GHS分類結果 (過年度実施分類結果の再分類)

名称:2-クロロ-1, 3-ブタジエン(クロロプレン)
CAS番号:126-99-8

結果:
物質ID: 21B3007
分類実施者: 厚生労働省・環境省
分類実施年度: 平成21年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H21.3版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性に関連する原子団を含まない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分2 危険 H225: 引火性の高い液体及び蒸気 P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P233: 容器を密閉しておくこと。
P240: 容器を接地すること/アースをとること。
P241: 防爆型の電気機器/換気装置/照明機器/...機器を使用すること。
P242: 火花を発生させない工具を使用すること。
P243: 静電気放電に対する予防措置を講ずること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
引火点-20℃(ホンメル(1991))<23℃、および、初留点59℃(NFPA(13th, 2002))>35℃から区分2とした。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 タイプG - - - - 分子内に自己反応性に関わる原子団(不飽和C=C)を含むがUNRTDG(UN1991)ではクラス3副次危険6.1PGIであり安定剤(ヒドロキノンまたはフェノチアジン)を含むものである。したがってタイプGとした。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 発火点は440℃(ホンメル(1991))で70℃超である。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属または半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - 酸素を含まず、塩素は含んでいるが、この元素が炭素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - -O-O-構造を含まない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データなし。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分3 危険 H301: 飲み込むと有毒 P301+P310: 飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P330: 口をすすぐこと。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットのLD50値が 251 mg/kgおよび450 mg/kg(SIDS(1998))から、毒性の強い方の値に基づき区分3とした。
1 急性毒性(経皮) 区分2 危険 H310: 皮膚に接触すると生命に危険 P302+P350: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で優しく洗うこと。
P262: 眼、皮膚、衣類につけないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
P322: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P361: 汚染された衣類を直ちに全て脱ぐこと。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットのLD50値200 mg/kg(SIDS(1998))から区分2とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分3 危険 H331: 吸入すると有毒 P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P311: 医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットのLC50値が11.8 mg/L(3259 ppmV)(SIDS(1998))および8.2 mg/L(2264 ppmV)(IARC 19(1979))に基づき、危険性の高い方の区分3とした。なお、飽和蒸気圧濃度は282895 ppmVであることから、分類にはガスの基準値を適用した。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データなし。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分2 警告 H315: 皮膚刺激 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P332+P313: 皮膚刺激が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P362: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
ウサギ皮膚への閉塞適用後24時間で浮腫を伴う軽度から中等度の紅斑が観察され、同48時間で軽度から中等度の紅斑が残った(SIDS(1998))ことから区分2とした。なお、EU分類では、Xi; R36/37/38に分類されている。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2 警告 H319: 強い眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
ウサギを用いた試験で結膜炎が10日間続いた(SIDS(1998))との報告およびEU分類でXi; R36/37/38に分類されていることから区分2とした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - データなし。
5 生殖細胞変異原性 分類できない - - - - マウスおよびラットに吸入ばく露による優性致死試験(生殖細胞in vivo経世代変異原性試験)に関して、低濃度で陽性、高濃度で陰性を示し、結果に矛盾がある(SIDS(1998))。また、マウスおよびラットの骨髄細胞を用いた複数のin vivo染色体異常試験および小核試験(体細胞in vivo変異原性試験)も相反する結果(SIDS(1998))が得られているが、陽性知見は不純物による可能性があり、本物質の生殖細胞変異原性を評価するには追加検討が望まれている(SIDS(1998))ことから、データ不足により分類できない。
6 発がん性 区分2 警告 H351: 発がんのおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
IARCによるグループ2B(IARC 71(1999))の分類に基づき区分2とした。なお、ラットおよびマウスに2年間吸入ばく露した試験(NTP TR 467(1998))が実施されており、ラットでは口腔、甲状腺、肺、腎臓、乳腺など、また、マウスでも肺、循環器系、ハーダー腺、前胃、皮膚、乳腺などいずれも種ーの器官・組織において腫瘍発生頻度の増加が認められ、NTPは本物質を「合理的にヒト発がん性が予測される物質(Reasonably anticipated to be a human carcinogen)」に分類している(NTP ROC 11th(2000))。その他に、EUではカテゴリー2に分類されているが、EU分類についてはその判断根拠を示す必要があるとされており、確認できないので分類に使用しなかった。因みにDFGによる分類(MAK)はカテゴリー2(ヒトに発がん性を持つと考えられる物質)である(MAK/BAT(2007))。
