GHS分類結果(過年度実施分類結果の再分類)

名称:塩化アンモニウム
CAS番号:12125-02-9

結果:
物質ID: 21B3021
分類実施者: 厚生労働省、環境省
分類実施年度: 平成21年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H21.3版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 本化合物は、見かけ上 N-Cl 結合を有するが、この結合はクロルアミン類等とは異なりイオン性結合であるために爆発性に関わる原子団とはならない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
6 引火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
7 可燃性固体 区分外 - - - - 不燃性である(Weiss(2nd, 1986))ことから区分外とした。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性・自己反応性に関連する原子団を含まない。
9 自然発火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
10 自然発火性固体 区分外 - - - - 不燃性である(Weiss(2nd, 1986)等)ことから区分外とした。
11 自己発熱性化学品 区分外 - - - - 不燃性である(Weiss(2nd, 1986)等)ことから区分外とした。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属または半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含まない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
14 酸化性固体 分類できない - - - - データなし。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 無機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - 固体状の物質に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4 警告 H302: 飲み込むと有害 P301+P312: 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P330: 口をすすぐこと。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットのLD50 = 1650 mg/kg(ACGIH(2001))、1410 mg/kg bw(SIDS(2009))、1658 mg/kg bw(IUCLID(2000))が区分4に相当する。
1 急性毒性(経皮) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データなし。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分外 - - - - 6匹のウサギの各2箇所の適用部位(合計12箇所)を用いたDraize試験(GLP準拠)において、適用24時間後の紅斑のスコアが、2が7部位、3が5部位であった。48及び72時間後の紅斑、浮腫及び痂皮のスコアは全ての動物で0であり、個体毎の平均スコア値は何れも1以下である(SIDS(2009))ことから区分外とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2B - 警告 H320: 眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
ウサギを用いた試験で軽度(mild)の刺激性との記述(ACGIH(7th, 2001))、また、点眼後10分、1時間、24時間に中等度(moderate)の刺激性が認められ、発赤、浮腫ないし角膜混濁などの変化は8日以内に跡形も無く回復したとの記述から(SIDS(2009))区分2Bとした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 区分外 - - - - モルモットを用いた皮膚感作性試験(maximization test: GLP準拠)で陽性率10%(2/20)であり、基準の30%より低いため「感作性なし」との報告(SIDS(2001))により区分外とした。
5 生殖細胞変異原性 区分外 - - - - マウスに腹腔内投与による骨髄細胞を用いた小核試験(体細胞を用いるin vivo変異原性試験)で陰性(SIDS(2009))とする報告に基づき区分外とした。なお、in vitro変異原性試験のAmes試験で陰性(SIDS(2009)、IUCLID(2000))、Cytogenetic assayで陽性(SIDS(2009))の報告がある。
6 発がん性 分類できない - - - - 飲水投与によるプロモーション作用を調べた試験の報告(SIDS(2009))はあるが、被験物質の直接的な発がん性試験のデータはなく分類できない。
7 生殖毒性 分類できない - - - - マウスに経口ばく露による二世代試験において、外見上の奇形はなく、高用量で生存仔が得られず中用量でも同腹仔の半分が死亡した(IUCLID (2000))が、試験物質として混合物(本物質42.9%)が使用されたため評価が困難であり分類根拠としなかった。ラットに妊娠7日目から飲水投与により催奇形性は認められず、胎児の成長阻害が認められたが、投与量から明らかに母獣の代謝性アシドーシスによるものと結論付けられている(SIDS (2009))。一方、ラットの妊娠9から12日に混餌投与(6%)により代謝性アシドーシスを認め、60例が懐胎、20例が吸収されたとの記述があるがそれ以上の情報はなく、対照群も設けられていないので分類できない(IUCLID (2000))。また、マウスの妊娠10日目に600 mg/kgを1日4回経口投与により、胎仔の7%が欠指との記述(Teratogenic (12th, 2007))があるが、詳しいデータがない上1日合計2400 mg/kgの投与は、LD50が約1500 mg/kgであることから極めて高い用量と言えるので分類の根拠とはしなかった。以上より、分類根拠とするにはいずれもデータ不十分であり「分類できない」とした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分2(神経系) 警告 H371: 臓器の障害のおそれ(神経系) P309+P311: 暴露したとき、又は気分が悪いとき:医師に連絡すること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
経口投与により、ラットでは1000 mg/kg bw以上で呼吸困難、無関心、姿勢異常、よろめきの症状、マウスでは1200 mg/kg bwで下痢、チアノーゼ、失調性歩行が観察された(SIDS(2009))。これらの症状と剖検での脳出血の所見(SIDS(2009))、さらに塩化アンモニウムの摂取後に中枢神経障害の発現が報告されている(EHC 54(1986))。以上の記述に基づき、1000〜1200 mg/kg bwはガイダンス値区分2に該当することから区分2(神経系)とした。なお、ヒトで大量摂取の場合、嘔気、嘔吐、頭痛などの症状とともに進行性の嗜眠状態を生じ、アシドーシスと低カリウム血症を起こす可能性があると記述されている(SIDS(2009))。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(全身毒性) 危険 H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(全身毒性) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
塩化アンモニウムの長期間(6ヵ月)摂取により疲弊と空気飢餓感のため、あるいは呼吸亢進と錯乱のため入院に至った(代謝性)アシドーシスの症例、および短期間摂取後軽度の(代謝性)アシドーシスを発症した症例など、アシドーシスに関して複数の報告(SIDS(2009)、ACGIH(2001))があることから区分1(全身毒性)とした。なお、ウサギに高用量を経口反復ばく露によりアシドーシスが観察されているが、ラットに経口による反復ばく露試験では重大な毒性影響は認められず、NOAELに関しては70日混餌投与試験で684 mg/kg bw/day(90日補正:532 mg/kg bw/day)(SIDS(2009))、56日混餌投与試験で493 mg/kg bw/day(90日補正:307 mg/kg bw/day)(SIDS(2009))であった。また、ウシに112日間混餌投与ではNOAELが206 mg/kg bw/day(SIDS(2009))であり、経口ばく露の場合いずれもガイダンス値範囲の上限を超えている。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) - - - - - 分類結果の見直し作業中のため。(見直し結果は平成29年3月末をめどに公表予定)
11 水生環境有害性(長期間) - - - - - 分類結果の見直し作業中のため。(見直し結果は平成29年3月末をめどに公表予定)
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。


更新日   2016/12/19

修正履歴   2016/12/19   水生環境有害性(急性)(分類根拠・問題点)、水生環境有害性(長期間)(分類根拠・問題点)の修正。

分類結果の利用に関する注意事項:
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 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

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厚生労働省モデルSDS

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