GHS分類結果

名称:塩化第一水銀
CAS番号:10112-91-1

結果:
物質ID: 425
分類実施者: GHS関係省庁連絡会議
分類実施年度: 平成18年度
使用マニュアル: GHS分類マニュアル(H18.2.10版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関する原子団を含まない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
6 引火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
7 可燃性固体 区分外 - - - - 不燃性(ICSC,2000)。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 爆発性、あるいは自己反応性に関する原子団を含まない。
9 自然発火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
10 自然発火性固体 区分外 - - - - 不燃性(ICSC,2000)。
11 自己発熱性化学品 区分外 - - - - 不燃性(ICSC,2000)。
12 水反応可燃性化学品 区分外 - - - - 水に対して安定(水に不溶、ICSC(2000))。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
14 酸化性固体 分類できない - - - - 塩素を含む無機化合物であるが、データがなく分類できない。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 有機化合物でない。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - 固体状の物質に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分3 危険 H301: 飲み込むと有毒 P301+P310: 飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P330: 口をすすぐこと。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットを用いた経口投与試験のLD50 210 mg/kg(RTECS(2005))から区分3とした。
1 急性毒性(経皮) 区分4 警告 H312: 皮膚に接触すると有害 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P322: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ウサギを用いた経皮投与試験のLD50 1,500 mg/kg(RTECS(2005))から区分4とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHS定義による固体のため、ガスでの吸入は想定されず、分類対象外とした。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データなし。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分2 警告 H315: 皮膚刺激 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P332+P313: 皮膚刺激が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P362: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
ICSC(J)(2000)に、「発赤 眼、皮膚、気道を刺激する。」との記載があることから、その程度は不明だが刺激性を有すると考えられるため、安全性の観点から、区分2とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2A-2B 警告 H319: 強い眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
ICSC(J)(2000)に、「発赤 眼、皮膚、気道を刺激する。」との記載があることから、その程度は不明だが刺激性を有すると考えられるため、区分2A-2Bとした。細区分の必要がある場合は、安全性の観点から、2Aとした方が望ましい。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 区分1 警告 H317: アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P333+P313: 皮膚刺激又は発疹が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P272: 汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
本物質を特定したデータについてはデータ不足であるが、日本職業・環境アレルギー学会特設委員会は水銀を皮膚感作性がある物質、日本産業衛生学会は水銀(注)を皮膚感作性物質「第1群」に分類している。これらの既存分類は本物質を明示していないものの、水銀化合物をも含むと考えられる。したがって、水銀化合物である本物質も皮膚感作性を有すると考えられ、区分1とした。 (注)「当該物質自体ないしその化合物を示すが、感作性に関与するすべての物質が同定されているわけではない。」という但し書きがある。
5 生殖細胞変異原性 分類できない - - - - データなし。 なお、無機水銀化合物の変異原性/遺伝毒性については、ID285、塩化水銀(II)、CAS:7487-94-7を参照のこと。
6 発がん性 区分外 - - - - ACGIH(2001)でA4(金属水銀及び無機水銀化合物として)、IARC(1993)でGroup 3(金属水銀及び無機水銀化合物として)に分類されていることから、区分外とした。
7 生殖毒性 分類できない - - - - データなし。 なお、無機水銀化合物の生殖毒性については、ID285、塩化水銀(II)、CAS:7487-94-7を参照のこと。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(腎臓)、区分3(気道刺激性) 警告
危険
H370: 臓器の障害(腎臓)
H335: 呼吸器への刺激のおそれ(気道刺激性)
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P307+P311: 暴露した場合:医師に連絡すること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトについて、「尿量減少、浮腫がみられ、腎不全が死亡の一因と考えられた」(CICAD 50(2003))との記載、また、「眼、皮膚、気道を刺激する」(ICSC(J)(2000))」の記載があることから、腎臓が標的臓器であり、気道刺激性も有するものと考えられた。 以上より、分類は区分1(腎臓)、区分3(気道刺激性)とした。 【注記】 なお、無機水銀の毒性について、「無機水銀への経口暴露による死因は、腎不全、心血管虚脱、および重症の消化器障害とされている。これらの症例中もっとも一般的な所見は消化管の病変と腎不全である。無機水銀への暴露はヒトにネフローゼ症候群を誘発するようである。」(CICAD 50(2003))の記載がある。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(腎臓、神経系、消化管) 危険 H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(腎臓、神経系、消化管) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトについて、「腹痛、吐き気、嘔吐、黒色便、腎による尿排出量の減少と腎不全、易刺激性、いらだち、不眠、衰弱、羞明、筋攣縮、腱反射の亢進や低下、錯乱、不規則な腕の運動、歩行障害」(CICAD 50(2003))、「痴呆と易刺激性、剖検で脳重量の減少、小脳の神経細胞の減少、光学顕微鏡検査で神経細胞質中の水銀顆粒」(ATSDR(1994))との記載があることから、腎臓、神経系、消化管が標的臓器と考えられた。なお、消化管については経皮経路で影響がみられているため直接的な刺激に起因したものではないと考えられることから標的臓器とした。 以上より、分類は区分1(腎臓、神経系、消化管)とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分1 警告 H400: 水生生物に非常に強い毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
甲殻類(オオミジンコ)の48時間LC50=0.002mg/L(AQUIRE、2003)から、区分1とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分1 警告 H410: 長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
急性毒性が区分1、金属化合物であり水中での挙動が不明であり、生物蓄積性がある(BCF=1300(既存化学物質安全性点検データ))ことから、区分1とした。


分類結果の利用に関する注意事項:
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 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

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