GHS分類結果

名称:ジエチレングリコール
CAS番号:111-46-6

結果:
物質ID: 20A2042
分類実施者: 厚生労働省・環境省
分類実施年度: 平成20年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H20.9.5版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分外 - - - - 引火点が124℃(ICSC(2007))と 93℃を越えている。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 分子内に爆発性および自己反応性に関わる原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 発火点が229℃(ICSC(2007))と70℃を越えている。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属または半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - フッ素および塩素を含まず、酸素を含む有機化合物であるが、この酸素は炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - -O-O-構造を含まない。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データなし。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分外 - - - - 得られたラットLD50値(15.6、16.6, 20.8 g/kg bw)(PATTY 5th(2001))が全て区分外に該当している。
1 急性毒性(経皮) 区分外 - - - - ウサギのLD50値:13300mg/kg bw(DFGOT vol.10 1998)に基づき「区分外」とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHS定義による液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - ラットに4500mg/m3(ミスト)を4時間ばく露により死亡例はなかった(DFGOT(vol.10, 1998))が、このデータのみでは分類できない。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分外 - - - - ウサギを用いた皮膚刺激性試験(Draize test)の結果は軽度の刺激性(slightly irritating)であり(IUCLID(2000))、ヒトに48時間適用、あるいはモルモットに反復適用してもなお刺激性なしの結果が得られている(DFGOT vol.10(1998)。JISの分類基準により区分外とした(国連GHSでは区分3に相当)。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分外 - - - - ウサギを用いた試験で、刺激性が認められていない(DFGOT vol.10(1998)、PATTY(5th, 2001))ことから区分外とした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 区分外 - - - - モルモットの皮膚感作性試験(Maximization test)(DFGOT vol.10(1998))、およびヒトのパッチテスト(IUCLID(2000))における感作性なし(no evidence of sensitizing effects)の結果に基づき「区分外」とした。
5 生殖細胞変異原性 分類できない - - - - ハムスターを用いたin vivo染色体異常試験において、腹腔内投与で染色体異常(ギャップ)の僅かな増加、経口投与では曖昧な結果であったと報告されている(DFGOT vol.10(1998))。その他には小核試験と優性致死試験の記述もあるが、動物種、投与方法、投与期間などの基本的な情報を欠き、試験データとして不十分で遺伝毒性の評価には使用できないとも記述されている(DFGOT vol.10(1998)、IUCLID(2000))ので、分類の根拠としても疑義があり分類できないとした。なお、in vitroの変異原性試験は概ね陰性結果が得られている(DFGOT vol.10(1998)、NTP DB(Access on June. 2008)、IUCLID(2000))。
6 発がん性 分類できない - - - - ラットに2年間の経口ばく露により、生存率の低下とともに膀胱腫瘍あるいは腎臓腫瘍の発生が報告されている(DFGOT vol.10(1998))。しかしながら、膀胱腫瘍については雄のみの試験でありデータも古い。腎臓腫瘍については同一著者がその後行ったイニシエーション/プロモーション試験の結果により、ジエチレングリコールには発がん性もプロモーション作用もないことが示された(DFGOT vol.10(1998))。その他の試験についても結論付けるのに十分なデータが見当たらず分類できないとした。
7 生殖毒性 区分2 警告 H361: 生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
マウスを用い交配前からのばく露による2世代生殖試験において、同腹児数の減少に加え、脳ヘルニア、口蓋裂の頭蓋顔面奇形が観察された(DFGOT vol.10(1998))。口蓋裂はハムスターの妊娠8日目の腹腔内投与でも報告されている(DFGOT vol.10(1998))。これらの影響が現れた用量では同時に母動物の体重減少、ハムスターでは死亡が見られ(DFGOT vol.10(1998))、即ち、親動物での一般毒性が発現する用量で明確な生殖毒性が記述されていることから区分2とした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 分類できない - - - - 急性毒性の症状は動物種間で類似しているとして症状が具体的に記述されている(DFGOT vol.10(1998)、PATTY(5th, 2001)が、ばく露量との関係について記載がなく分類できない。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(腎臓、肝臓) 危険 H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(腎臓、肝臓) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットの反復経口ばく露による特徴的な所見として、蓚酸の排泄増加とともに尿中に蓚酸カルシウム結晶が形成され、腎障害(ネフローゼ)が見られたと報告されている(DFGOT vol.10(1998))。ばく露が長期に及ぶと膀胱結石も観察され、また、腎臓に比べ軽度ながら肝障害の記述も一部にある(PATTY(5th, 2001))。しかし、これらの影響はいずれもガイダンス値範囲のカットオフ値(100 mg/kg/day)を超えたかなり高用量における所見である。一方、ヒトでは本物質のばく露に関して複数の疫学調査が実施され、それらの結果によれば、多数の死亡例、進行性の腎障害と最終的に腎不全、一部の報告では肝障害が報告されている(DFGOT vol.10(1998))。以上、ラットの反復ばく露の所見を考慮に入れ、ヒトの疫学調査の結果に基づき区分1(腎臓、肝臓)とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分外 - - - - 魚類(ファットヘッドミノー)の96時間LC50=75200 mg/L(AQUIRE, 2008)から区分外とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分外 - - - - 難水溶性でなく(水溶解度:1,000,000 mg/L(SRC, 2005))、急性毒性が区分外であることから、区分外とした。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

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厚生労働省モデルSDS

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