GHS分類結果

名称:石油留分
CAS番号:64742-94-5

結果:
物質ID: 20A2291
分類実施者: 厚生労働省、環境省
分類実施年度: 平成20年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H20.9.5版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 水素化精製過程で炭化水素からの窒素・酸素のアンモニア・水としての解離、不飽和結合の飽和、さらに金属分の触媒上への沈着分離が起こるため爆発性に関わる原子団を含まない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分4 - 警告 H227: 可燃性液体 P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
引火点 58℃, ≧62℃, 65℃(いずれも密閉式、IUCLID, 2000)に基づき、区分4とした。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 水素化精製過程で炭化水素からの窒素・酸素のアンモニア・水としての解離、不飽和結合の飽和、さらに金属分の触媒上への沈着分離が起こるため爆発性・自己反応性に関わる原子団を含まない。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 発火点が>200℃, >450℃, 550℃である(いずれも IUCLID, 2000)。分類指針において発火点70℃以上は区分外である。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 水素化精製過程で金属分の触媒上への沈着分離が起こるため金属または半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含まない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - 水素化精製過程で炭化水素からの酸素の水としての解離、さらに金属分の触媒上への沈着分離が起こるため酸素又はハロゲンを含まない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 水素化精製過程で炭化水素からの酸素の水としての解離が起こるため分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データなし。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分外 - - - - ラットにおけるLD50値 4.5 ml/kg, 13.3 ml/kg, 12.3 ml/kg [密度 0.82 g/cm3(15℃)(IUCLID, 2000)より、それぞれ換算値 3690, 10906, 10086 mg/kg](いずれもEHC 20, 1982), 7050 mg/kg 体重(IUCLID, 2000)に基づき、区分外とした。
1 急性毒性(経皮) 区分外 - - - - ウサギにおけるLD50値は、5.0 ml/kg [密度 0.82 g/cm3(15℃)(IUCLID, 2000)より、換算値 4100 mg/kg](EHC 20, 1982)のデータが3つ、>3160 mg/kg 体重(IUCLID, 2000)のデータが2つあり、それらに基づいて区分外(国連分類基準の区分5)とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - ラットにおけるLC50値(4-8h)>0.38 mg/L(>66 ppm)(EHC 20, 1982)が得られた。飽和蒸気圧濃度 [蒸気圧0.07-1.6 hPa(20℃、IUCLID, 2000)より換算] は約69〜1579 ppmで、得られたLC50値は、飽和蒸気圧濃度の90%以下であるため、「ミストがほとんど混在しない蒸気」としてppmV濃度基準値で区分した。その結果、LC50値(4-8h)>0.38 mg/L(>66 ppm)は、どの区分に該当するのか判断できないため、分類できないとした。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - ラットにおけるLC50値(4h)>2450 ppm, >580 ppm, >553 ppm が得られた。飽和蒸気圧濃度 [蒸気圧0.07-1.6 hPa(20℃、IUCLID, 2000)より換算] は約69〜1579 ppmで、得られたLC50値 >2450 ppm のみ「ミスト」として区分した。しかし、分子量が特定できないため、mg/Lに単位換算できず、分類できないとした。 その他のデータも、試験物質の分子量が特定できないため、飽和蒸気圧濃度との比較ができず、蒸気かミストか判断できないため、分類できなかった。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分2 警告 H315: 皮膚刺激 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P332+P313: 皮膚刺激が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P362: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
ヒトでは、26人の上腕皮膚に2日間半密封状態で本物質を投与した2つの試験(GLP)において、刺激性はみられない(IUCLID, 2000)が、臨床試験についての記載で「芳香族溶剤はとりわけ重大な皮膚の一時刺激性をもたらす」(EHC 20, 1982)とある。ウサギを用いた7つの試験では、EHC 20(1982)における3つの試験のうち、ドレイズスコア値2.79(区分2に相当)で「中等度の刺激性」とされる試験と、ドレイズスコア値2.04、2.17(いずれも区分外:国連分類の区分3に相当)で、「中等度の刺激性」とされている2つの試験がある。IUCLID(2000)における4つの試験(GLP)では、「中等度の刺激性」と「軽度の刺激性」が半ーにみられる。以上のことから、安全性を考慮して区分2とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2 警告 H319: 強い眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
