GHS分類結果

名称:1,2,3,4,5,6-ヘキサクロルシクロヘキサン
CAS番号:608-73-1

結果:
物質ID: 1348
分類実施者: GHS関係省庁連絡会議
分類実施年度: 平成18年度
使用マニュアル: GHS分類マニュアル(H18.2.10版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関連する原子団を含んでいない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体。
6 引火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体。
7 可燃性固体 区分外 - - - - 不燃性(ICSC(J), 1998)。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 爆発性に関連する原子団、あるいは自己反応性に関連する原子団を含んでいない。
9 自然発火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体。
10 自然発火性固体 区分外 - - - - 不燃性(ICSC(J), 1998)。
11 自己発熱性化学品 区分外 - - - - 不燃性(ICSC(J), 1998)。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属または半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含んでいない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - 塩素を含む有機化合物であるが、この塩素が炭素以外の元素と化学結合していない。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 分子内に-O-O-構造を含まない有機化合物。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - 固体状の物質に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分3 危険 H301: 飲み込むと有毒 P301+P310: 飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P330: 口をすすぐこと。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットにおける経口LD50 = 100 mg/kg(PIM257(2001), HSDB(2003), RTECS(2004)), 2428 mg/kg(ATSDR(2005))のうち、値の小さいものを採用し、区分3とした。 【注】1,2,3,4,5,6-ヘキサクロルシクロヘキサンには複数の立体異性体(α-; β-; γ-; δ-異性体など)があるが、本IDの健康に対する有害性についてはCAS: 608-73-1(異性体混合物)として調査および分類を実施した。γ-異性体である1,2,3,4,5,6-ヘキサクロロシクロヘキサン【リンデン】(ID612、CAS: 58-89-9)の分類結果も参照のこと。
1 急性毒性(経皮) 区分3 危険 H311: 皮膚に接触すると有毒 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P322: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P361: 汚染された衣類を直ちに全て脱ぐこと。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットにおける経皮LD50 = 900 mg/kg(PIM257(2001), RTECS(2004))から、区分3とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 区分3 危険 H331: 吸入すると有毒 P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P311: 医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットにおける吸入LC50(4hr)= 0.69 mg/L(RTECS(2004))から、区分3とした。なお、本物質の蒸気圧(25℃で0.1Pa)から算出した飽和濃度(約0.01 mg/L)から考えると、実験は粉塵・ミストの状態で行われていると推定した。
2 皮膚腐食性/刺激性 分類できない - - - - データ不足のため。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 分類できない - - - - データ不足のため。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - ヒトに対して反復または長期の皮膚への接触により、皮膚炎を起すことがあるとの記述がある(ICSC(J)(1998), SITTIG(4th, 2002))が、アレルギー反応に起因したものか不明で、データ不足で分類できない。なお、1,2,3,4,5,6-ヘキサクロロシクロヘキサン【リンデン】(ID612、CAS: 58-89-9)も参照のこと。
5 生殖細胞変異原性 区分外 - - - - マウスを用いた優性致死試験の陰性結果およびマウス骨髄細胞を用いたin vivo染色体異常試験の陰性結果(IARC, Suppl.7(1987)、ATSDR(2005), PIM257(2001))から区分外とした。なお、マウス優性致死試験での陽性知見もあるが、疑わしいものとされている(IARC, Suppl.7(1987))。また、in vitro変異原性試験では、Ames試験陰性(DFGOT vol.5(1993))、in vitro染色体異常試験陽性(ATSDR(2005), HSDB(2003))と報告されている。なお、本物質の異性体のひとつであるリンデン(γ体)は、区分外とされている(リンデン(ID612, CAS: 58-89-9)を参照のこと)。
6 発がん性 区分2 警告 H351: 発がんのおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
IARCで2B(IARC Suppl.7(1987))、EPAでB2(工業用ヘキサクロロシクロヘキサンとして)(IRIS(2003))、NTPでR(リンデンおよび他のヘキサクロロシクロヘキサン異性体として)(NTP RoC(11th, 2005))に分類されていることから、区分2とした。
7 生殖毒性 区分2 警告 H361: 生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットを用いた3世代経口繁殖試験および催奇形性試験では影響は認められていない(ATSDR(2005))ものの、マウスを用いた生殖・発生毒性試験において胚吸収率の増加や生存胎児数の減少がみられている(催奇形性は認められない)(ATSDR(2005), HSDB(2003))こと、ICSC(J)(1998)において、動物試験では人の生殖に毒性影響を及ぼす可能性があることが示されているとの記述があることから、区分2とした。なお、本物質の異性体のひとつであるリンデン(γ体)は、区分外とされている(リンデン(ID612, CAS: 58-89-9)を参照のこと)。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(神経系)、区分3(気道刺激性) 警告
危険
H370: 臓器の障害(神経系)
H335: 呼吸器への刺激のおそれ(気道刺激性)
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P307+P311: 暴露した場合:医師に連絡すること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
Priority 1および2の文書中、ヒトの中枢神経系に影響を与える(吐き気、嘔吐、筋痙攣、振せん等)との記述があること(PIM257(2001), DFGOT vol.5(1993), ICSC(J)(1998), HSDB(2003))、および、鼻、のど、気道を刺激するとの記述がある(HSDB(2003), SITTIG(4th, 2002))ことから、区分1(神経系)、区分3(気道刺激性)とした。本物質の異性体のひとつであるリンデン(γ体)(ID612, CAS: 58-89-9)も参照のこと。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(中枢神経系)、区分2(肝臓、腎臓) 危険
警告
H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(中枢神経系)
H373: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害のおそれ(肝臓、腎臓)
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
Priority 1の文書中、本物質を吸入したヒトにおいて、顔や手足の知覚障害、頭痛、眩暈に加え、吐き気、振せん等の症状が報告されている(PIM257(2001))こと、ラットにおいてガイダンス値で区分1に相当する投与量で、嘔吐、振せん、後肢の麻痺等の症状が見られている(ATSDR(2005))こと、また、ガイダンス値で区分2に相当する投与量で、肝臓(細胞肥大、小葉中心性の変性等)、および腎臓(糸球体の変性、尿細管の壊死等)に影響が見られている(ATSDR(2005), DFGOT vol.5(1993))ことから、区分1(中枢神経系)、区分2(肝臓、腎臓)とした。本物質の異性体のひとつであるリンデン(γ体)(ID612, CAS: 58-89-9)も参照のこと。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分1 警告 H400: 水生生物に非常に強い毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
甲殻類(ピンクシュリンプ)の96時間LC50=0.34μg/L(AQUIRE、2003)から、区分1とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分1 警告 H410: 長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
急性毒性が区分1、急速分解性がなく(BODによる分解度:0%(既存化学物質安全性点検データ))、生物蓄積性がある(BCF=893(既存化学物質安全性点検データ))ことから、区分1とした。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)


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