GHS分類結果(過年度実施分類結果の再分類)

名称:酸化チタン(IV)
CAS番号:13463-67-7

結果:
物質ID: 21B3034
分類実施者: 厚生労働省、環境省
分類実施年度: 平成21年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H21.3版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性に関連する原子団を含まない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
6 引火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
7 可燃性固体 区分外 - - - - 不燃性(HSDB(2005)、IUCLID(2000))の記載に基づき区分外とした。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性・自己反応性に関連する原子団を含まない。
9 自然発火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
10 自然発火性固体 区分外 - - - - 不燃性(HSDB(2005)、IUCLID(2000))の記載に基づき区分外とした。
11 自己発熱性化学品 区分外 - - - - 不燃性(HSDB(2005)、IUCLID(2000))の記載に基づき区分外とした。
12 水反応可燃性化学品 区分外 - - - - 水中で安定(IUCLID(2000))の記載に基づき区分外とした。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
14 酸化性固体 区分外 - - - - 酸化性を有しない(IUCLID(2000))の記載に基づき区分外とした。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 無機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - 固体状の物質に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分外 - - - - ラットLD50 >20000 mg/kg(DFGOT(1991))は区分外に該当する。
1 急性毒性(経皮) 区分外 - - - - ウサギ approxLD50 >10000 mg/kg(IUCLID(2000))は区分外に該当する。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 区分外 - - - - ラット LC>6.82 mg/L/4h(IUCLID(2000))は区分外に該当する。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分外 - - - - ウサギを用いた試験で0.5g、24時間の適用で軽度の刺激性(slightly irritating)(IUCLID(2000))、0.1g、24時間の適用で刺激性なし(not irritating)(IUCLID(2000))の記載より区分外とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2B - 警告 H320: 眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
ウサギを用いた試験で軽度の刺激性(mild irritation)との結果(IUCLID(2000))より区分2Bとした。なお、適用5分後に洗浄した別の試験では刺激性なし(not irritating)の結果(IUCLID(2000))が得られている。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - モルモットを用いた皮膚感作性試験(Maurer optimisation test)で感作性なしの結果(IUCLID(2000))、および290人の皮膚炎患者群による試験では48時間のパッチテストに誰も反応せず、感作性の証拠が得られなかったとの結果(IUCLID(2000))がある。しかし、いずれもList 2のデータであり、かつモルモットを用いた試験は分類のため推奨されている試験法ではないことから「分類できない」とした。
5 生殖細胞変異原性 区分外 - - - - マウスの腹腔内投与による骨髄細胞小核試験および染色体異常試験(いずれも体細胞in vivo変異原性試験)で陰性(NTP DB(2005))の記載より区分外とした。なお、チャイニーズハムスターを用いるin vivo SCE試験(体細胞in vivo遺伝毒性試験)およびAmes試験、培養細胞を用いる染色体異常試験、マウスリンフォーマアッセイ(いずれもin vitro変異原性試験)で陰性(NTP DB(2005))の結果が得られている。
6 発がん性 区分2 警告 H351: 発がんのおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
IARCで超微粒酸化チタン(粒径10-50nm)を以ってグループ2Bに分類されている(IARC Monograph Vol.93, in preparation)ことより区分2とした。なお、ラットおよびマウスを用いた103週間の混餌投与試験では、両動物種とも本物質に発がん性はないと結論されている(NTP TR No.97(1979))が、ラットおよびマウスを用いた超微粒酸化チタンの吸入ばく露により、マウスで認められなかった肺腫瘍の発生増加がラットでは認められたとしている(PATTY(5th, 2001))。一方、ヒトの場合は複数の症例報告あるいは疫学調査の結果により、本物質との関連を示す明確な証拠は示されていない(IARC 47(1989)、ACGIH(2001)、HSDB(2005))。
7 生殖毒性 分類できない - - - - データなし。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 分類できない - - - - ラットの経口投与による致死量が20000 mg/kg以上(DFGOT(1991))であり、さらにヒトで本物質の摂取は実質的に無毒と考えられており、1ポンド(453.6 g:ヒト体重60kgとして7560 mg/kg)の摂取により有害性を示すことなく、24時間以内に糞便中に排泄された(ACGIH(2001))と記述されていることから、経口では区分外に該当する。しかし、他経路でのデータが不十分なため「分類できない」とした。なお、ヒュウムは気道を刺激するとの記載がある具体的なデータはない(HDSB(2005))。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 分類できない - - - - ラットおよびマウスに13週間あるいは103週間混餌投与した4試験のいずれの試験においても、ガイダンス値上限を超える25000 pppm(1250 mg/kg/day)の用量でばく露に起因する影響がない(NTP TR No.97(1979))ことから、経口投与で区分外に該当する。一方、20年以上職業暴露している労働者の極くわずかであるが、肺機能の変化は伴わないが、X線検査で塵肺症変化が明らかになった(DFGOT vol.2(1991))との記載があるが、酸化チタンが線維化作用を有するかどうかを主な検討目的とした疫学調査は数多く実施され、その大半が因果関係について否定的で本物質と肺線維症との関連を示す確かな証拠は見出されていない(DFGOT vol.2(1991)、ACGIH(2001)、IARC vol. 47(1989)、PATTY(5th, 2001))。かつ、ラットに2年間吸入ばく露により、ガイダンス値上限を超える250 mg/m3(5 days/week, 6 h/day:粉塵)の濃度でも重大な影響が認められていない(IUCLID(2000))ことから、吸入ばく露でも区分外に該当する。しかし、その他に経皮ばく露のデータがないので、総合的には「分類できない」とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
11 水生環境有害性(長期間) 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。


分類結果の利用に関する注意事項:
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 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

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