣および仔の生存に影響せず、胎仔異常の増加も認められなかったとの結果(PATTY, 5th, 2001)が報告されているが、交配前からのばく露による親動物の性機能、生殖能への影響が不明のため分類できない。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分3(気道刺激性) 警告 H335: 呼吸器への刺激のおそれ(気道刺激性) P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトで吸入により、鼻、喉、肺を刺激し、咳, 喘鳴、息切れを起こす(HSFS(2001)とされ、ラットで4時間吸入ばく露後の所見として、呼吸器系の刺激が記載されている(HSDB(2000))ことより、区分3(気道刺激性)とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 分類できない - - - - ラットに3ヵ月およびイヌに100日間混餌投与した試験の主な影響は、いずれも局所影響として、ラットでは前胃粘膜の変化(表皮肥厚、角質増殖、上皮増生)、イヌでは食道粘膜の上皮過形成が高用量群で認められたことであり、その他に重大な毒性所見の記載はなく、NOAELはラットで飼料中濃度2.5%(約1250 mg/kg/day相当)、イヌで飼料中濃度1%(600〜696 mg/kg/day相当)と報告されている(SIDS(2008))。これらのNOAELはいずれもガイダンス値範囲区分2の上限を超えているので、経口経路では区分外に該当するが、他経路のデータが不十分なため「分類できない」とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分3 - - H402: 水生生物に有害 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
甲殻類(オオミジンコ)での48時間EC50=22.7ppm(SIDS, 2007)であることから、区分3とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分外 - - - - 水溶液が強酸となることが毒性の要因と考えられるが、環境水中では緩衝作用により毒性影響が緩和されるため、区分外とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。


分類結果の利用に関する注意事項:
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 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

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