GHS分類結果 (過年度実施分類結果の再分類)

名称:ジチオりん酸O, O-ジメチル-S-[(4-オキソ-1, 2, 3-ベンゾトリアジン-3(4H)-イル)メチル](アジンホスメチル)
CAS番号:86-50-0

結果:
物質ID: 21B3038
分類実施者: 厚生労働省・環境省
分類実施年度: 平成21年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H21.3版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類できない - - - - 分子内に酸素および爆発性に関連する原子団を含み、酸素収支が-30.25で>-200、したがって火薬類に分類される可能性があるがデータが無く分類できない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
6 引火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
7 可燃性固体 分類できない - - - - データなし。
8 自己反応性化学品 分類できない - - - - 分子内に爆発性に関連する原子団を含み、自己反応性に関連する原子団を含まないが、データが無く分類できない。
9 自然発火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
10 自然発火性固体 分類できない - - - - データなし。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 融点が140℃以下の固体に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 区分外 - - - - 水と反応しない(Weiss(2nd、1985))。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
14 酸化性固体 分類できない - - - - データなし。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - -O-O-構造を有していない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - 固体状態の物質に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分2 危険 H300: 飲み込むと生命に危険 P301+P310: 飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P330: 口をすすぐこと。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットのLD50値が31件(4.4、4.6、5.6、7.4、11、12.2、13、19.5 mg/kg(ACGIH(2002))、4.4、4.6、6.4、6.4、6.7、7.1、9.1、9.7、9.7、10、11、12.8、15.6、16、16.75、17.25、19、19、24、25、25.4、26、mg/kg(JMPR 818(1991))、16 mg/kg(EHC 63(1986)])あり、4件が区分1、27件が区分2に該当している。したがって最も該当数の多い区分2とした。
1 急性毒性(経皮) 区分2 危険 H310: 皮膚に接触すると生命に危険 P302+P350: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で優しく洗うこと。
P262: 眼、皮膚、衣類につけないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
P322: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P361: 汚染された衣類を直ちに全て脱ぐこと。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットのLD50値が8件(155、170、220、220 mg/kg(ACGIH(2002))、90、225、2500、5000 mg/kg(JMPR 818(1991)))あり、3件が区分2、3件が区分3、2件が区分外に該当している。したがって区分2と3が同数であることから、危険性の高い区分2とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 区分2 危険 H330: 吸入すると生命に危険 P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P284: 呼吸用保護具を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
P320: 特別な処置が緊急に必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットの4時間のLC50値(0.107 mg/L、0.155 mg/L(PATTY(5th, 2001))、0.132 mg/L、0.155 mg/L(JMPR 818(1991)、0.132 mg/L、0.152 mg/L(ACGIH(2002)))に基づき区分2とした。なお、融点72-73℃(Merck(14th、2006))より、常温で固体であることから試験は粉塵で実施されたと推定した。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分外 - - - - ウサギを用いた2試験において、刺激性なし(ACGIH(2002)、JMPR 818(1991))との結果に基づき区分外とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2B - 警告 H320: 眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
ウサギを用いた試験で、「Caused no significant reaction.」(JMPR 818(1991))または「slightly irritating」(IUCLID(2000))と記載されていることに基づき区分2Bに分類した。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 区分1 警告 H317: アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P333+P313: 皮膚刺激又は発疹が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P272: 汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
モルモットを用いた試験が2種の試験法により実施され、Maximization法で陽性率95%(JMPR 818(1991))、Buehler法では陽性率約50%(JMPR 818(1991))であり、両試験法とも感作性示したことに基づき、区分1とした。なお、EU分類ではT、R43に分類されている。
5 生殖細胞変異原性 区分外 - - - - マウスの腹腔内(JMPR 255(1973))または経口投与(JMPR 818(1991))による優性致死試験(生殖細胞in vivo経世代変異原性試験)、およびマウスの腹腔内投与による骨髄細胞を用いた小核試験(体細胞in vivo変異原性試験)(ACGIH(2002))でいずれも陰性結果に基づき区分外とした。なお、in vitro変異原性試験として、Ames試験で陰性(ACGIH(2002))、CHO細胞を用いた染色体異常試験で陽性(JMPR 818(1991))、SCEアッセイで陰性(JMPR 818(1991))などの報告がある。
6 発がん性 区分外 - - - - ACGIHでA4に分類されている(ACGIH(2002))ことに基づき区分外とした。なお、Osborne-MendelラットおよびB6C3F1マウスを用いた80週間の経口ばく露による発がん性試験において、ラット雄では甲状腺と膵臓ランゲルハンス島の腫瘍発生により証拠不十分ながら発がん性が示唆されたが、ラット雌およびマウスの雌雄では発がん性の証拠は認められていない(NTP TR 69(1978))。
7 生殖毒性 区分2 警告 H361: 生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ウサギの器官形成期に経口投与による試験で、母獣に振戦、運動失調、コリンエステラーゼ阻害などの一般毒性影響が認められる用量で、着床前胚喪失の有意な増加・着床後胚喪失の増加・胎仔生存率の有意な減少などが認められた(ACGIH(2002))ことに基づき、区分2とした。なお、ラットの経口投与による二世代試験でも、母獣の死亡率増加や体重減少などの一般毒性影響が認められる用量で胎仔の生存率の減少(ACGIH(2002))などが報告されている。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(神経系) 危険 H370: 臓器の障害(神経系) P307+P311: 暴露した場合:医師に連絡すること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトではアジンホスメチルの濃縮液を手にこぼし、視覚障害、頭痛、胸部ひっ迫、腹部痙攣などの有機リン中毒の症状を呈した症例報告がある(ACGIH(2002))。さらに、ラットに経口投与により、3〜6 mg/kg以上でコリンエステラーゼ活性の阻害と神経行動学的影響の増強が見られ、6〜12 mg/kgでは高い死亡率が見られたと報告されている(ACGIH(2002))ことから、区分1(神経系)とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(神経系) 危険 H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(神経系) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットに13〜16週間の経口ばく露により、3〜6 mg/kg/day以上の用量で流涎、流涙、筋の振戦、束収縮などコリン作動性の反応または症状とともに、赤血球および脳のコリンエステラーゼ活性の顕著な阻害が見られ、動物の死亡も発生している(PATTY(5th, 2001)、ACGIH(2002)、JMPR 111(1968))。一方、果樹園でのアジンホスメチル散布者が主に経皮吸収により血液コリンエステラーゼ活性の阻害を示した事実が複数報告されている(ACGIH(2002))。以上の結果より、ラットの経口ばく露試験ではガイダンス値範囲区分1に相当する用量でコリン作動性症状や死亡を伴うコリンエステラーゼ活性の阻害が見られたこと、かつ、果樹園での作業におけるばく露によりヒトで血液コリンエステラーゼ活性の阻害を示した複数の報告に基づき区分1(神経系)とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分1 警告 H400: 水生生物に非常に強い毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
甲殻類(ミシッドシュリンプ)での96時間LC50 = 0.00029 mg/L(ECETOC TR91, 2003)であることから、区分1とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分1 警告 H410: 長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
急性毒性区分1であり、急速分解性がないと推定される(BIOWIN)ことから、区分1とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

厚生労働省モデルラベル

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厚生労働省モデルSDS

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