GHS分類結果(過年度実施分類結果の再分類)

名称:ぎ酸
CAS番号:64-18-6

結果:
物質ID: 21B3006
分類実施者: 厚生労働省、環境省
分類実施年度: 平成21年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H21.3版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性に関連する原子団を含まない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分3 警告 H226: 引火性液体及び蒸気 P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P233: 容器を密閉しておくこと。
P240: 容器を接地すること/アースをとること。
P241: 防爆型の電気機器/換気装置/照明機器/...機器を使用すること。
P242: 火花を発生させない工具を使用すること。
P243: 静電気放電に対する予防措置を講ずること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
引火点(45℃:密閉式、(GESTIS(access on 4 2009)))は23℃≦、≦60℃により区分3とした。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性・自己反応性に関連する原子団を含まない。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 発火点が520℃(ICSC(J)(1997))、539℃(NFPA(13th, 2002))、601.1℃(危険物DB(第2版, 1993))>70℃より、区分外とした。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属又は半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含まない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - フッ素と塩素を含まず、酸素を含む有機化合物であるが、この酸素は炭素あるいは水素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - -O-O-構造を有していない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データなし。なお、文献にはcorrosive to metals(HSDB(2005))と記載されている。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4 警告 H302: 飲み込むと有害 P301+P312: 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P330: 口をすすぐこと。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットのLD50値 730-1830 mg/kg(DFGOT(2003))、1830 mg/kg(PATTY(5th, 2001))、1100-1850 mg/kg(NTP TR19(1992))がガイダンス値区分4の範囲内である。
1 急性毒性(経皮) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分4 警告 H332: 吸入すると有害 P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
ラットのLC50値 7.4 mg/L = 3931ppmV(DFGOT(2003))に基づき、区分4とした。なお、被験物質の飽和蒸気圧濃度は 105.5 mg/L であり、試験濃度 7.4 mg/L = 3931ppmV は飽和蒸気圧濃度の90%値(95.0 mg/L)より低い値であるから蒸気と判断し、ガスのガイダンス基準値で分類した。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データなし。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分1 危険 H314: 重篤な皮膚の薬傷及び眼の損傷 P301+P330+P331: 飲み込んだ場合:口をすすぐこと。無理に吐かせないこと。
P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ウサギを用いた試験で腐食性を示し(DFGOT(2003)、IUCLID(2000))、ヒトではケロイドを伴った熱傷を起こし、しばしば瘢痕を生じると記述され、また、実際にギ酸のばく露により脚に腐食が見られ瘢痕化した症例報告がある(BUA Report No.81(1991))。これらの結果に基づき区分1とした。なお、pH = 2.2(at 10g/L, 20℃)(IUCLID(2000))であり、EU分類はC; R35である。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分1 危険 H318: 重篤な眼の損傷 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
ウサギを用いた試験で眼に刺激性あるいは腐食性が見出され(DFGOT (2003))、また、角膜に熱傷が生じたと報告されている(PATTY (5th, 2001))。さらに別の試験における所見として、前房蓄膿、水晶体混濁、角膜内皮の一部欠損、浸潤、血管新生の記述(HSDB (2006))もある。ヒトでもばく露による眼傷害の症例報告(BUA Report No.81(1991)、IUCLID(2000))があり、結膜炎、角膜炎、角膜の永続的瘢痕化も報告されている(PATTY (5th, 2001))。これらの事実とに加え、pH = 2.2 (at 10g/L, 20℃)(IUCLID(2000))であり、皮膚に腐食性を示していることから区分1とした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - データなし。
