GHS分類結果(過年度実施分類結果の再分類)

名称:酢酸エチル
CAS番号:141-78-6

結果:
物質ID: 21B3008
分類実施者: 厚生労働省、環境省
分類実施年度: 平成21年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H21.3版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性に関連する原子団を含まない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分2 危険 H225: 引火性の高い液体及び蒸気 P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P233: 容器を密閉しておくこと。
P240: 容器を接地すること/アースをとること。
P241: 防爆型の電気機器/換気装置/照明機器/...機器を使用すること。
P242: 火花を発生させない工具を使用すること。
P243: 静電気放電に対する予防措置を講ずること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
引火点が-4℃(ICSC(J)(1997))で<23℃および初留点が77℃(ICSC(J)(1997)で>35℃より、区分2とした。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性・自己反応性に関わる原子団を含まない。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 発火点が427 ℃(ICSC(J)(1997))で70℃を超えている。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属又は半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含まない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - フッ素及び塩素を含まず、酸素を含む有機化合物であるが、この酸素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - -O-O-構造を有していない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データなし。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分外 - - - - ラットのLD50値4940 mg/kg(PATTY(5th, 2001))、5600 mg/kg(ACGIH(2001))、10100 mg/kg(DFGOT vol.12(1999))、11000 mg/kg(PATTY(5th, 2001))に基づき、区分外とした。
1 急性毒性(経皮) 区分外 - - - - ウサギに用量 18000 mg/kg24時間閉塞適用で死亡なしとの記述(DFGOT vol.12(1999))に基づき、区分外とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分4 警告 H332: 吸入すると有害 P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
ラットのLC50値16000 ppm(4時間換算:19600 ppmV)〔ACGIH (2001)〕、14640 ml/m3(比重から、13176 g/m3:3658ppmV)〔DFGOTvol.12 (1999)〕、16000 ppm(4時間換算:13856 ppmV)〔ACGIH (2001)〕に基づき、区分4とした。なお、飽和蒸気圧濃度123289 ppmVより、気体と判断した。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データなし。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分外 - - - - ウサギ皮膚に0.01mLを24時間開放適用した試験において、刺激性のスコア1(最大10に対し)で刺激性なし(not irritating)の結果(IUCLID(2000))に基づき区分外とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2B - 警告 H320: 眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
ウサギ4匹を用い試験物質原液0.1mLを点眼したDraize試験において、角膜混濁は2日目までに回復(4/4)、虹彩炎は2日までに回復(1/4)、結膜の発赤・浮腫・分泌物などは7日までに消失(4/4)し、24、48、72時間のMMAS(最大平均スコア)15.0との報告(ECETOC TR48(1998))基づき区分2B とした。なお、EU分類では、Xi、R36に分類されている。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 区分外 - - - - モルモットのマキシマイゼーション試験(Maximization test: OECD TG406)で感作性なし(IUCLID(2000))の報告、およびヒトで被験者25名を用い実施したMaximization試験で感作性なしの結果(DFGOT vol.12(1999))に基づき区分外とした。なお、過去の酢酸エチルによる感作性の疑いのある報告が3例ある。因果関係が不明な場合があり、また少数例でもあることから酢酸エチルの感作性の可能性は疑わしいと考えられている(DFGOT vol.12(1999))。
5 生殖細胞変異原性 区分外 - - - - マウスおよびハムスターに腹腔あるいは経口投与後の骨髄細胞を用いた小核試験(体細胞in vivo変異原性試験)でいずれも陰性結果(DFGOT vol.12(1999)、IUCLID(2000))に基づき区分外とした。なお、in vitro変異原性試験として、Ames試験・ハムスターの線維芽細胞を用いた染色体異常試験・CHO細胞のSCEアッセイなどで陰性の結果が得られている。
6 発がん性 分類できない - - - - マウス腹腔内8週間投与試験が実施されている(IUCLID(2000))が、データ不足のため分類できない。
7 生殖毒性 分類できない - - - - データなし。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分3(気道刺激性、麻酔作用) 警告 H335: 呼吸器への刺激のおそれ(気道刺激性、麻酔作用) P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトで400 ppmを4時間ばく露により鼻腔、咽喉と眼に軽度の刺激が報告されている(DFGOT vol.12(1999、ACGIH(2001))。また、ネコ、マウスで吸入ばく露、ウサギでは経口ばく露により、それぞれLD50またはLC50以下の用量で麻酔作用が記述されており、一過性であるとの記述がある(ACGIH(2001)、IUCLID(2000))。以上より、区分3(気道刺激性、麻酔作用)とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 分類できない - - - - ラットを用いた90日間経口投与試験のNOAELは900 mg/kg(環境省リスク評価第6巻(2008))であった。ラットを用いた13週間吸入ばく露試験では刺激に対する反応の低下などの症状は2700 mg/m3/4h(9.73 mg/L/4h:蒸気)以上で現れたが、機能観察総合検査でばく露に関連した異常はなく、NOAELは1260 mg/m3/4h(1.2 mg/L/4h)と報告されている(環境省リスク評価第6巻(2008))。以上のようにNOAELがガイダンス値範囲の上限を超えていることから、経口および吸入ばく露では区分外に該当するが、経皮投与によるデータがないので「分類できない」とした。なお、ヒトに対する影響では、靴工場における1560 ppmの職場環境で、刺激感などの特定できない症状を従業者7名が訴え、そのうち4名に気管支狭窄などが認められたとする報告(DFGOT vol.12(1999))もあるが、他の物質との混合暴露であり分類の根拠としなかった。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分外 - - - - 魚類(ファットヘッドミノー)での96時間LC50 = 230mg/L(SIDS, 2008, 他)、甲殻類 (オオミジンコ) での24時間LC50 = 2,500mg/L(SIDS, 2008)であることから、区分外とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分外 - - - - 急性毒性区分外であり、難水溶性でない(水溶解度=80000 mg/L(PHYSPROP Database、2009))ことから、区分外とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。


分類結果の利用に関する注意事項:
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 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

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