7 生殖毒性 区分2 警告 H361: 生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットにおいて妊娠期間中に吸入あるいは経口ばく露により髄膜脳瘤の発生(IARC 19(1979))、また、吸入ばく露の場合に吸収胚の増加、胚毒性の増強と催奇形性(大腿骨・腓骨骨幹の短縮、水頭)(SIDS(1998)、ACGIH(2001))が報告され、ラットおよびマウスの雄の吸入ばく露では生殖不能(ACGIH(2001))が認められた。しかし、得られたデータが試験によって結果に著しい差異があったため、催奇形性と生殖毒性の証拠の重みは極めて限定的で不十分である(ACGIH(2001))と記述されている。したがって、区分1Bとするほど確かな証拠ではないとして区分2とした。なお、IARCの1979年版の記事として、クロロプレンを扱う女性労働者が身体的・精神的欠陥を有する子供を生んだ事例、クロロプレン労働者の妻に自然流産が3倍多かったとの報告(IARC 19(1979))があるが、1999年版には掲載されていない。また、この情報はACGIH(2001)および(NTP TR 467(1998))にも掲載されているが、データの収集方法に問題があると述べられている。さらにSIDS(1998)では、ヒトの情報に関して意味のある結論を得るに十分な信頼性のあるデータはなかったと記述されていることから、ヒトの事例は分類の根拠としなかった。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(中枢神経系、呼吸器系、肝臓、腎臓) 危険 H370: 臓器の障害(中枢神経系、呼吸器系、肝臓、腎臓) P307+P311: 暴露した場合:医師に連絡すること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットに吸入ばく露により、225 ppm(0.810 mg/L)以上で肝障害が観察され(IARC 71(1999))、別の試験では500 ppm(1.810 mg/L)以上で肝酵素の上昇を伴う著しい肝毒性が報告されている(IARC 71(1999))。さらにラットに経口投与により中枢神経系の抑制が見られ(PATTY(5th, 2001))、吸入ばく露により気道傷害が明らかになった(IARC 71(1999))ことが述べられている。一方、ヒトで急性ばく露の影響として、肝臓の他に中枢神経系の抑制や、肺、肝臓および腎臓の傷害が報告されている(IARC 71(1999))が、中枢神経系については具体的な症状や抑制の程度の記載が無く, 麻酔作用と関連した記述もない。以上の影響はラットでガイダンス値区分1に該当する用量で認められ、かつヒトの事例でもあることから区分1(中枢神経系、呼吸器系、肝臓、腎臓)とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(肝臓、血液、神経系、胃、呼吸器系、心血管系) 危険 H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(肝臓、血液、神経系、胃、呼吸器系、心血管系) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットに4週間吸入ばく露によりガイダンス値区分1に該当する160 ppm(= 0.579 mg/L = 0.178 mg/L<90日換算>)以上で、肝臓に小葉中間帯の変性と壊死の所見(PATTY(5th, 2001))に基づき区分1(肝臓)とした。肝臓への影響については、さらにラットに200 ppm(0.724 mg/L)を13週間吸入ばく露により肝細胞壊死の有意な増加(NTP TR 467(1998))、イヌおよびモルモットの吸入ばく露おいて肝臓障害または黄疸の報告(SIDS(2009))がある。 ・血液に関しては、ラット200 ppm(0.724 mg/L)を13週間吸入ばく露により正球性、正色素性貧血が見られ(NTP TR 467(1998))、マウスに32 ppm(0.116 mg/L)以上を13週間吸入ばく露(NTP TR 467(1998))により、ヘマトクリット値、赤血球数の有意な減少および血小板数の変化が報告され、用量としてガイダンス値範囲区分1にも相当しているので区分1(血液)とした。 ・神経系に関しては、ヒトで慢性クロロプレン中毒症患者の44%で(心血管系を含め)神経系に病理学的変化を認めたとの報告に加え、めまい、不眠などの症状が記載され(IARC 19(1979))、職業ばく露において血中コリンエステラーゼの低下も知られている(IARC 19(1979))。ラットではばく露後、低運動性、不穏、嗜眠などの症状が見られている。したがって、区分1(神経系)とした。 ・胃に関しては、マウスに13週間吸入ばく露(NTP TR 467(1998))により80 ppm(0.290 mg/L)以上で前胃の扁平上皮過形成が観察され、ヒト慢性ばく露の症状として胃腸障害が記載されている(IARC 19(1979))ので区分1(胃)とした。 ・呼吸器に関しては、ラットに4週間吸入ばく露(PATTY(5th, 2001))によりガイダンス値区分1に該当する160 ppm(= 0.579 mg/L = 0.178 mg/L<90日換算>)以上で肺の組織損傷、13週間吸入ばく露(NTP TR 467(1998))により80 ppm(0.290 mg/L)以上で嗅上皮の変性および気道上皮化生が見られ、ヒトの慢性ばく露で気道刺激が報告されていることから、区分1(呼吸器系)とした。 ・心血管系に関しては、慢性クロロプレン中毒患者の44%が心血管系に病理学的な変化があり、心筋ジストロフィーも報告されている(IARC 19(1979))とのヒトの事例に基づき区分1(心血管系)とした。 なお、免疫系に関しては、情報源であるIARCの1979年版の記事が1999年版では記載がなく、他の評価書でも言及されていないので分類の根拠としなかった。また、歯・歯周組織に関しても、IARC 19(1979)での記載とNTP TR 467(1998)の緒言における簡単な引用のみで、その他の評価書で全く採用されていないので分類の根拠としなかった。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分外 - - - - 魚類(ブルーギル)での96時間LC50 = 245 mg/L(SIDS, 2003)、甲殻類(オオミジンコ)での48時間EC50 = 348 mg/L(SIDS, 2003)であることから、区分外とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分外 - - - - 急性毒性区分外であり、難水溶性でない(水溶解度=874.9 mg/L(PHYSPROP Database、2009))ことから、区分外とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

厚生労働省モデルラベル

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厚生労働省モデルSDS

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