GHS分類結果

名称:N‐ビニル‐2‐ピロリドン
CAS番号:88-12-0

結果:
物質ID: 20A2014
分類実施者: 厚生労働省・環境省
分類実施年度: 平成20年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H20.9.5版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関わる原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義による液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義による液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義による液体である。
6 引火性液体 区分外 - - - - 引火点95℃(closed cup法)(Ullmanns(2003))に基づき区分外とした。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義による液体である。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 爆発性に関わる原子団、あるいは自己反応性に関連する原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 発火点240℃(Ullmanns(2003)、HSDB(2005)に基づきi区分外とした。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義による液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - データなし。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属または半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sb, Te, Bi, Po, At)を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - フッ素および塩素を含まず、酸素を含む有機化合物であるが、この酸素が炭素、水素以外の元素と化学結合を有していない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義による液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データなし。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4 警告 H302: 飲み込むと有害 P301+P312: 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P330: 口をすすぐこと。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットのLD50=1022mg/kg、1700mg/kg、2500mg/kg、1040mg/kg、830mg/kg〜1310mg/kg(EU-RAR(2003))が2500mg/kgを除いて区分4の範囲内ににあることに基づき区分4とした。
1 急性毒性(経皮) 区分3 危険 H311: 皮膚に接触すると有毒 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P322: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P361: 汚染された衣類を直ちに全て脱ぐこと。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットのLD50=1043〜4127mg/kg(EU-RAR(2003))およびウサギのLD50=560mg/kg(EU-RAR(2003))のうちLD50値の小さなウサギのLD50値に基づき区分3とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義による液体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - ラットに飽和蒸気(0.6mg/L)を6〜8時間ばく露した試験結果があるが(EU-RAR(2003))、LC50が得られていないことより分類できないとした。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 区分4 警告 H332: 吸入すると有害 P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
ラットの4時間ばく露のLC50=3.07mg/L(EU-RAR(2003))のデータに基づき区分4とした。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分外 - - - - ウサギを用いた3つの皮膚刺激性試験において軽度の刺激(slight irritation)(EU-RAR(2003))としていることから国連のGHS分類では区分3に相当するが、平成20年9月のGHS分類政府ガイダンスでは区分外に相当するので、区分外とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分1 危険 H318: 重篤な眼の損傷 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
ウサギを用いたドレイズ試験において8日間で軽度から重度の結膜浮腫、水腫、角膜混濁につづいて瘢痕化が見られ、症状の回復が認められず時間の経過とともに悪化することより区分1に分類した。なお、EUでR41と分類されている。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 区分外 - - - - モルモットを用いたBuehler testで皮膚感作性なし(EU-RAR(2003))の記述に基づき区分外とした。
5 生殖細胞変異原性 区分外 - - - - マウス経口投与による骨髄小核試験(体細胞in vivo変異原性試験)の結果が陰性(EU-RAR(2003),)であることに基づき区分外とした。なお細菌を用いる復帰突然変異試験、哺乳類培養細胞を用いる遺伝子突然変異試験、ヒトリンパ球細胞を用いる染色体異常試験(いずれもin vitro変異原性試験)の結果は陰性(EU-RAR(2003))である。
6 発がん性 区分2 警告 H351: 発がんのおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットの吸入ばく露(ばく露期間18ヶ月間+回復期間6ヶ月)による2年間の発がん性試験において肝細胞癌、鼻腔の腺腫、腺癌、咽頭の扁平上皮癌の発生の上昇が認められている。発がんの分類としてIARCはグループ3(IARC 71(1999))に分類しているが、より新しい年度の分類として、ACGIHがA3(ACGIH(2007))、EUが3(EU-Annex I(access on May 2008))に分類していることに基づき区分2とした。なお、DFGはカテゴリー2(MAK/BAT(2007))に分類している。
7 生殖毒性 分類できない - - - - ラットを用いて器官形成期を含む妊娠期間に吸入ばく露した発生毒性試験において、上後頭骨および舌骨の骨化遅延(発育遅延)、波状肋骨(母体毒性)などの骨格変異が母動物の体重が減少する用量で見られたことを除き、明確な発生毒性は観察されなかった(EU-RAR(2003))。しかし、発生毒性試験は動物種1種のデータしかなく、生殖毒性試験はデータがないことより、データ不足により分類できないとした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(中枢神経系) 危険 H370: 臓器の障害(中枢神経系) P307+P311: 暴露した場合:医師に連絡すること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラット、マウスを用いた経口または吸入試験において、嗜眠、呼吸低下、麻酔、昏睡、運動失調、正向反射消失、痙攣、攣縮、振戦などの中枢神経系の症状が致死用量付近で認められている(EU-RAR(2003))。動物の死亡の認められない用量においては、ラットの0.8mg/L濃度の4時間吸入ばく露においてガイダンスの区分1に該当する用量域で、呼吸増加、運動失調、昏睡が認められ(EU-RAR(2003))、ラットの経口投与試験の最低投与量である834mg/kgにおいて嗜眠、呼吸減少、猫背姿勢、流涎が認められる(EU-RAR(2003))ことから、区分1(中枢神経系)とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(気道、肝臓、血液) 危険 H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(気道、肝臓、血液) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットに7週(0.023〜0.207 mg/L/6h)、3〜24ヵ月(0.023〜0.092 mg/L/6h)、3ヵ月(0.023〜0.553 mg/L/6h)あるいは4週(0.075〜0.300 mg/L/4h)、また、マウスに7週(0.023〜0.207 mg/L)の各反復吸入ばく露試験において、0.023 mg/L以上で嗅上皮の萎縮、喉頭、気道および嗅上皮の過形成、気管支周囲のリンパ球性過形成、鼻腔粘膜の炎症などが観察された。肝臓の所見として0.023〜0.207 mg/L以上で重量増加、退色、小葉明瞭と併せ、脂肪浸潤、小葉中心性類壊死、スポンジ状肝炎などが含まれ、ラットの4週間経口ばく露試験の30 mg/kg/day以上で細胞浸潤が記録されている。さらに、0.069 mg/L以上で貧血の徴候を示す血液指標の変化、赤血球形態異常、血小板数の増加が示されている。以上のことから、気道、肝臓および血液への有害影響がガイダンス値区分1の用量範囲で認められたことになり「区分1(気道、肝臓、血液)」とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分3 - - H402: 水生生物に有害 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
甲殻類(Daphnia sp.)の48時間EC50=45mg/L(EU RAR, 2003)から区分3とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分外 - - - - 急性毒性区分3であるが、急速分解性があり(DOCによる分解度:100%、(EU RAR, 2003))、生物濃縮性も低いと推定(logKow=0.37、PHYSPROP)されることから区分外とした。


分類結果の利用に関する注意事項:
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 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

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