GHS分類結果

名称:1-クロロブタン
CAS番号:109-69-3

結果:
物質ID: 20A2168
分類実施者: 厚生労働省・環境省
分類実施年度: 平成20年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H20.9.5版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関わる原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分2 危険 H225: 引火性の高い液体及び蒸気 P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P233: 容器を密閉しておくこと。
P240: 容器を接地すること/アースをとること。
P241: 防爆型の電気機器/換気装置/照明機器/...機器を使用すること。
P242: 火花を発生させない工具を使用すること。
P243: 静電気放電に対する予防措置を講ずること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
引火点が12℃(Ullmanns(E)(6th, 2003))と、23℃未満であり、且つ、沸点が78.5℃(Merck(14th, 2006))より、初留点が35℃超であることから区分2とした。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 爆発性に関わる原子団、あるいは自己反応性に関連する原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 発火点が70℃を超えている。 なお、発火点データについては240℃(Lide(88th, 2008))から 460℃(Ullmanns(E)(6th, 2003))と文献によるばらつきが大きい。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属又は半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - フッ素及び酸素を含まず、塩素を含む有機化合物であるが、この塩素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - -O-O-構造を含まない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データなし。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分外 - - - - ラットのLD50値 = 2670 mg/kg(SIDS(1997))より、JIS分類基準の区分外(国連分類基準の区分5)とした。
1 急性毒性(経皮) 区分外 - - - - ラットのLD50値> 20ml/kg = 17800mg/kg(SIDS(1997))に基づき区分外とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - ラットLCLo = 8000 ppm/4h(SIDS(1997))であるが、その他にデータなく分類できない。なお、飽和蒸気濃度が約10万ppmより、試験条件は蒸気と見なされる。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データなし。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分2 警告 H315: 皮膚刺激 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P332+P313: 皮膚刺激が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P362: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
ウサギを用いた皮膚刺激性試験(Open Draize TestおよびStandard Draize Test)の結果、中等度から重度の刺激性(moderately to highly irritating)との評価(SIDS(1997))に基づき区分2とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2B - 警告 H320: 眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
ウサギを用いた眼刺戟性試験(Open Draize TestおよびStandard Draize Test)の結果、軽度の刺激性(slightly irritating)との評価(SIDS(1997))に基づき区分2Bとした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - モルモットを用いた皮膚感作性試験(OECD TG 406: Buehler test)で感作性なし(IUCLID(2000))の結果が得られていることより区分外に該当するが、リスト2のデータである事から分類できないとした。
5 生殖細胞変異原性 区分外 - - - - ラットに6ヵ月間経口投与後の骨髄細胞を用いた染色体異常試験(体細胞in vivo 変異原性試験)の陽性結果(IUCLID(2000))に基づき区分外とした。なお、in vitro試験ではエームス試験およびチャイニーズハムスター培養細胞を用いた染色体異常試験でいずれも陰性(NTP DB(access on 10. 2008)、厚労省報告(access on 10. 2008))、マウスリンパ腫試験では一部陽性結果(NTP DB(access on 10. 2008))が得られている。
6 発がん性 区分外 - - - - ラットおよびマウスに2年間経口投与した試験において、高用量群では投与前後に起きた痙攣による死亡のため、ラット雌雄とマウス雌で生存率が低下したが、両動物種とも試験物質に起因する腫瘍発生頻度の増加はなく、発がん性の証拠が得られなかった(NTP TR312(1986))。また、EPAの発がん性評価ではD(ヒト発がん性に分類できない)に分類されている(IRIS(2005))。以上の結果と既存分類により区分外とした。
7 生殖毒性 区分2 警告 H361: 生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットに経口ばく露による予備生殖毒性スクリーニング試験(OECD TG)において、親動物の性機能および生殖能に影響は認められなかったが、高用量群で哺育期間中の新生児死亡数が多く生存率が低値を示した(厚労省報告(access on 10. 2008))。また、別に妊娠期間中に経口ばく露した試験では、仔を交差交配した第二世代において胎児死亡率が増加した(NTP TR312(1986))。このような仔に対する悪影響は、親動物の体重低下など一般毒性が発現する用量、あるいは著しい毒性を示す高用量でのみ生じると記述されているので区分2とした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 分類できない - - - - 駆虫薬としての効果を見るためにイヌに単回経口投与し、肝臓において0.3 mL/kg(267 mg/kg)以上で脂肪浸潤などの病変が認められたと報告されている(NTP TR312(1986))が、試験の実施年度が古く(1932年)試験目的も異なるため分類の対象とはしなかった。その他にデータは得られず分類できない。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 分類できない - - - - ラットに経口投与による生殖毒性スクリーニング試験において、雄は最高用量300 mg/kg/dayで体重増加抑制、摂餌量低下、流涎を認めたのみで重大な毒性所見の記載はない(厚労省報告(access on 10. 2008))。また、ラットに14日、13週および103週を経口投与した各試験において高用量群で痙攣に伴う死亡例の発生が見られたが、ガイダンス値範囲に相当する用量では試験物質投与の影響はなく、かつ13週間投与試験のNOAELは120 mg/kg/dayであった(NTP TR312(1986))。以上より、いずれの試験もガイダンス値範囲に相当する用量で影響がないことから区分外(経口)に該当するが、他経路でのデータがなくデータ不足で分類できないとした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分外 - - - - 魚類(ヒメダカ)の96時間LC50 = 120 mg/L、甲殻類(オオミジンコ)の24時間EC50 = 380 mg/L、藻類の72時間EbC50 > 1000 mg/L(いずれもSIDS, 2005)から、区分外とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分外 - - - - 難水溶性でなく(水溶解度=370 mg/L(SIDS, 2005))、急性毒性が区分外であることから、区分外とした。


分類結果の利用に関する注意事項:
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 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

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厚生労働省モデルSDS

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