GHS分類結果

名称:塩化コバルト(II)
CAS番号:7646-79-9

結果:
物質ID: 20A2241
分類実施者: 厚生労働省、環境省
分類実施年度: 平成20年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H20.9.5版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関わる原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義による固体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義による固体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義による固体である。
6 引火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義による固体である。
7 可燃性固体 区分外 - - - - 不燃性(ICSC(J)(2004))である。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 爆発性に関わる原子団、および自己反応性に関連する原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義による固体である。
10 自然発火性固体 区分外 - - - - 不燃性(ICSC(J)(2004))である。
11 自己発熱性化学品 区分外 - - - - 不燃性(ICSC(J)(2004))である。
12 水反応可燃性化学品 分類できない - - - - 金属(Co)を含むが、試験データがない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義による固体である。
14 酸化性固体 分類できない - - - - ハロゲンを含む無機化合物であるが、データがなく分類できない。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 分子内に-O-O-構造を含まない無機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - 固体状の物質に適した試験方法がない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4 警告 H302: 飲み込むと有害 P301+P312: 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P330: 口をすすぐこと。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットのLD50値 42.4mg/kg bw, 358mg/kg/day, 418mg/kg (ATSDR (2004)) に基づき、データ数の多い区分4とした。なおEU分類にてR22 (区分3または4)(EU-Annex I (access on 1. 2009))である。
1 急性毒性(経皮) 区分外 - - - - ラットにおけるLDLo値 2000mg/kg (RTECS (2008)) に基づき、JIS分類基準の区分外(国連分類基準は区分5または区分外)とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義による固体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - ウサギのTCLo値 0.5mg/m3/6h/4w(換算値: 3x10^-5 mg/L/4h)(RTECS(2008))が得られたが区分を特定できず分類できないとした。
2 皮膚腐食性/刺激性 分類できない - - - - ヒトにおいて皮膚刺激性がある(HSDB(2004))が、分類根拠となる試験情報がないためデータ不足で分類できないとした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 分類できない - - - - 本物質のダストおよび固体(solid)に眼刺激性あり(HSDB(2004)、および短期暴露による眼刺激性の記述あり(ICSC(J)(2004))の記述があるが具体的なデータがなくデータ不足で分類できない。
4 呼吸器感作性 区分1 危険 H334: 吸入するとアレルギー、喘息又は呼吸困難を起こすおそれ P304+P341: 吸入した場合:呼吸が困難な場合には、空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P342+P311: 呼吸に関する症状が出た場合:医師に連絡すること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P285: 換気が十分でない場合には、呼吸用保護具を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
コバルトおよびコバルト化合物として日本産業衛生学会にて1(産衛学会勧告(2008))、EUにてR42/43(EU-Annex I(access on 1. 2009))に分類されている。工場労働者においても喘息症状が認められている(DFGOT(vol.23, 2007))ことから区分1とした。
4 皮膚感作性 区分1 警告 H317: アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P333+P313: 皮膚刺激又は発疹が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P272: 汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
コバルトおよびコバルト化合物として日本産業衛生学会にて1(産衛学会勧告(2008))、EUにてR42/43(EU-Annex I(access on 1. 2009))に分類されている。動物試験(LLNA法、Maximization test)およびヒトのパッチテストにおいても複数の陽性結果が得られたことから区分1とした。
5 生殖細胞変異原性 区分2 警告 H341: 遺伝性疾患のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
