GHS分類結果

名称:3,3'-ジクロロベンジジン二塩酸塩
CAS番号:612-83-9

結果:
物質ID: 2-038
分類実施者: 経済産業省、環境省
分類実施年度: 平成20年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H20.9.5版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関わる原子団を含まない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - 固体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - 固体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - 固体である。
6 引火性液体 分類対象外 - - - - 固体である。
7 可燃性固体 分類できない - - - - データがなく分類できない。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 爆発性、あるいは自己反応性に関わる原子団を含まない。
9 自然発火性液体 分類対象外 - - - - 固体である。
10 自然発火性固体 分類できない - - - - データがなく分類できない。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - データがなく分類できない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属または半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含まない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - 固体である。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - フッ素および酸素を含まず、塩素を含む有機化合物であるが、この塩素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - 固体状の物質に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分外 - - - - ラットを用いた経口投与試験のLD50値3,820 mg/kg(CaPSAR(1993)、IUCLID(2000))から、国連GHS急性毒性区分5に相当するが、国内では不採用区分につき、区分外とした。
1 急性毒性(経皮) 分類できない - - - - データがないので分類できない。EU分類はXn; R21である(EU-Annex I)。 なお、遊離塩基(CAS 91-94-1)について、ウサギを用いた経皮投与試験のLD80値 1,000 mg/kg(CICAD 2(1998))のデータがある。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHS定義上の固体であるため、ガスでの吸入は想定されず、分類対象外とした。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - データがないので分類できない。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データがないので分類できない。
2 皮膚腐食性/刺激性 分類できない - - - - データがないので分類できない。 なお、遊離塩基(CAS 91-94-1)について、ウサギを用いた皮膚刺激性試験のデータ(IUCLID(2000))で、「刺激性なし」との記述がある。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分1 危険 H318: 重篤な眼の損傷 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
ウサギを用いた眼刺激性試験で、「遊離塩基に比べると重度(severe)の眼刺激性で、紅斑、角膜混濁を生じ、AOIは84、7日後でも70である」(ACGIH(7th, 2001)、IUCLID(2000))旨の記述から、区分1とした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データがないので分類できない。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - データがないので分類できない。EU分類は、R43である(EU-Annex I)。なお、遊離塩基(CAS 91-94-1)について、「作業従事者で接触皮膚炎を生じた」(CICAD 2(1998))という記述がある。
5 生殖細胞変異原性 区分2 警告 H341: 遺伝性疾患のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
in vitro変異原性試験(細菌を用いる復帰突然変異試験)で、TA1535は「陰性」、TA100とTA1537は「S9代謝活性化ありのみ陽性」、TA98は「陽性」(ACGIH(7th, 2001)、NTP DB(Access on September 2008))との記述があるが、in vivo試験のデータはない。ただし、本物質より溶解度の低い遊離塩基(CAS 91-94-1)について、体細胞in vivo変異原性試験(マウス骨髄細胞を用いる小核試験、マウス骨髄細胞を用いる染色体異常試験)で「陽性」(CICAD 2(1998))という記述があるので、このデータを本物質に適用し区分2とした。
6 発がん性 区分2 警告 H351: 発がんのおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
IARCはグループ2B(suppl.7(1987))、NTPの分類はR(NTP RoC(11th, 2005))、EU分類が2(EU-Annex I)であり評価が分かれるが、NTP RoC(11th, 2005)の評価年度は1981年で、EUの評価年度は不明である。動物データがヒトに適用可能かどうかの議論が不十分でもあり、IARC(1987)の分類を優先し、区分2とした。
7 生殖毒性 分類できない - - - - データがないので分類できない。 なお、遊離塩基(CAS 91-94-1)について、「マウスへの皮下投与試験で、投与された妊娠マウスから生まれた児にリンパ性白血病発症の増加がみられたが、統計的な有意差は示されていない」(CICAD 2(1998))旨の記述がある。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分3(気道刺激性) 警告 H335: 呼吸器への刺激のおそれ(気道刺激性) P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ACGIH(7th, 2001)に「上部呼吸器刺激性あり」と記述されているので、区分3(気道刺激性)とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 分類できない - - - - ヒトについて、「本物質作業従事者に上部呼吸器感染症と咽頭炎が見られたが因果関係は明白ではない」(ACGIH(7th, 2001)、ATSDR(1998))旨の記述があるが、データが不十分なので分類できない。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データがないので分類できない。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分1 警告 H400: 水生生物に非常に強い毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
魚類(メダカ)の96時間LC50 = 0.66 mg/L(環境省生態影響試験, 2002)から区分1とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分1 警告 H410: 長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
急性毒性区分1であり、急速分解性がない(BIOWIN)ことから、区分1とした。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

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厚生労働省モデルSDS

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