GHS分類結果

名称:1,1-ジメチルヒドラジン
CAS番号:57-14-7

結果:
物質ID: 79
分類実施者: GHS関係省庁連絡会議
分類実施年度: 平成18年度
使用マニュアル: GHS分類マニュアル(H18.2.10版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 区分外 - - - - ヒドラジン類であり、爆発性に関わる原子団を含むが、データがなく分類できない。国連危険物輸送勧告がクラス3、クラス・区分6.1およびクラス8(国連番号1163)。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
6 引火性液体 区分2 危険 H225: 引火性の高い液体及び蒸気 P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。
P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。
P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。
P233: 容器を密閉しておくこと。
P240: 容器を接地すること/アースをとること。
P241: 防爆型の電気機器/換気装置/照明機器/...機器を使用すること。
P242: 火花を発生させない工具を使用すること。
P243: 静電気放電に対する予防措置を講ずること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ICSC(2004)による引火点は-15℃(密閉式)、かつ沸点は63℃であり、「区分2」に該当する。国連危険物輸送勧告ではクラス3、クラス・区分6.1およびクラス8(国連番号1163)。
7 可燃性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
8 自己反応性化学品 区分外 - - - - ヒドラジン類であり、爆発性に関わる原子団を含むが、データがなく分類できない。国連危険物輸送勧告がクラス3、クラス・区分6.1およびクラス8(国連番号1163)。
9 自然発火性液体 区分外 - - - - 常温の空気と接触しても自然発火しない(発火点249℃(ICSC,2004))。
10 自然発火性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属または半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含まない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - 酸素、フッ素または塩素を含まない有機化合物である。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体である。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - -O-O-構造を含まない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 分類できない - - - - データがなく分類できない。なお、国連危険物輸送勧告では腐食性物質に該当しているが、皮膚腐食性も含む分類なので、金属腐食性に該当するのか判別できない(国連番号1163)。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分3 危険 H301: 飲み込むと有毒 P301+P310: 飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P330: 口をすすぐこと。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットを用いた経口投与試験のLD50=122 mg/kg、250 mg/kg、360 mg/kg(PATTY(4th, 2000))から計算式を適用して得られた 131 mg/kg に基づき、区分3とした。
1 急性毒性(経皮) 区分4 警告 H312: 皮膚に接触すると有害 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P322: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ウサギを用いた経皮投与試験のLD50=1,060 mg/kg(PATTY(4th, 2000))に基づき、区分4とした。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義における液体であるため、ガスでの吸入は想定されず、分類対象外とした。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 区分2 危険 H330: 吸入すると生命に危険 P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。
P284: 呼吸用保護具を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
P320: 特別な処置が緊急に必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットを用いた吸入暴露試験の LC50(4時間)=252 ppm(0.66 mg/Lに相当)、LC50(1時間)=1411 ppm(3.67 mg/Lに相当し、4時間換算するとLC50(4時間)=708ppm(1.84 mg/L に相当))(PATTY(4th, 2000))のうち、小さい値である 252 ppm は、飽和蒸気圧 156.8 torr(25℃)における飽和蒸気圧濃度 207,000 ppm の90 % よりも低い値であるため、「ミストがほとんど混在しない蒸気」としてガスの基準値で分類し、区分2とした。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データなし。
2 皮膚腐食性/刺激性 分類できない - - - - PATTY(4th, 2000)のウサギとモルモットを用いた皮膚刺激性試験の結果の記述に、「少量適用するとわずかに紅斑がみられる」とあるが適用量や濃度が不明であり、本物質は強アルカリ性である(PATTY(4th, 2000))との記載があるがpHが不明であり、刺激性の程度が判断できないため、分類できない。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 分類できない - - - - PATTY(4th, 2000)のウサギを用いた眼刺激性試験の結果の記述に、「軽度の結膜炎やわずかな紅斑がみられ、それらは5日以内に消失した」とあり、また、げっ歯類を用いた眼刺激性試験の結果の記述に「永続性の眼の損傷はみられなかった」とあるがいずれも適用量や濃度は不明であり、加えて、本物質は強アルカリ性である(PATTY(4th, 2000))との記述があるがpHが不明であるため、刺激性の程度が判断できず、分類できない。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 分類できない - - - - データなし。
5 生殖細胞変異原性 区分1B 危険 H340: 遺伝性疾患のおそれ P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
IARC 71(1999)の記述から、経世代変異原性試験(優性致死試験)で陰性、生殖細胞in vivo変異原性試験(マウス精子細胞における小核試験)で陽性であることから、区分1Bとした。
6 発がん性 区分2 警告 H351: 発がんのおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
NTP(2005)でR、ACGIH(2001)でA3、IARC(1999)で2Bに分類されていることから、区分2とした。
7 生殖毒性 区分2 警告 H361: 生殖能又は胎児への悪影響のおそれの疑い P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
IARC 71(1999)、ACGIH(7th, 2001)、PATTY(4th, 2000)の記述から、母動物に一般毒性を示す用量で、児動物の発生に影響がみられることから、区分2とした。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(神経系、呼吸器) 危険 H370: 臓器の障害(神経系、呼吸器) P307+P311: 暴露した場合:医師に連絡すること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトについては、「呼吸器に対する作用、吐き気、嘔吐、神経学的影響、肺水腫」(PATTY(4th, 2000))等の記述があることから、神経系、呼吸器が標的臓器と考えられた。 以上より、分類は区分1(神経系、呼吸器)とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(肝臓、神経系、血液系、腎臓) 危険 H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(肝臓、神経系、血液系、腎臓) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトについては、「脂肪肝」(IARC 4(1974))等の記述、実験動物については、「振戦、呼吸困難、嗜眠、痙攣、嗜眠、流涎、下痢、運動失調、血液学的作用、尿細管損傷」(PATTY(4th, 2000))、「神経症状、体重減少、溶血性貧血、網内系のヘモジデリン沈着」(ACGIH(7th, 2001))等の記述があることから、肝臓、神経系、血液系、腎臓が標的臓器と考えられた。なお、実験動物に対する影響は、区分1に相当するガイダンス値の範囲でみられた。 以上より、分類は区分1(肝臓、神経系、血液系、腎臓)とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分2 - - H401: 水生生物に毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
魚類(ファットヘッドミノー)の96時間LC50=7.85×103μg/L(AQUIRE、2003)から、区分2とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分2 - H411: 長期継続的影響によって水生生物に毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P391: 漏出物を回収すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
急性毒性が区分2、生物蓄積性が低いと推定されるものの(log Kow=-0.4(既存化学物質安全性点検データ))、急速分解性がない(BODによる分解度:0%(既存化学物質安全性点検データ))ことから、区分2とした。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

厚生労働省モデルラベル

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厚生労働省モデルSDS

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