GHS分類結果

名称:硫酸ヒドラジン
CAS番号:10034-93-2

結果:
物質ID: 2-098
分類実施者: 経済産業省、環境省
分類実施年度: 平成20年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H20.9.5版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 区分外 - - - - ヒドラジンの塩であるが、国連危険物輸送勧告がクラス8、容器等級IIIに区分されており、区分外とした。 なお、このTDG分類は、Merck KGaA data from March 2009による、国連番号2923を根拠とした。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - 固体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - 固体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - 固体である。
6 引火性液体 分類対象外 - - - - 固体である。
7 可燃性固体 区分外 - - - - 国連危険物輸送勧告がクラス8、容器等級IIIに区分され、クラス4.1(II)、4.1(III)でないため区分外とした。 なお、このTDG分類は、Merck KGaA data from March 2009による、国連番号2923を根拠とした。
8 自己反応性化学品 区分外 - - - - 国連危険物輸送勧告がクラス8、容器等級IIIに区分され、クラス4.1でないため区分外とした。なお、このTDG分類は、Merck KGaA data from March 2009による、国連番号2923を根拠とした。
9 自然発火性液体 分類対象外 - - - - 固体である。
10 自然発火性固体 区分外 - - - - 国連危険物輸送勧告がクラス8、容器等級IIIに区分され、クラス4.2でないため区分外とした。なお、このTDG分類は、Merck KGaA data from March 2009による、国連番号2923を根拠とした。
11 自己発熱性化学品 区分外 - - - - 国連危険物輸送勧告がクラス8、容器等級IIIに区分され、クラス4.2(II)、4.2(III)でないため区分外とした。なお、このTDG分類は、Merck KGaA data from March 2009による、国連番号2923を根拠とした。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属または半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含まない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - 固体である。
14 酸化性固体 区分外 - - - - 国連危険物輸送勧告がクラス8、容器等級IIIに区分されており、クラス5.1(I)、5.1(II)、5.1(III)でないため区分外とした。なお、このTDG分類は、Merck KGaA data from March 2009による、国連番号2923を根拠とした。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 無機化合物。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - 固体状の物質に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4 警告 H302: 飲み込むと有害 P301+P312: 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P330: 口をすすぐこと。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットを用いた経口投与試験のLD50値670 mg/kg(BUA 205(1996))、601 mg/kg(HSDB(2005))との記述があるので、区分4とした。
1 急性毒性(経皮) 分類できない - - - - [ID56] ヒドラジン(CAS 302-01-2)について、ウサギを用いた経皮投与試験のLD50値が91 mg/kg(BUA 205(1996))との記述があるが、本物質そのもののデータではないので分類できない。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHS定義上の固体であるため、ガスでの吸入は想定されず、分類対象外とした。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - [ID56] ヒドラジン(CAS 302-01-2)について、ラットを用いた4時間吸入暴露試験のLC50値が0.35-0.76 mg/L(BUA 205(1996))との記述があるが、本物質そのもののデータではないので分類できない。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データがないので分類できない。
2 皮膚腐食性/刺激性 分類できない - - - - ヒトデータとして「志願者の皮膚を暴露した試験で、25%ヒドラジン硫酸塩又はその濃縮液を24 時間適用しても皮膚に対する刺激性をみとめなかった」(CERI・NITE有害性評価書(2004))との記述があるが、希釈液による24時間での試験データである。またウサギの外耳に本物質の浸漬綿球を24時間固定した試験では「肉眼的に観察できる症状はなし」(CERI・NITE有害性評価書(2004))との記述もあるが、いずれも1950年代の試験でありデータ不足なので、分類できない。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 分類できない - - - - ウサギを用い、角膜上皮を除いて0.02 mol濃度(0.26%相当)の希釈液を滴下した眼刺激性試験において、「損傷がなかった」とHSDB(2005)に記述があるが、化学品を透過しやすくするために角膜を除去して滴下するという過激な条件でかつ、希釈液での試験なので分類できない。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データがないので分類できない。
