GHS分類結果

名称:クロム酸カリウム
CAS番号:7789-00-6

結果:
物質ID: 263
分類実施者: GHS関係省庁連絡会議
分類実施年度: 平成18年度
使用マニュアル: GHS分類マニュアル(H18.2.10版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関する原子団を含まない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
6 引火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
7 可燃性固体 区分外 - - - - 不燃性(HSDB,2005)。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 爆発性、あるいは自己反応性に関する原子団を含まない。
9 自然発火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
10 自然発火性固体 区分外 - - - - 不燃性(HSDB,2005)。
11 自己発熱性化学品 区分外 - - - - 不燃性(HSDB,2005)。
12 水反応可燃性化学品 区分外 - - - - 水に対して安定(水溶解度65.0g/100g(25℃)、Lide(84th,2003))。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
14 酸化性固体 分類できない - - - - 酸素を含む無機化合物であるが、データがなく分類できない。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - 有機化合物でない。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - 固体状の物質に適した試験方法が確立していない。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(経皮) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義による固体であるため、ガスでの吸入は想定されず、分類対象外とした。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データなし。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分1A-1C 危険 H314: 重篤な皮膚の薬傷及び眼の損傷 P301+P330+P331: 飲み込んだ場合:口をすすぐこと。無理に吐かせないこと。
P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ATSDR(2000)のヒトへの健康影響に関する記述「クロム酸カリウムを含む膏薬の使用により、皮膚で壊死と、落瘡が起こる。」「潰瘍化は高濃度のクロム酸ナトリウム、二クロム酸カリウム、クロム酸カリウムと接触する労働者の間で起こる。」という記述から、程度は不明だが、非可逆的皮膚刺激性があると思われるため、区分1A-1Cとしたが、細区分が必要な場合は、安全性の観点から、1Aとした方が望ましい。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分1 危険 H318: 重篤な眼の損傷 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
皮膚腐食性/刺激性が区分1のため、技術指針に基づき眼に対する重篤な損傷/眼刺激性も区分1とした。
4 呼吸器感作性 区分1 危険 H334: 吸入するとアレルギー、喘息又は呼吸困難を起こすおそれ P304+P341: 吸入した場合:呼吸が困難な場合には、空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P342+P311: 呼吸に関する症状が出た場合:医師に連絡すること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P285: 換気が十分でない場合には、呼吸用保護具を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
既存分類情報に基づくと、日本職業・環境アレルギー学会特設委員会はクロムを呼吸器感作性がある物質、日本産業衛生学会はクロム(注)を気道感作性物質「第2群」に分類している。これらの既存分類は本物質を明示していないものの、クロム化合物をも含むと考えられる。したがって、クロム化合物である本物質も呼吸器感作性を有すると考えられ、区分1とした。 (注)「当該物質自体ないしその化合物を示すが、感作性に関与するすべての物質が同定されているわけではない。」という但し書きがある。
4 皮膚感作性 区分1 警告 H317: アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P333+P313: 皮膚刺激又は発疹が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P272: 汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ATSDR(2000)にてクロム酸カリウムを用いたヒトパッチテストの結果から、皮膚感作性「あり」という記述があることから、区分1とした。なお、既存分類情報に基づくと、日本職業・環境アレルギー学会特設委員会はクロムを皮膚感作性がある物質、日本産業衛生学会はクロム(注)を皮膚感作性物質「第1群」に分類している。これらの既存分類は本物質を明示していないものの、クロム化合物をも含むと考えられる。したがって、既存分類からクロム化合物である本物質も皮膚感作性を有すると、考えられる。 (注)「当該物質自体ないしその化合物を示すが、感作性に関与するすべての物質が同定されているわけではない。」という但し書きがある。
5 生殖細胞変異原性 区分2 警告 H341: 遺伝性疾患のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
IARC 49(1999)、ATSDR(2000)、EHC 61(1988)の記述から、経世代変異原性試験なし、生殖細胞in vivo変異原性試験なし、体細胞in vivo変異原性試験(小核試験)で陽性、生殖細胞in vivo遺伝毒性試験なし、であることから区分2とした。
6 発がん性 区分1A 危険 H350: 発がんのおそれ P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
NTP(2005)でK(Chromium hexavalent(VI)compounds として)、IARC(1990)でGroup 1(Chromium(VI)として)、日本産業衛生学会で1(クロム化合物(6価)として)と分類されていることから、区分1Aとした。
7 生殖毒性 分類できない - - - - データなし。なお、クロム(IV)の生殖毒性については、ニクロム酸カリウム、CAS:7778-50-9も参照のこと。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 分類できない - - - - データなし。 なお、6価クロム化合物の急性毒性として、「咳、緑黄色痰、呼吸困難、肺うっ血症状、緑黄色粘液嘔吐、腹痛、下痢、悪心、嘔吐、肝臓障害、腎臓障害」(CERIハザードデータ集 97-18(1998))がみられたとの報告がある。 本事業で同様にGHS分類を実施しているニクロム酸カリウム(ID_0262、CAS_7778-50-09)の分類結果を参照すること。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 分類できない - - - - データなし。 なお、6 価クロムの慢性毒性として、「鼻粘膜、咽喉頭の炎症や潰瘍、鼻中隔穿孔」(CERIハザードデータ集 97-18(1998))がみられたとの報告がある。 本事業で同様にGHS分類を実施しているニクロム酸カリウム(ID_0262、CAS_7778-50-09)の分類結果を参照すること。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分1 警告 H400: 水生生物に非常に強い毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
甲殻類(オオミジンコ)の48時間EC50=19.2μg/L(HSDB、2004)(クロム酸カリウム濃度換算値:71.7μg/L)から、区分1とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分1 警告 H410: 長期継続的影響によって水生生物に非常に強い毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
急性毒性が区分1、金属化合物であり水中での挙動および生物蓄積性が不明であるため、区分1とした。


分類結果の利用に関する注意事項:
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 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

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