GHS分類結果

名称:無水マレイン酸
CAS番号:108-31-6

結果:
物質ID: 203
分類実施者: GHS関係省庁連絡会議
分類実施年度: 平成18年度
使用マニュアル: GHS分類マニュアル(H18.2.10版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関する原子団を含まない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
6 引火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
7 可燃性固体 区分外 - - - - ICSC(2004)では可燃性としているが、データがなく分類できない。国連危険物輸送勧告がクラス8(国連番号2215(固体)、国連番号2215(溶融状のもの))。
8 自己反応性化学品 区分外 - - - - 化学構造に不飽和結合を含み、Bretherick(J)(5th,1998)による260〜370℃の範囲における分解熱は0.92kJ/gであるが、データがなく分類できない。国連危険物輸送勧告がクラス・区分6.1およびクラス8(国連番号2215(固体)、国連番号2215(溶融状のもの))。
9 自然発火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
10 自然発火性固体 区分外 - - - - 常温の空気と接触しても自然発火しない(発火点477℃(ICSC,2004))。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない(融点53℃(ICSC,2004)、試験温度140℃)。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属または半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含まない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - フッ素および塩素を含まず、酸素を含む有機化合物であるが、この酸素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - -O-O-構造を含まない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データがなく分類できない。なお、国連危険物輸送勧告では腐食性物質に該当しているが、皮膚腐食性も含む分類なので、金属腐食性に該当するのか判別できない(国連番号2215(固体)、国連番号2215(溶融状のもの))。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4 警告 H302: 飲み込むと有害 P301+P312: 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P330: 口をすすぐこと。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットを用いた経口投与試験のLD50=850 mg/kg(ACGIH(7th, 2001)), 235 mg/kg(雌)、400 mg/kg、409 mg/kg(雄)、495 mg/kg、824 mg/kg、840 mg/kg、900 mg/kg、1,100 mg/kg、1,050 mg/kg 以上、(DFGOT vol.4(1992))から計算式を適用して求めた LD50=555 mg/kg に基づき、区分4とした。
1 急性毒性(経皮) 区分3 危険 H311: 皮膚に接触すると有毒 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P322: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P361: 汚染された衣類を直ちに全て脱ぐこと。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットを用いた経皮投与試験のLD50=610 mg/kg(CERI ハザードデータ集 2001-4(2002))およびウサギを用いた LD50=2,620 mg/kg(DFGOT vol.4(1992))に基づき、区分3とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義による固体であるため、ガスでの吸入は想定できず、分類対象外とした。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分1 危険 H330: 吸入すると生命に危険 P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P284: 呼吸用保護具を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
P320: 特別な処置が緊急に必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットを用いた吸入暴露試験(蒸気)のLC50 0.16mg/L(39.9ppm相当)(4時間)(CERI ハザードデータ集 2001-4(2002))が得られた。飽和蒸気圧25Pa(25℃)(ICSC(2004))における飽和蒸気圧濃度は250ppmである。今回得られたLC50は、飽和蒸気圧濃度の90%より低い濃度であるため、「ミストがほとんど混在しない蒸気」として、ppm濃度基準値で区分1とした。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データなし。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分1A-1C 危険 H314: 重篤な皮膚の薬傷及び眼の損傷 P301+P330+P331: 飲み込んだ場合:口をすすぐこと。無理に吐かせないこと。
P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
DFGOT Vol.4(1992)のウサギを用いた皮膚刺激性試験データの記述に、4時間適用の結果ではないが、「水で湿潤粉末の適用で壊死を生じた」、とあることから、区分1A-1C とした。細区分が必要な場合は、安全性の観点から、1Aとした方が望ましい。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分1 危険 H318: 重篤な眼の損傷 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
