GHS分類結果

名称:1-ノナノール
CAS番号:143-08-8

結果:
物質ID: 1-319
分類実施者: 経済産業省、環境省
分類実施年度: 平成20年度
使用マニュアル: 政府向けGHS分類ガイダンス(H20.9.5版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関わる原子団を含まない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - 液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - 液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - 液体である。
6 引火性液体 区分4 - 警告 H227: 可燃性液体 P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
NFPA(13th,2002)による引火点は74℃であり、区分4に該当する。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - 液体である。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 爆発性、あるいは自己反応性に関わる原子団を含まない。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 常温の空気と接触しても自然発火しない(発火点260℃(Lide,88th,2007))。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - 液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属または半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含まない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - フッ素および塩素を含まず、酸素を含む有機化合物であるが、この酸素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - 液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データがなく分類できない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分外 - - - - ラットを用いた経口投与試験のLD50値3,560 mg/kg、12,000 mg/kg(環境省リスク評価 第6巻(2008)、HSDB(2006))から、低い値3,560 mg/kgは国連GHS急性毒性区分5に該当するが、国内では不採用区分につき、区分外とした。
1 急性毒性(経皮) 区分外 - - - - ウサギを用いた経皮投与試験のLD50値2,960 mg/kg(PATTY(5th, 2001))は国連GHS急性毒性区分5に該当するが、国内では不採用区分につき、区分外とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHS定義上の液体であるため、ガスでの吸入は想定されず、分類対象外とした。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - データがないので分類できない。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 区分4 警告 H332: 吸入すると有害 P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
25℃における飽和蒸気圧濃度は0.18 mg/Lである。マウスを用いた2時間吸入暴露試験のLC50値5,500 mg/m3(環境省リスク評価第6巻(2008)、PATTY(5th, 2001))よりミスト基準を適用する。4時間換算LC50値は2.75 mg/Lであり、ミスト基準を適用し、区分4とした。
2 皮膚腐食性/刺激性 分類できない - - - - ウサギを用いた24時間皮膚刺激性試験の結果で、「非希釈液で刺激性スコア5.8/8.0であり、10-14日で回復」(HSDB(2006))との記述があるが、データ不足のため分類できない。 なお、ヒトについて、「ボランティア実験で、本物質2%を含むワセリンは皮膚の刺激や感作を示さなかった」(環境省リスク評価第6巻(2008)、PATTY(5th, 2001))との記述があるが、非希釈の本物質を使用したデータではないため採用できない。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2A 警告 H319: 強い眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
「1-ノナノールの眼刺激性スコアをEU基準で評価すると眼刺激物質であると考えられる」(PATTY(5th,2001))との記述、及び、ウサギを用いた24時間眼刺激性試験で「非希釈液の平均刺激スコアが33.3/110であり、症状はslightな紅斑、大量の眼漏(copious discharge)、角膜のにごりである」(HSDB(2006))との記述から、区分2Aとした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データがないので分類できない。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - 「ボランティア実験で、本物質2%を含むワセリンは皮膚の刺激や感作を示さなかった」(環境省リスク評価 第6巻(2008))、「ヒトに対してノナノール(2%ペトロラタム溶液)は皮膚感作性物質ではない」(PATTY(5th, 2001))旨の記述があるが、一般化するには不充分であり、加えて動物データもないので分類できない。
5 生殖細胞変異原性 分類できない - - - - データがないので分類できない。
6 発がん性 分類できない - - - - 主要な国際的評価機関による評価がなされておらず、データもないので分類できない。
7 生殖毒性 分類できない - - - - 妊娠期間1日から19日の雌ラットを用いた7時間吸入暴露試験で、「母ラットの体重、胚吸収、胎仔の体重、性比、骨格、内臓等への投与に関連した影響はみられなかった」(環境省リスク評価 第6巻(2008)、PATTY(5th, 2001))旨、記述されている。また、妊娠期間1日から15日の雌ラットを用いた経口投与試験で、「胚・胎児毒性、骨化遅延を含む胎児の発育遅延が報告されている」(PATTY(5th, 2001))旨の記述があり、一次文献(Sov. J. Dev. Biol. 22(1990))を調査したところ、「胎児について、催奇形性はみとめられないが内臓や骨格の発育異常をもたらす」旨、記述されているが、症状については、メタノールからデカノールまでのいくつかのアルコールに対する結果で、ノナノールでいかなる症状が現れたのかは不明である。以上より、分類できない。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分3(気道刺激性) 警告 H335: 呼吸器への刺激のおそれ(気道刺激性) P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
動物に対する急性試験の結果で、「皮膚や眼、気道に対する刺激性がある」(PATTY(5th, 2001))との記述から、区分3(気道刺激性)とした。 なお、ラットを用いた経口投与試験の結果、「体重減少、衰弱の進行(increasing weakness)、眼漏、虚脱の兆候があり、剖検の結果、肺の出血、肝臓の変色、胃腸炎が観察された」(HSDB(2006))旨の記述があるが、発現した投与量が不明である。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分2(眼) 警告 H373: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害のおそれ(眼) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ウサギを用いた6ヶ月間吸入暴露試験で、区分2のガイダンス値の範囲内で「網膜の光受容細胞及びミュラー線維で微細構造に変化がみられた」(環境省リスク評価第6巻(2008)、HSDB(2006))旨、記述されていることから、区分2(眼)とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - 「10匹中10匹のラットがaspirationにより死亡し、死亡は即時であり、呼吸停止が原因である」(PATTY(5th, 2001))旨の記述がある。また、20℃における動粘性率を計算すると14.13mm2/s(HSDB(2006))であり、40℃では20.5mm2/s以下になることが予想されるが、炭化水素ではないため該当しない。国連GHS区分2に該当するが国内では不採用区分であり、分類できない。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分2 - - H401: 水生生物に毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
藻類(Pseudokirchneriella subcapitata)の72時間EC50 = 2.2mg/L(環境庁生態影響試験, 1999)から区分2とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分2 - H411: 長期継続的影響によって水生生物に毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
急性毒性区分2であり、急速分解性に関するデータがないため、区分2とした。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

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