5 生殖細胞変異原性 分類できない - - - - in vivoの試験データがなく分類できないとした。なお、in vitro試験においては、エームス試験8件中7件が陰性(残り1件はTA97にて「はっきりしない(equivocal)」との結果が得られている)(PATTY(5th, 2001)、DFGOT(2003)、JECFA(1998)、IUCLID(2000)、NTP DB(Access on 4. 2009))。 染色体異常試験(いずれもCHO細胞を用いた試験)4件中2件は陰性(JECFA(1998))、その他は陽性の結果であるが低pHに起因する為と推察される(PATTY(5th, 2001)、DFGOT(2003))。姉妹染色分体交換試験3件全てにおいて(ヒトのリンパ球を用いる×1件、ハムスターのV79細胞を用いる×2件)陰性との結果が得られている(DFGOT(2003)、IUCLID(2000))。
6 発がん性 分類できない - - - - マウスを用いた50日間の経皮(週に2回耳に塗布)試験で組織学的変化はなし(DFGOT(2003))とあり、ラットを用いた2〜3年の経口投与(飲料水)試験において腫瘍は観察されなかった(IUCLID(2000))とあるが、これらのデータのみでは不十分であるため分類できないとした。
7 生殖毒性 分類できない - - - - ラットおよびマウスに13週間吸入ばく露により精巣、精子の測定項目、発情周期などに影響はない(NTP TOX-19(1992))との報告があるが、生殖能及び仔の発生に関するデータがなく分類できない。なお ラットを用い7ヵ月まで1.0%の飲料水投与により、仔の生存率が50〜67%低下したとの報告(Tracor Jitco, 1974(NTP TR19(1992))があるが、試験法及び結果についてそれ以上の具体的な記述がない。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(呼吸器、血液、腎臓) 危険 H370: 臓器の障害(呼吸器、血液、腎臓) P307+P311: 暴露した場合:医師に連絡すること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトで当該物質の誤飲により、消化管において重度の酸熱傷を起こし、さらにアシドーシス、溶血、肝機能異常、急性腎不全、肺炎などが観察されている(DFGOT (2003))。また、ヒトの経口摂取による53件の症例では消化管の壊死、肺炎、腎機能障害、低血圧、意識消失が観察され(BUA Report No.81(1991))、他に、比較的大量を摂取して死亡に至った症例報告も数多く(DFGOT (2003)、PATTY (5th, 2001)、ACGIH (2001)、NTP TR19 (1992)、BUA Report No.81(1991))、症状としてアシドーシス、溶血、貧血、チアノーゼが見られ、死因あるいは重篤例の所見に胃穿孔の他に急性腎不全の記載が多い(DFGOT (2003)、BUA Report No.81(1991))。ヒトでの吸入ばく露では、鼻炎、咳、気管支炎、呼吸困難の報告がある(NTP TR19 (1992))。以上の情報に基づき区分1(呼吸器、血液、腎臓)とした。なお、消化管に関しては当該物質は腐食性物質であるため局所影響と判断し、採用しなかった。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分2(上気道) 警告 H373: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害のおそれ(上気道) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットを用いた13週間の吸入ばく露(1日6時間、週5日間)試験で、240 mg/m3(0.24 mg/L)群で鼻腔の呼吸上皮、嗅上皮の変性の発生率増加が報告され、マウスを用いた同様な試験でも120 mg/m3(0.12 mg/L)以上の群で鼻腔の嗅上皮の軽微な変性がみられている(環境リスク評価 第6巻(2008))。影響が明確に現れたラットでの試験用量0.24 mg/Lに基づき、ガイダンス値(蒸気)を参照し区分2(上気道)とした。また、ヒトでは長期的吸収でアルブミン尿及び血尿を生じると報告されているが(NTP TR19(1992))、腎症につての記載はない。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分3 - - H402: 水生生物に有害 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
藻類(セネデスムス)での96時間EC50 = 25 mg/L(HSDB, 2009)であることから、区分3とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分外 - - - - 急速分解性があり(BODによる分解度:110%(既存点検, 1993))、かつ生物蓄積性が低いと推定される(log Kow = -0.54(PHYSPROP Database, 2009))ことから、区分外とした。
12 オゾン層への有害性 分類できない - - - - 当該物質はモントリオール議定書の附属書に列記されていないため。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

厚生労働省モデルラベル

職場のあんぜんサイトへ

厚生労働省モデルSDS

職場のあんぜんサイトへ


To GHS Information