GHS分類結果

名称:トリクロロトリフルオロエタン
CAS番号:

結果:
物質ID: 443
分類実施者: GHS関係省庁連絡会議
分類実施年度: 平成18年度
使用マニュアル: GHS分類マニュアル(H18.2.10版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関する原子団を含まない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 分類できない - - - - データがなく分類できない。なお、ICSC(2004)では、特殊な条下で可燃性としている(1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン)。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 爆発性、あるいは自己反応性に関する原子団を含まない。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 洗浄剤(精密部品洗浄、金属洗浄、ドライクリーニング)の用途があり(CERIハザードデータ集(1999))常温の空気と接触しても自然発火しないと考えられる。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない(融点-36℃(1,1,2-トリクロ-1,2,2-トリフルオロエタン、ICSC(2004))、14.2℃(1,1,1-トリクロロ-2,2,2-トリフルオロエタン、HSDB(2006))、試験温度140℃)。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属または半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含まない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - 酸素を含まず、フッ素および塩素を含む有機化合物であるが、これらフッ素および塩素がそれぞれ炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - -O-O-構造を含まない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データがなく分類できない。なお、1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタンについてはマグネシウムやマグネシウム合金を侵す(ICSC(2004))という報告がある。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分5 - 警告 H303: 飲み込むと有害のおそれ P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。 1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタンでは、ラットを用いた経口投与試験の LD50 43,000 mg/kg(CERIハザードデータ集 98-23(1999))とのデータがある。これに基づき、区分5とした。
1 急性毒性(経皮) 区分5 - 警告 H313: 皮膚に接触すると有害のおそれ P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。 1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタンでは、ウサギを用いた経皮投与試験の LD50 >11,000 mg/kg(RTECS(2006))とのデータがある。これに基づき、区分5とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義によ液体であるため、ガスでの吸入は想定されず、分類対象外とした。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分5 - 警告 H333: 吸入すると有害のおそれ P304+P312: 吸入した場合:気分が悪いときは、医師に連絡すること。 1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタンでは、ラットを用いた吸入暴露試験の LC50 398.49mg/L(CERIハザードデータ集 98-23(1999))、409mg/L(857 mg/Lの2時間暴露を換算)、428mg/L(EHC(1990))、521.11mg/L(CERIハザードデータ集 98-23(1999))(すべて4時間暴露)に基づき、計算式を適用して得られた 398.49 mg/L から、区分5とした(飽和蒸気圧(25℃)は363 mmHg(HSDB(2006))より、48.4 kPaであるので、計算式より飽和蒸気圧濃度は3672 mg/L)。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データなし。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分3 - 警告 H316: 軽度の皮膚刺激 P332+P313: 皮膚刺激が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。 1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタンでは、CERIハザードデータ集 98-23(1999)のウサギを用いたドレイズ法(24時間適用)において、「軽度の刺激」との記述があった。これに基づき、本物質は軽度の刺激性を有すると判断し、区分3とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2B - 警告 H320: 眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタンでは、DFGOTvol3(1992)のウサギを用いた眼刺激性試験において、「軽度の結膜炎とわずかな角膜反応(mild conjunctivis and a minimal corneal reaction)」との記述があった。これに基づき、本物質は軽度の刺激性を有すると判断し、区分2Bとした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - 1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタンでは、CERIハザードデータ集 98-23(1999)とIUCLID(2000)のモルモットマキシマイゼーション法を用いた皮膚感作性試験により「not sensitizing」との記述あった。しかし本報告だけでは区分外と判断しがたいため、分類できないとした。
5 生殖細胞変異原性 区分外 - - - - ACGIH(7th, 2001)、EHC 113(1990)、DFGOTvol.3(1992)の記述から、経世代変異原性試験(優性致死試験)で陰性、生殖細胞/体細胞in vivo変異原性試験なし、であることから「区分外」とした。
6 発がん性 区分外 - - - - ACGIH(7th, 2001)でA4(1,1,2-トリクロロ-1,2,2-トリフルオロエタン(CAS:76-13-1)として)に分類されていることから、「区分外」とした。
7 生殖毒性 区分外 - - - - 環境省リスク評価第4巻(2005)、ACGIH(7th, 2001)、CERIハザードデータ集98-23(1999)の記述から、ラット及びウサギの催奇形性試験、繁殖試験において、明確な毒性影響がみられていないことから「区分外」とした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(肝臓、呼吸器、中枢神経系、血液系、消化管、心血管系)、区分3(麻酔作用) 危険
警告
H336: 眠気又はめまいのおそれ(麻酔作用)
H370: 臓器の障害(肝臓、呼吸器、中枢神経系、血液系、消化管、心血管系)
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P307+P311: 暴露した場合:医師に連絡すること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトについては、「弱い麻酔作用、肝細胞の肥大及び脂肪化」、「… 肺水腫などが認められている。」、「意識混濁、顔面蒼白もみられ、検査で低色素性貧血とびらん性大腸炎も認められている。」、「一過性のチアノーゼがみられ、…。」、「… 集中力の欠如が現れ、… 作業効率が10〜30%低下した。また、… 嗜眠や頭を左右に振った後の見当識のわずかな消失もみられた …。」(環境省リスク評価 第4巻(2005))、「… 窒息或いは心不整脈によって死亡したとの報告がある.」(EHC(1990))、「… 心臓血管系、中枢神経系に影響を与えて心臓障害、中枢神経の抑制を生じ、また意識が低下することがある。急性症状として、…、吸入による不整脈、錯乱、嗜眠、息切れ、意識喪失が現れる。」(環境省リスク評価 第4巻(2005))等の記述があることから、肝臓、呼吸器、中枢神経系、血液系、消化管、心血管系が標的臓器であり、また、麻酔作用を有すると考えられた。 以上より、分類は区分1(肝臓、呼吸器、中枢神経系、血液系、消化管、心血管系)、区分3(麻酔作用)とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(中枢神経系、肝臓) 危険 H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(中枢神経系、肝臓) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトについては、「… 情緒不安定、学習・記憶障害や集中困難を伴う慢性の神経心理学的症状 …」、「AST、ALT の軽度の上昇と脂肪浸潤を伴う軽度な肝障害」(CERIハザードデータ集 98-23(1999))等の記述があることから、中枢神経系、肝臓が標的臓器と考えられた。 以上より、分類は区分1(中枢神経系、肝臓)とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分2 - - H401: 水生生物に毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
魚類(ニジマス)の96時間LC50=7.4mg/L(CERIハザードデータ集、1999)から、区分2とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分2 - H411: 長期継続的影響によって水生生物に毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
急性毒性が区分2、生物蓄積性が低いものの(BCF=86(既存化学物質安全性点検データ))、急速分解性がない(BODによる分解度:2%(既存化学物質安全性点検データ))ことから、区分2とした。


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 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

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厚生労働省モデルSDS

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