in vivo(マウスを用いる優性致死試験)において陰性であり(DFGOT(vol.23, 2007))、in vivo(マウス骨髄細胞を用いる染色体異常試験、小核試験)で陽性であるが(DFGOT(vol.23, 2007))、生殖細胞in vivo遺伝毒性試験のデータが得られないため区分2とした。in vitro試験においては、エームス試験、ヒト線維芽細胞、CHO細胞、HeLa細胞およびヒト白血球を用いたDNA損傷試験、V79細胞を用いた遺伝子突然変異試験において陽性結果(DFGOT(vol.23, 2007))が得られている。
6 発がん性 区分2 警告 H351: 発がんのおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
コバルトおよびコバルト化合物として日本産業衛生学会にて2B(産衛学会勧告(2008))、IARCにて2B(IARC(vol.86, 2006))、ACGIHにてA3(ACGIH(2001))に分類されていることから区分2とした。なお、EUにおいてはCat.2(EU-Annex I(access on 1. 2009))に分類されている。なお、ヒトで甲状腺腫の症例(HSDB(2004))がある。
7 生殖毒性 区分2 警告 H361: 生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
マウスの12週間飲水試験(200, 400, 800mg/L)にて受精能の低下、着床痕および仔の生存率の減少が見られた(CICAD69(2006))。マウスの10週間飲水試験(400ppm)にて着床前胚損失の増加、妊娠率、仔の数(pups per litter)および受精能の低下が認められた。以上、動物実験で親動物での一般毒性に関する記述がないが、明確な生殖毒性が記載されていることから区分2とした。なお、EU分類にてCat.3(R60)(区分1B相当)(EU-Annex I(access on 1. 2009))である。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(全身毒性) 危険 H370: 臓器の障害(全身毒性) P307+P311: 暴露した場合:医師に連絡すること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトにおいては、19ヶ月の男児が本物質溶液(用量不明)を飲み込み、嘔吐および処置を施されたが6.5時間後に死亡した例(ATSDR (2004))がある。また、子供に赤血球の生成の抑制によるチアノーゼ、昏睡および死に至ると記述がある(HSDB (2004))。本物質による影響には胸骨後に痛み、耳鳴り、吐き気および嘔吐、神経性難聴、気管圧迫を伴う甲状腺過形成、粘液水腫、倦怠感などが記述されている(HSDB (2004))。ラットによる強制経口試験では4.25mg/kgにて自発運動の低下が見られた(ATSDR (2004))。以上、ヒトの死亡例に基づき区分1(全身毒性)とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(肺、神経系、甲状腺)、区分2(血液、心筋、生殖器) 危険
警告
H373: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害のおそれ(血液、心筋、生殖器)
H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(肺、神経系、甲状腺)
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
20-47歳の男性6人に150mg/日を経口投与した結果、赤血球が16-20%増加した(CICAD69(2000))。6歳児が誤飲(2.5g)した結果、嘔吐および好中球減少症が見られた(HSDB(2004))。ウサギの吸入試験(14週間, 0.4-2 mg/m3)において、II型肺胞上皮細胞の特異的な結節増殖が認められた(産衛学会勧告(2008))。ラットの経口試験(3週間, 50mg/kg bw/cobalt chloride: 90日補正; 12mg/kg)において、心筋細胞溶解が見られた(CICAD69(2006))。ラットの強制経口試験(7ヶ月, 0.05, 2.5mg/kg/day)にて、2.5mg/kg/day(90日補正: 5.8mg/kg/day)群で潜時反射の遅延が見られた(ATSDR(2006))。ラットの混餌試験(4週間, 3.79mg/kg/day; 90日換算: 1.17mg/kg/day)において甲状腺の萎縮が認められ(ATSDR(2004))、マウスによる飲水試験(45日間, 26mg/kg/day)では甲状腺に壊死および炎症が認められた(ATSDR(2004))。マウスの飲水試験(12週間, 200-800mg/L)試験にて精巣重量が顕著に減少し、その他4試験にて精巣重量の減少、変性または萎縮が認められた(IARC(vol.86, 2006), ATSDR(2004))。以上の結果から区分1(肺、神経系、甲状腺)、区分2(血液、心筋、生殖器)とした。なお、動物試験においては重篤な所見として記述されたものを分類根拠として採用した。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分1 警告 H400: 水生生物に非常に強い毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
藻類(緑藻)の96h-ErC50=0.6mg/L(CICADS 69 2006)であることから、区分1とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分1 警告 H410: 長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
無機物のため急速分解性は無いと考えられ、急性毒性分類が区分1のため、区分1とした。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

厚生労働省モデルラベル

職場のあんぜんサイトへ

厚生労働省モデルSDS

職場のあんぜんサイトへ


GHS関連情報トップページに戻る