DFGOT vol.4(1992)のウサギを用いた眼刺激性試験の結果の記述に「重度の刺激性と、時に非可逆性の損傷がみられた」、および、ACGIH(7th, 2001)のウサギを用いた眼刺激性試験の結果の記述に「重度で永続的なうっ血と、角膜内血管進入がみられた」、とあることから、区分1とした。
4 呼吸器感作性 区分1 危険 H334: 吸入するとアレルギー、喘息又は呼吸困難を起こすおそれ P304+P341: 吸入した場合:呼吸が困難な場合には、空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P342+P311: 呼吸に関する症状が出た場合:医師に連絡すること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P285: 換気が十分でない場合には、呼吸用保護具を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
日本職業・環境アレルギー学会特設委員会(2004)が気道感作性物質として報告していることから、区分1とした。
4 皮膚感作性 区分1 警告 H317: アレルギー性皮膚反応を起こすおそれ P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P333+P313: 皮膚刺激又は発疹が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P272: 汚染された作業衣は作業場から出さないこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
CERIハザードデータ集 2001-4(2002)のモルモットを用いたmaximization法の結果の記述に「陽性」とあり、また、日本職業・環境アレルギー学会特設委員会(2004)が皮膚感作性物質としてを報告していることから、区分1とした。
5 生殖細胞変異原性 区分外 - - - - CERIハザードデータ集2001-4(2002)、ACGIH(7th, 2001)、DFGOT vol.4(1992)、NTP DB(Access on Mar., 2006)の記述から、経世代変異原性試験なし、生殖細胞in vivo変異原性試験なし、体細胞in vivo変異原性試験(染色体異常試験)で陰性であることから、区分外とした。
6 発がん性 区分外 - - - - ACGIH(2001)でA4に分類されていることから、区分外とした。
7 生殖毒性 区分外 - - - - CERIハザードデータ集2001-4(2002)、ACGIH(7th, 2001)、DFGOT vol.4(1992)の記述から、親動物に一般毒性を示す用量まで、生殖・発生への影響はみられないことから、区分外とした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(呼吸器、消化管)、区分2(肝臓) 警告
危険
H371: 臓器の障害のおそれ(肝臓)
H370: 臓器の障害(呼吸器、消化管)
P307+P311: 暴露した場合:医師に連絡すること。
P309+P311: 暴露したとき、又は気分が悪いとき:医師に連絡すること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトについては、「蒸気に誤って暴露された事例では、暴露直後に眼及び喉の焼灼感、咳、呼吸困難及び嘔吐、翌日の朝には喘ぎ呼吸、ラッセル音がみられ、気管支喘息と診断」(CERIハザードデータ集 2001-4(2002))の記述、実験動物については、「吸入暴露した実験で、気管支肺炎により死亡」(CERIハザードデータ集 2001-4(2002))、「経口投与にて肝臓及び肺における出血」、「消化管の炎症(経皮暴露にて)」(DFGOT vol.4(1992))等の記述があることから、呼吸器、肝臓、消化管が標的臓器と考えられた。なお、実験動物に対する影響は、区分1及び区分2に相当するガイダンス値の範囲でみられた。 以上より、分類は区分1(呼吸器、消化管)、区分2(肝臓)とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(呼吸器、血液系)、区分2(腎臓、肝臓、脾臓) 警告
危険
H373: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害のおそれ(腎臓、肝臓、脾臓)
H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(呼吸器、血液系)
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトについては、「無水マレイン酸に暴露された作業員の肺水腫の1例」、「上部気道刺激」(ACGIH(7th, 2001))、「喘鳴及び息切れ」、「咳、喉頭への刺激及び焼灼感、羞明及び喘息」(CERIハザードデータ集 2001-4(2002))、「喘息及び溶血性貧血」(DFGOT vol.11(1998))の記述、実験動物では「鼻腔組織の炎症、過形成及び化生」(ACGIH(7th, 2001))、「尿細管の拡張及び上皮の変性」、「赤血球数及びヘマトクリット値の減少」、「肺胞内出血」(CERIハザードデータ集 2001-4(2002))、「肝臓、腎臓、脾臓の実質性萎縮」(HSDB(2005))、「血液系への影響」(IRIS(1988)))等の記述があることから、呼吸器、腎臓、肝臓、脾臓、血液系が標的臓器と考えられた。なお、実験動物に対する影響は、区分1及び区分2に相当するガイダンス値の範囲でみられた。また腎臓、肝臓、脾臓に対する影響は区分1に相当するガイダンス値で観察されたが、引用した評価書(HSDB)のPriolityが2であることから、これらを区分2に分類した。 以上より、分類は区分1(呼吸器、血液系)、区分2(腎臓、肝臓、脾臓)とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分3 - - H402: 水生生物に有害 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
藻類(セネデスムス)の72時間ErC50=29mg/L(CERI・NITE有害性評価書(暫定版)、2006)から、区分3とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分外 - - - - 急速分解性があり(TOCによる分解度:85%(既存化学物質安全性点検データ))、かつ生物蓄積性が低いと推定される(log Kow=1.62(PHYSPROP Database、2005))ことから、区分外とした。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

厚生労働省モデルSDS

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