GHS分類結果

名称:エフェドリン
CAS番号:299-42-3

結果:
物質ID: 20A2203
分類実施者: 厚生労働省・環境省
分類実施年度: 平成20年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H20.9.5版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関わる原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
6 引火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
7 可燃性固体 分類できない - - - - データなし。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 爆発性に関わる原子団、および自己反応性に関連する原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
10 自然発火性固体 分類できない - - - - データなし。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 融点33-39℃(Ullmanns(E)6th,2003)であり、融点が140℃以下の固体に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属又は半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - フッ素及び塩素を含まず、酸素を含む有機化合物であるが、この酸素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - 固体状の物質に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4 警告 H302: 飲み込むと有害 P301+P312: 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P330: 口をすすぐこと。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットにおけるLD50値 600 mg/kg 体重(RTECS,2008 : 元文献 Psychotropic Drugs and Related Compounds, 2nd ed., Usdin, E., and D.H. Efron, Washington, DC, 341,1972)に基づき、区分4とした。マウスにおけるLD50値 689 mg/kg 体重(RTECS,2008 : 元文献 Japanese Journal of Toxicology. 4,143,1991)も区分4に相当する。ヒトでは薬物としてエフェドリンを過剰摂取し、頻拍、呼吸困難がみられ心臓麻痺や窒息により死亡した例が報告されている(HSDB,2007)。なおエフェドリン硫酸塩では、マウスLD50値が 812 mg/kg 体重(雄)、1072 mg/kg 体重(雌)(HSDB,2007)であり、これも区分4相当である。
1 急性毒性(経皮) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義による固体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データなし。
2 皮膚腐食性/刺激性 分類できない - - - - データなし。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 分類できない - - - - データなし。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - データなし。
5 生殖細胞変異原性 区分外 - - - - 体細胞in vivo変異原性試験(マウスの赤血球を用いた小核試験)で陰性である(HSDB,2007)ことから区分外とした。なお、3つのエームス試験(NTP DB, access on Nov.2008 ; HSDB,2007)においても陰性である。
6 発がん性 分類できない - - - - データなし。
7 生殖毒性 区分1A、追加区分:授乳に対するまたは授乳を介した影響 危険 H362: 授乳中の子に害を及ぼすおそれ
H360: 生殖能又は胎児への悪影響のおそれ
P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P263: 妊娠中/授乳期中は接触を避けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトにおいて、妊娠4ヶ月までにエフェドリンを摂取した373人の妊婦のあいだで確かな特定の奇形がみられた(Birth Defects 3rd. Ed,2000 ; Teratogenic 12th Ed,2007)との報告があり、区分1Aとした。 また、エフェドリンは母乳へ移行し、授乳中の母親への使用は乳児にとってより危険性が高く推奨されない(HSDB,2007)との記述があるため、授乳に対するまたは授乳を介した影響に関する追加区分とした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分2(心臓、神経系) 警告 H371: 臓器の障害のおそれ(心臓、神経系) P309+P311: 暴露したとき、又は気分が悪いとき:医師に連絡すること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトにおいて、エフェドリンまたはMa-huang(エフェドリンの原料となる漢方薬)の過剰摂取により吐き気、嘔吐、寒気、発汗、発熱、けいれん、散大した瞳孔、興奮性、神経過敏、自殺行動などの神経系への毒性がみられる(HSDB,2007)。さらに頻拍や呼吸不全、チアノーゼなど心臓に関連した症状もみられ、これは36歳の健康な男性パイロットがMa-huangを含む市販のサプリメントを摂取し心不全をおこした例でも報告されており、この中でMa-huangの心筋梗塞のリスク増加と中枢神経系の機能障害(HSDB,2007)が記述されている。よって、区分2(心臓、神経系)とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分2(心臓、神経系) 警告 H373: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害のおそれ(心臓、神経系) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトにおいて、予備兵がボディビルディングのためにEphedra sinica、Ma-huang(いずれもエフェドリンの原料)を含む漢方薬のサプリメントを服用し高血圧になった例、39歳の男性が3週間Ma-huangの製品を摂取し脈管炎と過敏性心筋炎になった例、23歳のボディビルダーがMa-huangを含むボディビルダー用サプリメントを6週間以上服用し、死亡した例(心筋の壊死、軽度の腺維化、中程度の筋細胞肥大、血管のうっ血がみられた)、45歳の女性がEphedraを摂取し心血管虚脱で死亡した例(HSDB,2007)があり、これらは心臓に関した症状であることから、区分2(心臓)とした。また、エフェドリンの長期使用(乱用)による依存症(衝動強迫、妄想、幻覚)がみられる(HSDB,2007)ことから、区分2(神経系)とした。その他、Ephedra sinica、Ma-huang を含むサプリメントの副作用として尿障害や胃腸への影響、肝炎に関する記述もある(HSDB,2007)が、情報不足であり二次的影響とも考えられるため区分しなかった。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 分類できない - - - - データなし。
11 水生環境有害性(長期間) 分類できない - - - - データなし。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

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