GHS分類結果

名称:スチレン
CAS番号:100-42-5

結果:
物質ID: 151
分類実施者: GHS関係省庁連絡会議
分類実施年度: 平成18年度
使用マニュアル: GHS分類マニュアル(H18.2.10版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関する原子団を含まない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分3 警告 H226: 引火性液体及び蒸気 P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P233: 容器を密閉しておくこと。
P240: 容器を接地すること/アースをとること。
P241: 防爆型の電気機器/換気装置/照明機器/...機器を使用すること。
P242: 火花を発生させない工具を使用すること。
P243: 静電気放電に対する予防措置を講ずること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ICSC(1999)による引火点は31℃(密閉式)であり、「区分3」に該当する。国連危険物輸送勧告では安定剤入りのものがクラス3、容器等級III(国連番号2055)。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 分類できない - - - - 化学構造に不飽和結合を含むが、データがなく分類できない。なお、国連危険物輸送勧告では安定剤入りのものがクラス3(国連番号2055)。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 常温の空気と接触しても自然発火しない(発火点490℃(ICSC,1999))。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属または半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含まない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - 酸素、フッ素または塩素を含まない有機化合物である。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - -O-O-構造を含まない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データなし。なお国連危険物輸送勧告では安定剤入りのものがクラス3(国連番号2055)。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分5 - 警告 H303: 飲み込むと有害のおそれ P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。 ラットの経口投与試験のLD50 5,000 mg/kg(CERI・NITE有害性評価書No.52(2004))に基づき、区分5とした。
1 急性毒性(経皮) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義による液体であるため、ガスでの吸入は想定できず、分類対象外とした。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分4 警告 H332: 吸入すると有害 P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
ラットを用いた吸入暴露試験(蒸気)LC50 11.7mg/L(4時間)、11.9mg/L(4時間)((CERI・NITE有害性評価書No.52(2004))に基づき、計算式を適用し、LC50(4時間換算値)の2770 ppmが得られた。飽和蒸気圧0.67kPa(CERIハザードデータ集96-46(1998)における飽和蒸気圧濃度は6600 ppmである。今回得られたLC50は、飽和蒸気圧濃度の90%よりも低い濃度なので「ミストがほとんど混在しない蒸気」として、ppm濃度基準値で区分4とした。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データなし。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分2 警告 H315: 皮膚刺激 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P332+P313: 皮膚刺激が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P362: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。
ウサギを用いた皮膚刺激性試験の結果、「中等度の刺激性を有する」としていることから区分2とした。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分2A 警告 H319: 強い眼刺激 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
CERI・NITE有害性評価書 No.52(2004)の、ヒト疫学事例及びウサギを用いた眼刺激性試験の結果、「中等度の刺激(7日間持続)」から、区分2Aとした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - データなし。
5 生殖細胞変異原性 区分2 警告 H341: 遺伝性疾患のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ACGIH(7th, 2001)、CERI・NITE有害性評価書 No.52(2004)の記述から、生殖細胞in vivo経世代変異原性/変異原性試験なし、体細胞in vivo変異原性試験(染色体異常試験、小核試験)で陽性、生殖細胞in vivo遺伝毒性試験なし(マウスの脳、肝臓、腎臓、肺、精巣の細胞を用いたDNA一本鎖切断試験(No.36)での陽性結果に関しては生殖細胞(germ cell)に限定して調べたかが明確でないため分類には使用しない(専門家判断済))であることから区分2とした。
6 発がん性 区分2 警告 H351: 発がんのおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
IARC(2002)で2Bに分類されていることから、区分2とした。
7 生殖毒性 区分1B 危険 H360: 生殖能又は胎児への悪影響のおそれ P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
CERI・NITE有害性評価書 No.52(2004)の記述から、ラットの三世代繁殖試験において、F0に影響のない用量で、F1、F 2に新生児期生存率低下がみられていること、さらに、ラットの発生毒性試験及び授乳期投与試験で母毒性のみられない用量で児動物に大脳セロトニンの減少、立ち直り反射及び聴覚反射の遅延など多くの行動的検査に異常がみられていることから区分1Bとした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(中枢神経系)、区分3(気道刺激性) 警告
危険
H370: 臓器の障害(中枢神経系)
H335: 呼吸器への刺激のおそれ(気道刺激性)
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P307+P311: 暴露した場合:医師に連絡すること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトについての「眼、鼻に対する刺激性、中枢神経系に対する影響」(EHC 26(1983)、CERIハザードデータ集 96-46(1998))等の記述から、中枢神経系が標的臓器と考えられ、鼻部への刺激影響が示されている。 以上より、分類は区分1(中枢神経系)、区分3(気道刺激性)とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(呼吸器、神経系、血液系、肝臓) 危険 H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(呼吸器、神経系、血液系、肝臓) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトについて、CERI・NITE有害性評価書 No.52(2004)で「ヒトでの事例や疫学調査では、暴露量が明確でないことや他の物質との複合暴露の可能性もあるため、明確に結論づけることは困難である。」としながらも、「スチレンは、眼、皮膚、鼻、咽喉に刺激性を示し、呼吸器への影響として閉塞性肺障害、慢性気管支炎等を引き起こす。また、めまい、頭痛、疲労感、錯乱、不眠などの中枢神経系への作用、反応時間、言語性記憶の低下などの精神神経機能への影響、視覚・聴覚への影響、リンパ球数増加、血小板数の減少などの血液系への影響、AST、GGT、ALT 活性上昇などの肝臓への影響もみられている。」との記述があり、呼吸器、神経系、血液系、肝臓が標的臓器と考えられた。なお、CERI・NITE有害性評価書 No.52(2004)では実験動物についても「鼻腔粘膜、気管粘膜の上皮細胞空胞化及び細胞の剥脱、核濃縮」、「尾部末梢神経伝達速度SCV(sensory nerve conduction velocity)の低値」、「肝細胞壊死」等の記載がある。 以上より、分類は区分1(呼吸器、神経系、血液系、肝臓)とした。
10 吸引性呼吸器有害性 区分1 危険 H304: 飲み込んで気道に侵入すると生命に危険のおそれ P301+P310: 飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。
P331: 無理に吐かせないこと。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
炭化水素であり、動粘性率は0.772mm2/s(25℃)(CERI計算値)である。 よって、区分1とした。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分2 - - H401: 水生生物に毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
魚類(ファットヘッドミノー)の96時間LC50=4.02mg/L(CERI・NITE有害性評価書、2004)他から、区分2とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分外 - - - - 急速分解性があり(BODによる分解度:100%(既存化学物質安全性点検データ))、かつ生物蓄積性が低いと推定される(log Kow=2.95(PHYSPROP Database、2005))ことから、区分外とした。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

厚生労働省モデルラベル

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厚生労働省モデルSDS

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