GHS分類結果

名称:モリブデン(VI)トリオキシド
CAS番号:1313-27-5

結果:
物質ID: 20A2216
分類実施者: 厚生労働省・環境省
分類実施年度: 平成20年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H20.9.5版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関わる原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアソール製品ではない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
6 引火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
7 可燃性固体 区分外 - - - - モリブデン化合物の最終酸化産物(Ulmann's(E)(6th, 2003))であることから不燃物であるため、区分外とした。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性・自己反応性に関連する原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
10 自然発火性固体 区分外 - - - - モリブデン化合物の最終酸化産物(Ulmann's(E)(6th, 2003))であることから不燃物であるため、区分外とした。
11 自己発熱性化学品 区分外 - - - - モリブデン化合物の最終酸化産物(Ulmann's(E)(6th, 2003))であることから不燃物であるため、区分外とした。
12 水反応可燃性化学品 区分外 - - - - 水溶解度は0.49 g/L(28℃)(Ulmann's(2006))で水に対して安定である。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
14 酸化性固体 分類できない - - - - データなし。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 無機物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - 固体状の物質に適した試験方法が確立されていない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分3 危険 H301: 飲み込むと有毒 P301+P310: 飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P330: 口をすすぐこと。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットのLD50値=125mg/kg(DFGOT(2008))、83 mg Mo/kg(HSDB(2005))は区分3に該当する。
1 急性毒性(経皮) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データなし。
2 皮膚腐食性/刺激性 分類できない - - - - データなし。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 分類できない - - - - 試験データがないために分類できない。なお、EUでは「+R36/37Irritating to eyes and respiratory system.(眼および呼吸器を刺激する)」(EU-Annex I(Access on December. 2008))である。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - データなし。
5 生殖細胞変異原性 分類できない - - - - in vivoのデータがないために分類できない。なお、in vitro変異原性試験のAmes試験及び染色体異常試験の結果は陰性(NTP TR 462(1997))であった。
6 発がん性 区分2 警告 H351: 発がんのおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットとマウスを用いた2年間の吸入試験(ラット:106週間、マウス:105週間)で、ラットの雌雄において腫瘍の発生の増加は認められていない。しかし、マウスでは雄各グループ50匹中10mg/m3暴露群で27匹, 30mg/m3暴露群21匹、100mg/m3暴露群18匹が、雌では10mg/m3暴露群6匹、30mg/m3暴露群8匹、100mg/m3暴露群15匹が肺の腺腫または癌腫が見られている(NTP TR 462(1997))。対照群と比較するとマウスの雄では暴露量に関連する差異は殆んど見られないが、マウスの雌では暴露量に比例して発現しているとある(NTP TR 462(1997))ことより区分2とした。なお、EUではカテゴリー3、DFGの評価では「3B」(DFGOT vol.18(2000))である。
7 生殖毒性 分類できない - - - - マウスを用いた吸入試験にて精巣の重量及び精子の形状や動きをコントロール群と比較したところ、毒性影響の兆候はなく、雄の繁殖力への影響はなかった(DFGOT, 2008)としているが、このデータのみで判断するのは不十分なため、分類できない。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(心臓、腎臓、肝臓) 危険 H370: 臓器の障害(心臓、腎臓、肝臓) P307+P311: 暴露した場合:医師に連絡すること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットを用いた2時間の吸入試験において、64 mg/m3(4時間換算値:32 mg/m3→0.032mg/L)で心臓、腎臓、肝臓の萎縮が生じた(DFGOT vol.18(2000))の記述より区分1(心臓、腎臓、肝臓)とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(肺)、区分2(肝臓、腎臓) 危険
警告
H373: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害のおそれ(肝臓、腎臓)
H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(肺)
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットを用いた2ヶ月間の吸入試験の3-10mg/m3(90日換算値:0.0018〜0.007 mg/L)の用量において、腎臓、肝臓の萎縮、肝臓の脂肪蓄積による変化と肥厚化した肺胞と間質性肺炎と肺気腫が見られ(DFGOT vol.18(2000))、4〜8ヶ月の吸入試験の50mg/m3(0.05mg/L)の用量で肺の線維化が見られている。また、モルモット(guinea pig)を用いた1ヶ月間の強制経口投与試験の25〜 200 mg/動物(90日換算値:10 mg/kg bw〜90 mg/kg bw)の用量で、肝臓(脂肪肝)と腎臓(壊死と肉芽腫)の変化が見られ、5週間の吸入試験の205 mg/m3(90日換算値:0.0 2mg/L)の用量で、肝臓の空胞化と壊死が見られている(DFGOT vol.18(2000))。更に、ヒトのデータとして、モリブデン(VI)トリオキシドを4年から7年間で1〜25mg/m3暴露された19名のうち3名が呼吸困難と咳の頻発が生じ、レントゲン撮影の結果じん肺であった(DFGOT vol.18(2000))との報告から、区分1(肺)、区分2(肝臓、腎臓)とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分3 - - H402: 水生生物に有害 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
魚類(ファットヘッドミノー)での96h-LC50=70mg/L(AQUIRE 2008)であることから、区分3とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分3 - - H412: 長期継続的影響によって水生生物に有害 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
急性分類が区分3であり、金属化合物のため急速分解性が無いと考えられることから、区分3とした。


分類結果の利用に関する注意事項:
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 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

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厚生労働省モデルSDS

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