GHS分類結果

名称:フラン
CAS番号:110-00-9

結果:
物質ID: 1-377
分類実施者: 経済産業省、環境省
分類実施年度: 平成20年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H20.9.5版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関わる原子団を含まない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - 液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - 液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - 液体である。
6 引火性液体 区分1 危険 H224: 極めて引火性の高い液体及び蒸気 P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P233: 容器を密閉しておくこと。
P240: 容器を接地すること/アースをとること。
P241: 防爆型の電気機器/換気装置/照明機器/...機器を使用すること。
P242: 火花を発生させない工具を使用すること。
P243: 静電気放電に対する予防措置を講ずること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
Merck(14th,2006)による引火点は-35℃(密閉式)、沸点は31.36℃であるので、区分1に該当する。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - 液体である。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 爆発性、あるいは自己反応性に関わる原子団を含まない。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 常温の空気と接触しても自然発火しない(発火点390℃(Merck KGaA data from March 2009))。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - 液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属または半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含まない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - フッ素および塩素を含まず、酸素を含む有機化合物であるが、この酸素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - 液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データがなく分類できない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 分類できない - - - - データがないので分類できない。 なお、EU分類はXn; R22(EU-Annex I)である。
1 急性毒性(経皮) 分類できない - - - - データがないので分類できない。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHS定義上の液体であるため、ガスでの吸入は想定されず、分類対象外とした。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分3 危険 H331: 吸入すると有毒 P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P311: 医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
本物質の飽和蒸気圧濃度(20℃)は650,000 ppmであり、ラットを用いた1時間吸入暴露試験におけるLC50値は3,464 ppm(HSDB(2003))との記述から、気体基準を適用する。4時間換算LC50値1,732 ppmから、区分3とした。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データがないので分類できない。
2 皮膚腐食性/刺激性 分類できない - - - - HSDB(2003)に、モルモットを用いた試験で「皮膚刺激性」との記述があるが、この引用文献(Gig. Sanit. 6(1974))を調査したところ、「フランは揮発性が強い(沸点32℃)ため、刺激性は検討しなかった」と記述されていたので、このデータは採用しない。この他、RTECS(2008)にはウサギを用いた経皮投与試験で「primary irritation」との記述があるが、List3の情報源であり、詳細も不明である。よって、データ不足のため分類できない。 なお、EU分類はXi; R38(EU-Annex I)である。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 分類できない - - - - 「眼への接触により、刺激とやけどを生じ得る」(HSFS(2008))との記述があるが、これはList3の情報源であり、詳細も不明である。よって、データ不足のため分類できない。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - ラットを用いた吸入暴露試験において、アレルギー反応を含む免疫系への影響を示す(RTECS(2008))との記述があるが、データ不足のため分類できない。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - モルモットを用いた皮膚塗布試験において、アレルギー反応がみられた(HSDB(2003))との記述があるが、データ不足のため分類できない。
5 生殖細胞変異原性 区分2 警告 H341: 遺伝性疾患のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
体細胞in vivo 変異原性試験(マウス骨髄細胞を用いた染色体異常試験)が陽性(IARC 63(1995)、NTP DB(Access on November 2008))との記述があるが、生殖細胞を用いたin vivo 遺伝毒性試験の結果はないので、区分2とした。 なお、EU分類はMuta. Cat. 3; R68(EU-Annex I)である。
6 発がん性 区分2 警告 H351: 発がんのおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
IARCにおいてグループ2B(IARC 63(1995))と評価されているので、区分2とした。 なお、マウスにおいて肝細胞腺腫、腺癌、ラットにおいては雌雄で肝細胞腺腫、胆管細胞癌、単核細胞白血病、雄で肝細胞癌(IARC 63(1995)、NTP TR402(1993)、NTP Roc(11th, 2005))が記述されている。 なお、EU分類はCarc. Cat. 2; R45(EU-Annex I)である。
7 生殖毒性 分類できない - - - - データがないので分類できない。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分2(中枢神経系、消化器系、肝臓)、区分3(気道刺激性) 警告 H371: 臓器の障害のおそれ(中枢神経系、消化器系、肝臓)
H335: 呼吸器への刺激のおそれ(気道刺激性)
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P309+P311: 暴露したとき、又は気分が悪いとき:医師に連絡すること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトについては、HSDB(2003)に、吸入暴露による症状として「中枢神経系の抑制、消化器の鬱血、肝臓損傷、低血圧、疲労、頭痛」との記述がある。また、ICSC(1995)に「気道刺激性がある」と記述されている。よって、区分2(中枢神経系、消化器系、肝臓)、区分3(気道刺激性)とした。 なお、HSDB(2003)の一次文献(NTP Executive Summary: Furan(Draft)(1986))を入手できず、詳細は確認できなかった。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(肝臓、腎臓、呼吸器系)、区分2(精巣、卵巣) 警告
危険
H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(肝臓、腎臓、呼吸器系)
H373: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害のおそれ(精巣、卵巣)
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
マウスとラットを用いた2年間経口投与試験(最高投与量:8 mg/kg)で「肝臓障害(過形成、慢性炎症、胆管線維化、空胞変性や変性、壊死等)及び腎臓障害(尿細管の拡張、上皮壊死)」(NTP TR402(1993))の記述がある。また、ラットを用いた13週間経口投与試験において、60 mg/kg投与群で「精巣と卵巣の萎縮が見られた」(NTP TR402(1993))との記述がある。さらに、RTECS(2008)にはラットを用いた60日間吸入暴露試験において「気管、気管支の構造異常または機能異常」、ラットを用いた26週間吸入暴露試験において「中枢神経系に異常」の記述があり、これらの一次文献(Toksikologiya Novykh Promyshlennykh Khimicheskikh Veshchestv. 9(1967)、Toksikologiya Novykh Promyshlennykh Khimicheskikh Veshchestv. 10(1968))を確認したところ、前者の気管または気管支の異常は、区分1のガイダンス値範囲内の用量で、局所的な肺気腫を伴い認められた症状であったが、後者の中枢神経系の異常は、致死用量における症状と考えられたため、採用しない。以上から、区分1(肝臓、腎臓、呼吸器系)、区分2(精巣、卵巣)とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データがないので分類できない。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分3 - - H402: 水生生物に有害 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
魚類(ファットヘッドミノー)の96時間LC50 = 61mg/L(AQUIRE, 2008)から区分3とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分外 - - - - 急性毒性区分3であり、急速分解性がない(難分解性、BODによる分解度:4%(既存点検, 1983))が、魚類(ファットヘッドミノー)の31-33日間NOEC = 8.27 mg/L(AQUIRE, 2008)であり、長期毒性が > 1mg/Lであることから区分外とした。


分類結果の利用に関する注意事項:
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 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

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