GHS分類結果

名称:テトラクロロフタル酸無水物
CAS番号:117-08-8

結果:
物質ID: 20A2105
分類実施者: 厚生労働省・環境省
分類実施年度: 平成20年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H20.9.5版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関わる原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
6 引火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
7 可燃性固体 分類できない - - - - データなし。なお、用途としてプラスチックの難燃剤として使用の記載がある(NTP TOX-28(1993))。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 爆発性及び自己反応性に関わる原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
10 自然発火性固体 分類できない - - - - データなし。なお、用途としてプラスチックの難燃剤として使用の記載がある(NTP TOX-28(1993))。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - データなし。なお、用途としてプラスチックの難燃剤として使用の記載がある(NTP TOX-28(1993))。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属および半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - フッ素は含まず、塩素、酸素を含む有機化合物であるが、この塩素、酸素は水素、炭素以外の元素と化学結合していない。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - -O-O-構造を含まない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - 融点が55℃以上であり、固体状の物質に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分外 - - - - ラット:LD50>15800mg/kg(NTP TOX-28(1993))により区分外とした。
1 急性毒性(経皮) 区分外 - - - - ラット:LD50>5000mg/kg(NTP TOX-28(1993))により区分外とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データなし。
2 皮膚腐食性/刺激性 分類できない - - - - データなし。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2B - 警告 H320: 眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
ウサギを用いた眼刺激性試験において、10%corn oli溶液を使用した試験と粉末を使用した試験共に「Slight irritation」の結果の記述(NTP TOX-28(1993))より区分2Bとした。
4 呼吸器感作性 区分1 危険 H334: 吸入するとアレルギー、喘息又は呼吸困難を起こすおそれ P304+P341: 吸入した場合:呼吸が困難な場合には、空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P342+P311: 呼吸に関する症状が出た場合:医師に連絡すること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P285: 換気が十分でない場合には、呼吸用保護具を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
List1(NTP TOX-28(1993))に以下の記載がある。ヒトへの影響として、当該物質の暴露に起因する職業病(喘息)の報文がいくつかある。そのうちの一つは、エポキシ樹脂製造の従事者5人は、当該物質の成形段階への投入作業後、呼吸器に関する症状及び生理的異常を引き起こした。症状を再発させた5人の内3人で、当該物質の吸入影響の試験(challenge)が行われ、即時型反応と遅延型反応を共に呈した。免疫学的には特定の抗体反応を立証することはなかったが、臨床的には、刺激性反応というよりは感作性反応を示した。後に他の報告では、エポキシ樹脂との接触で当該物質に暴露し喘息を起こした7人の女性作業者で、当該物質への特異的IgE抗体の存在が報告されており、特異的IgE抗体は、皮膚プリック試験とラジオアレルゴソルベントテスト(放射性アレルゲン吸着試験)により確認された。以上の記述により区分1とした。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - データなし。
5 生殖細胞変異原性 区分外 - - - - マウスの骨髄を用いた染色体異常試験(体細胞in vivo変異原性試験)において陰性(NTP TOX-28(1993))であるとの結果により区分外とした。なお、マウスの骨髄を用いた姉妹染色分体交換(SCE)試験(体細胞in vivo遺伝毒性試験)では陽性を示したが、観察されたSCE頻度は用量依存的に増加したがその頻度は小さく、1つの用量では対照群をしのぐ頻度の上昇はなかったとの記載がある(NTP TOX-28(1993))。
6 発がん性 分類できない - - - - データなし。
7 生殖毒性 分類できない - - - - ラットを用いて器官形成期を含む妊娠期間に強制経口投与した発生毒性試験において、2000mg/kg投与群で仔の骨格奇形発生率(incidence of skeletal malformations)の微増があるものの、胚・胎児毒性、催奇性、親動物に対する毒性はなかったとの記述があり(NTP TOX-28(1993))、またラット、マウスを用いた13週間の強制経口投与試験において、両種で精巣形態及び膣細胞に変化はなかったとの記述がある(NTP TOX-28(1993))。しかし生殖毒性に関するデータがないため、データ不足により分類できない。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 分類できない - - - - データなし。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(肺) 危険 H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(肺) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットを用いた13週間の粉塵及びヒュームにおける吸入曝露試験において、0.0005-0.05mg/L/6h/日の曝露範囲で肝細胞肥大、肺胞マクロファージの多病巣性蓄積に関連した肺重量の増加と肺胞の出血が用量依存的に認められたとの記述がある。同じく4週間の試験においてもヒュームで0.04mg/L/6h/日(90日換算:約0.01mg/L/6h/日)で肺に悪影響が認められたとの記述があり(NTP TOX-28(1993))、区分1ガイダンス値の範囲であるため区分1(肺)とした。 なお、ラットを用いた13週間の強制経口投与試験において、187mg/kg/日で尿細管の膨張、それ以上の投与量で壊死など腎臓への影響が認められており、NOAELが94mg/kg/日である。同じくマウスでは1500mg/kg/日で病理組織学的な変化はないとの記述がある(NTP TOX-28(1993))。何れも区分2のガイダンス値付近及び越えているため経口に関しては区分外である。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 分類できない - - - - データなし。
11 水生環境有害性(長期間) 分類できない - - - - データなし。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

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厚生労働省モデルSDS

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