GHS分類結果

名称:ペルオキソ二硫酸ジアンモニウム
CAS番号:7727-54-0

結果:
物質ID: 1-395-2)
分類実施者: 経済産業省、環境省
分類実施年度: 平成20年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H20.9.5版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 区分外 - - - - 爆発性に関わる「隣接した酸素原子」を含むが国連危険物輸送勧告がクラス・分類5.1III(国連番号1444(ICSC, 2001))で区分外とした。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - 固体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - 固体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - 固体である。
6 引火性液体 分類対象外 - - - - 固体である。
7 可燃性固体 区分外 - - - - 国連危険物輸送勧告がクラス・分類5.1III(国連番号1444(ICSC, 2001))で区分外とした。
8 自己反応性化学品 区分外 - - - - 爆発性に関わる「隣接した酸素原子」を含むが国連危険物輸送勧告がクラス・分類5.1III(国連番号1444(ICSC, 2001))で区分外とした。
9 自然発火性液体 分類対象外 - - - - 固体である。
10 自然発火性固体 区分外 - - - - 不燃性の無機化合物。
11 自己発熱性化学品 区分外 - - - - 不燃性の無機化合物。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属または半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含まない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - 固体である。
14 酸化性固体 区分3 警告 H272: 火災助長のおそれ:酸化性物質 P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P220: 衣類/.../可燃物から遠ざけること。
P221: 可燃物と混合を回避するために予防策をとること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
国連危険物輸送勧告がクラス・分類5.1、容器等級 III(国連番号1444(ICSC, 2001))で区分3。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 無機化合物。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - 固体状の物質に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4 警告 H302: 飲み込むと有害 P301+P312: 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P330: 口をすすぐこと。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットを用いた経口投与試験(OECD TG 401、GLP)のLD50値495 mg/kg(雌)(SIDS(2005)、NICNAS(2001)、IUCLID(2000))から区分4とした。 なお、EU分類はXn; R22(EU-Annex I)であり、区分3-4に相当する。
1 急性毒性(経皮) 区分外 - - - - ラットを用いた経皮投与試験(OECD TG 402、GLP)のLD50値>2,000 mg/kg(SIDS(2005)、NICNAS(2001)、IUCLID(2000))から区分外とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHS定義上の固体であるため、ガスでの吸入は想定されず、分類対象外とした。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - データがないので分類できない。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - ラットを用いた4時間吸入暴露試験(OECD TG 403、GLP)のLC50値は>2.95 mg/L(SIDS(2005)、NICNAS(2001)、IUCLID(2000))である。固体より、粉塵基準を適用すると、区分を特定できないので分類できない。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分2 警告 H315: 皮膚刺激 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P332+P313: 皮膚刺激が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P362: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
動物については、非希釈液をウサギに塗布した4時間皮膚刺激性/腐食性試験(OECD TG 404、GLP)で、「紅斑/浮腫の平均スコア値は0」(SIDS(2005))、「24時間以内に消失する浮腫がみられた」(NICNAS(2001))旨の記述がある。ヒトについては、本物質の5%水溶液を適用したパッチテスト、本物質の17.5%水溶液を4時間適用した試験でいずれも「刺激性あり」(SIDS(2005))の旨の記述がある。SIDS(2005)は結論として、ウサギについては「slightly irritating」としているが、ヒトについては本物質の5%以上の水溶液で「can cause skin irritation」と記述している。以上より区分2とした。 なお、EU分類はXi; R36/37/38(EU-Annex I)であり、区分2-3に相当する。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2B - 警告 H320: 眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
動物については、ウサギを用いたDraize試験(OECD TG 405、GLP)で、「適用後48時間の間は結膜炎の症状がslight to mildで認められた」(SIDS(2005))旨の記述がある。また、同じ試験について、「結膜炎および虹彩炎がslight to mild で認められた試験結果より、文献の著者は『本物質は眼刺激性である』と結論している」(NICNAS(2001))旨の記述もある。以上より区分2Bとした。 なお、EU分類はXi; R36/37/38(EU-Annex I)であり、区分2に相当する。
