GHS分類結果

名称:3-クロロ-1, 2-プロパンジオール
CAS番号:96-24-2

結果:
物質ID: 21A3610
分類実施者: 厚生労働省、環境省
分類実施年度: 平成21年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H21.3版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性に関連する原子団を含まない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分外 - - - - 引火点145℃(o.p.)(IUCLID(2000))は93℃超であり区分外とした。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性・自己反応性に関連する原子団を含まない。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - No data(IUCLID(2000))となっており発火点がないと判断できるので区分外とした。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属または半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含まない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - フッ素を含まず酸素及び塩素を含む有機化合物であるが、これらの元素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - -O-O-構造を有していない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データなし。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分3 危険 H301: 飲み込むと有毒 P301+P310: 飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P330: 口をすすぐこと。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットLD50値として得られた10件(150, 125, 152, 195, 250, 50, 58, 172, 116, 150 mg/kg bw)のデータ(JECFA (2001)、DFGOT Vol.5 (1993))のうち、1件が区分2、9件が区分3、に該当するため区分3とした。
1 急性毒性(経皮) 区分4 警告 H312: 皮膚に接触すると有害 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P322: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットLD50値 1057 mg/kg及びウサギLD50値 1056 mg/kg(RTECS(2009);元文献:National Technical Information Service.(Springfield, VA 22161)Formerly U.S. Clearinghouse for Scientific & Technical Information.)はいずれも区分4に該当する。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHS定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分2 危険 H330: 吸入すると生命に危険 P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P284: 呼吸用保護具を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
P320: 特別な処置が緊急に必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットLC50値:88-174 ppm/4h(IUCLID(2000))に基づき区分2とした。なお、飽和蒸気圧濃度は4934 ppmであり「ミストがほとんど混在していない蒸気」であることからガスの基準値を適用した。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データなし。
2 皮膚腐食性/刺激性 分類できない - - - - データなし。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2A 警告 H319: 強い眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
ウサギの角膜に試験物質原液を適用による傷害の程度はグレード4(1〜10の10段階で最も重度の場合グレード10)であり、中等度moderate)の刺激性との評価(DFGOT Vol.5(1993))に基づき区分2Aとした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - データなし。
5 生殖細胞変異原性 区分外 - - - - マウスに腹腔内または経口投与、およびラットに経口投与による優性致死試験(生殖細胞を用いたin vivo経世代変異原性試験)においていずれも陰性(JECFA(2001))、また、ラットおよびマウスの骨髄を用いた小核試験(体細胞in vivo 変異原性試験)においてもいずれも陰性(JECFA(2001))の結果に基づき、区分外とした。なお、in vitroの試験については、Ames試験およびマウスのリンパ腫を用いた遺伝子突然変異試験で陽性結果(JECFA(2001))が報告されている。
6 発がん性 区分2 警告 H351: 発がんのおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ICSCによるIARCとのエキスパートディスカッションで「3-Chloro-1, 2-propanediol causes tumors in experimental animals, hence it is considered carcinogen. non-genotoxic mechanism), Agreed in 2007 probable IARC 2B.」との結論により区分2とした。なおラットに104週間飲水投与した試験において、死亡率に影響はなく、用量に関連した変化として、過形成および/または腫瘍の発生頻度が腎臓、精巣、乳腺および包皮腺で増加し、膵臓では減少が報告されているが、著者によれば、腎臓腫瘍の発生は慢性進行性腎症の発生増加に伴う二次的なものであり、精巣や乳腺などの腫瘍はホルモンの不均衡から生じた結果と考えられている(JECFA(2001))。
7 生殖毒性 区分1B 危険 H360: 生殖能又は胎児への悪影響のおそれ P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
雄ラットに10〜12日間の経口投与により不妊を呈し、高用量(25 mg/kg/day)を14日間の経口投与では精巣および精巣上体の病変に加え、精子運動能の低下が観察された(JECFA(2001))。また、雄ラットに2または4週間の経口投与試験の高用量(8 mg/kg/day)群で認められた精子運動能の低下は回復したが、無投与の雌との交配では妊娠の成立が全く見られなかった(JECFA(2001))。精子の運動能に対する影響は、ラットに9日間経口投与した別の試験でも見られ、高用量群の雄の精子が雌の卵管に到達せず、卵管中の受精卵の割合の用量依存的な低下が報告されている(JECFA(2001))。以上のようにラットの経口投与により雄で明らかな受胎能の阻害が認められたことから区分1Bとした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(腎臓)、区分2(中枢神経系)、区分3(気道刺激性) 危険
警告
H370: 臓器の障害(腎臓)
H371: 臓器の障害のおそれ(中枢神経系)
H335: 呼吸器への刺激のおそれ(気道刺激性)
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P307+P311: 暴露した場合:医師に連絡すること。
P309+P311: 暴露したとき、又は気分が悪いとき:医師に連絡すること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットに経口投与により、130 mg/kgで腎機能不全、260 mg/kgで急性糸球体腎炎による死亡の記載(DFGOT vol.5(1993))があり、また、ラットに100〜200 mg/kgを経口投与した別の試験で、組織学的所見として腎臓で尿細管の拡張と蛋白の沈積を伴う尿細管上皮の壊死と変性が報告され(HSDB(2002))、ガイダンス値区分1に相当する用量での変化であることから区分1(腎臓)とした。このラットに100〜200 mg/kgを経口投与した試験では、不活発、頭部と足部の弛緩性麻痺、催眠の症状が観察されており、かつマウスに100〜220 mg/kgを経口投与した試験でも運動失調、姿勢異常、正向反射の消失、不穏、部分的麻痺が認められている(HSDB(2002))ことに基づき、ガイダンス値からは区分1相当であるが、判定基準1b3)を満たさないList 2のデータのため、区分2(中枢神経系)とした。一方、ラットおよびマウスに吸入ばく露した試験において、両動物種とも毒性症状として軽微な気道刺激性が記載されている(HSDB(2002))ことから区分3(気道刺激性)とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(腎臓)、区分2(血液) 危険
警告
H373: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害のおそれ(血液)
H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(腎臓)
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットの経口投与試験で慢性進行性腎症が発生し、4週間投与では60 mg/kg/day(90日補正:18.5 mg/kg/day)、また、104週間投与では用量に相関し全群(1.1〜35 mg/kg/day)で認められており(JECFA(2001))、その変化はガイダンス値範囲区分1に相当する用量まで及んでいることから区分1(腎臓)とした。一方、サル6匹に30 mg/kg bw/dayを6週間経口投与により、貧血、白血球減少症、重度の血小板減少症を伴う血液学的異常が示され、影響を受けた3匹中2匹が骨髄抑制により死亡したとの報告(JECFA(2001))、かつ、ラットに4週間経口投与した試験の60 mg/kg/day(90日補正:18.5 mg/kg/day)で、ヘモグロビン濃度、赤血球容積、赤血球数の有意な減少が報告されており(JECFA(2001))、これらの用量はガイダンス値範囲区分2に相当していることから、区分2(血液)とした。なお、精巣にも病理組織学的変化が報告されているが、生殖毒性として扱うため本項では分類対象としなかった。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
11 水生環境有害性(長期間) 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

厚生労働省モデルラベル

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厚生労働省モデルSDS

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