ウサギを用いた4つの試験のうち、EHC 20(1982)における3つの試験では「中等度の刺激性」とされており、IUCLID(2000)における1試験(GLP)では「軽度の刺激性(Slightly irritating)」とされている。以上のことから、区分2とした。眼の回復に関する記載が無いため、細区分は行わなかった。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - ヒトでのパッチテスト(GLP)において「感作性なし」(IUCLID, 2000)とあり、モルモットを用いたMaximization test(GLP)においても感作性がみられない(IUCLID, 2000)ことから、区分外に該当するが、リスト2のデータであることから分類できないとした。
5 生殖細胞変異原性 区分外 - - - - マウスの骨髄を用いた小核試験(GLP)で陰性である(IUCLID, 2000)ことから区分外とした。なお、in vitroでは、Ames試験で陰性(EHC 20, 1982 ; IUCLID, 2000)、細胞遺伝学的試験(Cytogenetic test)で陽性(EHC 20, 1982)である。
6 発がん性 区分外 - - - - ラット(Wistar)を用いた12ヶ月間吸入試験において、6ヶ月後に用量1.83 mg/Lの雌で乳腺癌がみられ、12ヵ月後には、用量0.47 mg/Lの雄で脳にグリア芽腫、用量1.83 mg/Lの雄で脾リンパ腫、同じく用量1.83 mg/Lの雌で子宮の平滑筋腫がみられた(IARC 47, 1989)。しかし、この試験についてIARCでは「試験期間が発がん性を認めるには不十分である」と記載されており、「石油系溶剤全体の評価として」はグループ3(区分外に相当)に分類されている(IARC 47, 1989)。以上の結果から、IARCの評価に従い区分外とした。
7 生殖毒性 分類できない - - - - ラットを用いた吸入試験(GLP)において、用量106ppmまたは364 ppmで、親に影響は認められず、仔にも奇形児の誘発や性比の変化、胚毒性、胎児の成長・発達阻害などの影響はみられない(EHC 20, 1982 : IUCLID, 2000)。ラットを用いた経口試験(GLP)において、高用量の450 mg/kg 体重で、親の著しい体重増加抑制と摂餌量の減少がみられたが、胎児に影響はみられない(IUCLID, 2000)。しかし、親の生殖能に関するデータがなく、分類できないとした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分3(気道刺激性、麻酔作用) 警告 H335: 呼吸器への刺激のおそれ(気道刺激性、麻酔作用)
H336: 眠気又はめまいのおそれ(気道刺激性、麻酔作用)
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットを用いた吸入試験(8h)において、鼻と眼の刺激性、協調運動の進行性消失(progressive loss of coordination)がみられる(IARC 47, 1989)。ウサギを用いた経皮試験においては、眠気や運動活動の変化がみられる(RTECS, 2006 元文献:NTIS, National Technical Information Service. OTS0534724)。PATTY 5th(2001)では、経口、経皮または吸入経路の急性毒性について、「眼、鼻、のどの刺激性、めまいと吐き気、呼吸困難、中枢神経系の抑制、昏睡」との記載があり、以上の結果から、区分3(気道刺激性、麻酔作用)とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 分類できない - - - - ラット、イヌ、ネコを用いた13週間吸入暴露試験において、用量0.38 mg/Lでそれぞれの種に重大な毒性作用はみられない(EHC 20, 1982 ; IARC 47, 1989)。その他ラットを用いた13週間吸入暴露試験においても、ガイダンス値上限を上回る用量(1.8, 3.7, 7.4 mg/L)で、臓器重量増加(肝臓と腎臓)と軽い貧血がみられるのみで、臓器への機能障害はみられない(IARC 47, 1989)。よって、吸入経路では、区分外相当である。ラットを用いた13週間経口投与試験においては、肝臓や胃、甲状腺、膀胱に影響がみられる(IUCLID, 2000)が、ガイダンス値上限を上回る用量(300, 600, 1000 mg/kg 体重/日)での試験であるため、区分できなかった。なお、PATTY 5th(2001)では、慢性毒性の徴候として「ベンゼンの含有量次第では、中枢神経系の抑制と軽度から重度の造血系の変化がおきる」と記載されている。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - ラットを用いた試験(Aspiration ; mortality)において、半数が死亡しており(5/10)(EHC 20, 1982)、EU分類では、10%以上の濃度でEU警句R65に分類されているたがデータ不足で分類できないとした。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分1 警告 H400: 水生生物に非常に強い毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
甲殻類(オオミジンコ)による48h-EC50=0.95mg/L(IUCLID 2000)であることから、区分1とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分1 警告 H410: 長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
急性毒性区分1であり、急速分解性を示すデータが無いことから区分1とした。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

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厚生労働省モデルSDS

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