4 呼吸器感作性 区分1 危険 H334: 吸入するとアレルギー、喘息又は呼吸困難を起こすおそれ P304+P341: 吸入した場合:呼吸が困難な場合には、空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P342+P311: 呼吸に関する症状が出た場合:医師に連絡すること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P285: 換気が十分でない場合には、呼吸用保護具を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトについては、in vivo 免疫学的試験(皮膚プリック試験)で「製造工場従業員の52人中3人が本物質のみに陽性、2人が類縁物質のペルオキソニ硫酸ジカリウム(CAS No. 7727-21-1、以降ジカリウム塩と記述する)のみに陽性、3人が本物質とジカリウム塩両方に陽性であった。陽性結果と肺機能のわずかな低下には相関傾向がみられた」(SIDS(2005))旨の記述がある。また、SIDS(2005)では、美容師に職業性喘息の報告もあり、「ヒトでの試験報告は、本物質が職業暴露で呼吸器感作性物質であることを示す」と結論している。以上より、区分1とした。 なお、EU分類はXi; R42/43(EU-Annex I)であり、区分1に相当する。また、ドイツMAKリストの表示はSah(ACGIH-TLV/BEI(2005))である。
4 皮膚感作性 区分1 警告 H317: アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P333+P313: 皮膚刺激又は発疹が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P272: 汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
動物については、モルモット20匹を用いたmaximization試験(OECD TG 406)で、「経皮では陰性ではあるが、皮下では20匹とも陽性なので疑わしい」(SIDS(2005))旨の記述がある。ヒトについては、パッチテストで「美容師の49人中12人が陽性であった」(SIDS(2005))旨の記述があり、さらに、美容師に職業暴露として、「湿疹、皮膚病、吹き出物がみられた」(SIDS(2005))、「アレルギー性皮膚炎がみられた」(NICNAS(2001))旨の記述があり、SIDS(2005)は「ヒトでの試験報告は、本物質が職業暴露で皮膚感作性物質であることを示す」と結論している。以上より、区分1とした。 なお、EU分類はXi; R42/43(EU-Annex I)であり、区分1に相当する。また、ドイツMAKリストの表示はSah(ACGIH-TLV/BEI(2005))である。
5 生殖細胞変異原性 分類できない - - - - in vitroの変異原性試験(チャイニーズハムスター線維芽細胞を用いた染色体異常試験、ネズミチフス菌と大腸菌を用いたAmes試験)でそれぞれ「陰性」(SIDS(2005)、NICNAS(2001))との記述があるが、in vivo試験のデータがないので分類できない。 なお、類縁物質であるペルオキソニ硫酸ジナトリウム(CAS No. 7775-27-1)では、in vivoの変異原性試験(マウス赤血球を用いた小核試験)、in vivoの遺伝毒性試験(ラット肝細胞を用いたUDS試験)でそれぞれ「陰性」(SIDS(2005)、NICNAS(2001))との記述がある。
6 発がん性 分類できない - - - - 主要な国際的評価機関による評価がなされておらず、データが不足しているので分類できない。 なお、雌マウスを用いた51週間経皮投与試験について「本物質には皮膚がんプロモーター活性はない」(SIDS(2005))旨の記述と、「本物質に起因する皮膚がん形成のデータはあるが、試験群の規模が小さく、投与方法がガイドラインに沿ったものではないため、最終的な結論を下すことはできない」(NICNAS(2001))旨の記述がある。
7 生殖毒性 分類できない - - - - ラットを用いた生殖/発生毒性スクリーニング試験(OECD TG 421、GLP)において、「最高用量である 250 mg/kg まで受精能、受精率、胎児異常、胎児生存率、精子形成、精子形成周期に影響はみられなかった」(SIDS(2005))旨の記述がある。しかし、この試験では児動物の催奇形性のデータが不十分である。他の試験データもないため、分類できない。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分2(中枢神経系)、区分3(気道刺激性) 警告 H371: 臓器の障害のおそれ(中枢神経系)
H335: 呼吸器への刺激のおそれ(気道刺激性)
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P309+P311: 暴露したとき、又は気分が悪いとき:医師に連絡すること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットを用いた単回経口投与試験(OECD TG 401、GLP)で、「振戦、流涎、流涙、蒼白、自発運動の低下、運動失調が認められた。これらの症状は、生存動物においては5日以内に回復した」(SIDS(2005))旨の記述がある。この影響は区分2のガイダンス値の範囲内で見られた。また、ラットを用いた4時間吸入暴露試験(GLP)で、「呼吸困難がみられた」(SIDS(2005))旨の記述がある。結論として、「本物質は職業暴露で気道刺激性であることを示す」(SIDS(2005))旨の記述もある。以上より、区分2(中枢神経系)、区分3(気道刺激性)とした。 なお、ICSC(2001)には、「短期暴露の影響 : ・・・気道を刺激する。粉塵を吸入すると、喘息様反応を引き起こすことがある」旨の記述がある。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分2(呼吸器系) 警告 H373: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害のおそれ(呼吸器系) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
動物については、ラットを用いた13週間吸入暴露試験(OECD TG 413、GLP)において、区分1のガイダンス値の範囲内で、「雌でラ音の増加、呼吸数の増加」(SIDS(2005))が、区分2のガイダンス値の範囲内で、「雌でヘモグロビン値およびヘマトクリット値の増加、気管の炎症、雄雌でラ音の増加、呼吸数の増加、体重減少、体重増加抑制、摂餌量の減少、肺の絶対および相対重量の増加、脳の相対重量の増加、気管支の炎症、気管支内の過度の粘液分泌、重大な症状として肺胞組織球症」(SIDS(2005))がみられた旨の記述がある。以上より、区分2(呼吸器系)とした。 なお、ICSC(2001)には、「長期または反復暴露の影響 : 反復または長期の吸入により、喘息を引き起こす」旨の記述がある。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データがないので分類できない。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分3 - - H402: 水生生物に有害 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
藻類(セネデスムス)の96時間EC50 = 33 mg/L(AQUIRE, 2008)より、区分3とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分外 - - - - 水溶液が強酸となることが毒性の要因と考えられるが、環境水中では緩衝作用により毒性影響が緩和されるため、区分外とした。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

厚生労働省モデルラベル

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厚生労働省モデルSDS

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