4 皮膚感作性 区分1 警告 H317: アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P333+P313: 皮膚刺激又は発疹が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P272: 汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
「硫酸ヒドラジンを使用する工場従業員に、アレルギー性接触皮膚炎が生じた」(EHC 68(1987))と記述されており、また、「ヒト感作性があり接触皮膚炎を生じる可能性がある」(BUA 205(1996))との記述があるため、区分1とした。
5 生殖細胞変異原性 区分2 警告 H341: 遺伝性疾患のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
in vivo遺伝毒性試験(マウスを用いた姉妹染色体分体交換試験)は陰性(BUA 205(1996))であるが、ネズミチフス菌を用いたin vitro 変異原性試験は陽性(EHC 68(1987))であり、ハムスターを用いた体細胞in vivo遺伝毒性試験においてDNAのメチル化(IARC 71(1999))の記述がある。硫酸塩としてはin vivo変異原性試験のデータがないが、塩酸塩(CAS番号 2664-70-4)としては体細胞in vivo変異原性試験(マウススポット試験)で陽性(CERI・NITE有害性評価書(2004))である。本物質の水溶解度は塩酸ヒドラジンの1/10であるが、塩酸ヒドラジンと同程度の影響を細胞に及ぼすとみなして区分2とした。
6 発がん性 区分2 警告 H351: 発がんのおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
IARCがヒドラジン類についてグループ2B(IARC 71(1999)、EHC 68(1987))、NTPがヒドラジン及び硫酸ヒドラジンについてR(NTP RoC(11th, 2005))と評価しており、IARCの分類を優先して区分2とした。 なお、本物質を動物に投与した試験について、ハムスターを用いた2年間飲水投与試験で肝細胞癌(IARC 71(1999))が報告されており、ラットおよびマウスを用いた反復強制経口投与試験で肺腺腫、マウスを用いた36週間強制経口投与試験において肝癌(EHC 68(1987))が記述されている。
7 生殖毒性 分類できない - - - - データがないので分類できない。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(神経系、肝臓)、区分3(気道刺激性) 危険
警告
H370: 臓器の障害(神経系、肝臓)
H335: 呼吸器への刺激のおそれ(気道刺激性)
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P307+P311: 暴露した場合:医師に連絡すること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒドラジンについてウサギを用いて致死量をもとめた経皮投与試験データがあり、考察として「ヒドラジンとヒドラジン硫酸塩は肝毒性及び腎毒性が主たる影響である」(BUA 205(1996))との記述がある。これらの影響は区分1のガイダンス値の範囲内でみられたが、生存例での所見か否かは不明である。ヒトデータについては、[ID56] ヒドラジン(CAS 302-01-2)に関する事故事例として、CERI・NITE有害性評価書(2004)に1例は「爆発事故でやけどを負った労働者が、14時間後に昏睡、脳は活性低下等の神経症状を発症し、事故3日後に腎障害のない血尿、肝機能障害を示した」、もう1例は「蒸気に4-5時間暴露した労働者で、吐き気、嘔吐、露出皮膚・結膜及び上部気道の局所刺激、肝臓毒性に関連した酵素値の大幅な上昇が見られた」旨の記述がある。このデータを本物質に適用することは問題ないので、区分1(神経系、肝臓)、区分3(気道刺激性)とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(肝臓、副腎)、区分2(腎臓、血液系、中枢神経系) 危険
警告
H373: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害のおそれ(腎臓、血液系、中枢神経系)
H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(肝臓、副腎)
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
がん患者に硫酸ヒドラジンを処方したいくつかの症例で「一部に中枢神経系の疾患が見られ、投与期間の長い場合には重症例として多発性神経炎症候群が見られた」(ATSDR(1997))旨の記述がある。しかし、「健常人ではないので、発現した症状は基礎的疾患による可能性がある」とまとめられているので、採用しない。一方、List2の情報源であるHSDB(2005)に、ヒトについて、「3〜4ヶ月間経口服用した男性が、肝性脳症、腎不全、重度凝血異常を示した」との記述、「7週間服用したヒトで重度脳障害が報告されている」との記述がある。動物については、マウスを用いた25週間経口発がん性試験で「非腫瘍性病変としては副腎の褐色変性が見られた」 およびハムスターを用いた15週間および20週間強制経口投与試験で「肝臓病変、細網内皮細胞増生、肝硬変、胆管増生が見られた」(EHC 68(1987))との記述がある。マウス、ハムスターともに区分1のガイダンス値の範囲内で影響が見られたので、区分1(肝臓、副腎)、区分2(腎臓、血液系、中枢神経系)とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データがないので分類できない。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 分類できない - - - - データなし。
11 水生環境有害性(長期間) 分類できない - - - - データなし。


分類結果の利用に関する注意事項:
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 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

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厚生労働省モデルSDS

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