GHS分類結果

名称:ジニトロトルエン
CAS番号:25321-14-6

結果:
物質ID: 413
分類実施者: GHS関係省庁連絡会議
分類実施年度: 平成18年度
使用マニュアル: GHS分類マニュアル(H18.2.10版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 区分外 - - - - 化学構造にニトロ基を含み、酸素収支の計算値が-114であり、また、2,6-体、3,4-体および2,4-体について、ICSC(2004)では加熱すると爆発することがあるとしているが、分解開始温度および分解エネルギーのデータがなく分類できない。国連危険物輸送勧告がクラス・区分6.1(国連番号3454(固体)および1600(溶融状のもの))。なお、2,6-体等を約20%含む2,4-ジニトロトルエン市販製品は、250℃で分解を開始し、280℃では継続的に分解し(Bretherick(J), 5th, 1998)、また、分解エネルギーは、TNT(2,4,6-トリニトロトルエン)5.1kJ/g(Bretherick(J), 5th, 1998)の約85%(NFPA, 13th, 2002)との報告あり。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
6 引火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
7 可燃性固体 区分外 - - - - ICSC(2004)では可燃性としているが、データがなく分類できない。国連危険物輸送勧告がクラス・区分6.1(国連番号3454(固体)および1600(溶融状のもの))。
8 自己反応性化学品 区分外 - - - - 化学構造に、爆発性に関わる原子団としてニトロ基を含み、また、2,6-体、3,4-体および2,4-体について、ICSC(2004)では加熱すると爆発することがあるとしているが、データがなく分類できない。国連危険物輸送勧告がクラス・区分6.1(国連番号3454(固体)および1600(溶融状のもの))。
9 自然発火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
10 自然発火性固体 区分外 - - - - データがなく分類できない。国連危険物輸送勧告がクラス・区分6.1(国連番号3454(固体)および1600(溶融状のもの))。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない(各異性体の個別の融点は52.5〜93℃の範囲にあり、試験温度は140℃。各異性体の個別の融点は、ICSC(2004)により、66℃(2,6-体)、58℃(3,4-体)、59〜61℃(2,3-体)、71℃(2,4-体)、また(HSDB,2006)により、93℃(3,5-体)、52.5℃(2,5-体)。)。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属または半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含まない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
14 酸化性固体 区分外 - - - - 炭素、水素以外の元素と化学結合している酸素を含む有機化合物であるが、データがなく分類できない。国連危険物輸送勧告がクラス・区分6.1(国連番号3454(固体)および1600(溶融状のもの))。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - -O-O-構造を含まない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 区分外(2,5-体)、分類できない(2,6-体、3,4-体、2,3-体、3,5-体) - - - - 2,5-体については、データがなく分類できない。国連危険物輸送勧告がクラス・区分6.1(国連番号3454(固体)および1600(溶融状のもの))。2,6-体、3,4-体、2,3-体、3,5-体、2,4-体については、固体状の物質に適した試験方法が確立していない。なお、各異性体の個別の融点は、ICSC(2004)により、66℃(2,6-体)、58℃(3,4-体)、59〜61℃(2,3-体)、71℃(2,4-体)、また(HSDB,2006)により、93℃(3,5-体)、52.5℃(2,5-体)であり、試験温度は55℃である。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4 警告 H302: 飲み込むと有害 P301+P312: 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P330: 口をすすぐこと。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットの経口投与試験で、LD50 1,000 mg/kg(CERIハザードデータ集 98-15B(1998))から区分4とした。
1 急性毒性(経皮) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義による固体のため、ガスの吸入は想定されず、分類対象外とした。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データなし。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分外 - - - - SIDS(2005)のウサギを用いた皮膚刺激性試験において「刺激性なし 軽度の紅斑」との報告が得られていることから、区分外とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分外 - - - - SIDS(2005)のウサギを用いた眼刺激性試験において「1匹で24時間軽度の紅斑」がみられている。SIDS(2005)の結果報告としては「刺激性なし」としていることから、区分外とした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - データなし。
5 生殖細胞変異原性 区分外 - - - - SIDS(2005)、DFGOTvol.6(1994)の記述から、経世代変異原性試験(優勢致死試験)で陰性、生殖細胞in vivo変異原性試験なし、体細胞in vivo変異原性試験(小核試験、マウススポット試験)で陰性、であることから「区分外」とした。
6 発がん性 区分2 警告 H351: 発がんのおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ACGIH(2001)でA3に分類されていることから、「区分2」とした。
7 生殖毒性 区分2 警告 H361: 生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
環境省リスク評価第2巻(2003)の記述から、ラットの催奇形性試験において親動物での一般毒性が発現する用量で吸収胚及び死亡胎仔の増加が認められていることから、区分2とした。 健康有害性については、【ID33、2,4-ジニトロトルエン、CAS:121-14-2】、【ID414、2,6-ジニトロトルエン、CAS:606-20-2】、【ID416、3,5-ジニトロトルエン、CAS:618-85-9】も参照のこと。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(中枢神経系、血液系) 危険 H370: 臓器の障害(中枢神経系、血液系) P307+P311: 暴露した場合:医師に連絡すること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトについては、「急性影響としては、メトヘモグロビン血症と、それによるチアノーゼ、頭痛、神経過敏、めまい、衰弱、吐き気、嘔吐、呼吸困難、意識喪失がみられ」(CERIハザードデータ集 98-15(1999))の記述、実験動物については、「毒性症状としては間代性痙攣、呼吸困難等が報告されている」、「中枢神経への障害、呼吸困難、チアノーゼ」(SIDS 2004)等の記述があることから、中枢神経系、血液系が標的臓器と考えられた。なお、実験動物に対する影響は、区分2に相当するガイダンス値の範囲でみられた。 以上より、分類は区分1(中枢神経系、血液系)とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(心血管系、血液系、神経系、肝臓、腎臓)、区分2(精巣、副腎) 危険
警告
H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(心血管系、血液系、神経系、肝臓、腎臓)
H373: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害のおそれ(精巣、副腎)
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトについては、「暴露された可能性のある労働者だけに心電図の異常、頻脈」、「154人の男性労働者。嘔吐、吐気。貧血やチアノーゼ、白血球数の増加を含む血液学的異常。筋力低下。154人中2人において黄疸及び肝炎。154人中36人が暴露直後の調査で貧血を訴えた」(CERI・NITE有害性評価書 No.51(2004))、「虚血性心疾患に因る過剰死亡が認められた 」、「主たる所見は蒼白、チアノーゼ、貧血、白血球増多症であった」、「暴露量に比例した尿細管変性に見られる腎毒性が認められた」、「食欲不振、味覚異常、嘔吐感、めまい、神経過敏」(SIDS(2004))等の記述、実験動物については、「ヘモグロビン減少、赤血球数減少、特発性心筋症、精巣変性、副腎変性、肝細胞の空胞変性及び点状壊死、慢性間質性腎炎の憎悪」、「全ての実験群で網状赤血球及びハインツ小体が顕著に増加」(SIDS(2004))等の記述があることから、心臓、血液系、神経系、肝臓、腎臓、精巣、副腎が標的臓器と考えられた。なお、実験動物に対する影響は、区分1及び区分2に相当するガイダンス値の範囲でみられた。 以上より、分類は区分1(心血管系、血液系、神経系、肝臓、腎臓)、区分2(精巣、副腎)とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。
11 水生環境有害性(長期間) 分類できない - - - - データ不足のため分類できない。


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 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

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