GHS分類結果

名称:フェノール
CAS番号:108-95-2

結果:
物質ID: 61
分類実施者: GHS関係省庁連絡会議
分類実施年度: 平成18年度
使用マニュアル: GHS分類マニュアル(H18.2.10版)

物理化学的危険性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 爆発物 分類対象外 - - - - 爆発性に関する原子団を含まない。
2 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
3 エアゾール 分類対象外 - - - - エアゾール製品でない。
4 支燃性/酸化性ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
5 高圧ガス 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
6 引火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
7 可燃性固体 区分外 - - - - 国連危険物輸送勧告がクラス・区分6.1(国連番号1671)。
8 自己反応性化学品 分類対象外 - - - - 爆発性、あるいは自己反応性に関する原子団を含まない。
9 自然発火性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
10 自然発火性固体 区分外 - - - - 常温の空気と接触しても自然発火しない(発火点715℃(ICSC,2004))。
11 自己発熱性化学品 分類できない - - - - 液体状の物質に適した試験方法が確立していない(融点43℃(ICSC,2004)、試験温度140℃)。
12 水反応可燃性化学品 分類対象外 - - - - 金属または半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含まない。
13 酸化性液体 分類対象外 - - - - GHSの定義における固体である。
14 酸化性固体 分類対象外 - - - - フッ素および塩素を含まず、酸素を含む有機化合物であるが、この酸素が炭素、水素以外の元素と化学結合していない。
15 有機過酸化物 分類対象外 - - - - -O-O-構造を含まない有機化合物である。
16 金属腐食性物質 区分外 - - - - 国連危険物輸送勧告がクラス・区分6.1(国連番号1671)。

健康に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
1 急性毒性(経口) 区分4 警告 H302: 飲み込むと有害 P301+P312: 飲み込んだ場合:気分が悪いときは医師に連絡すること。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P330: 口をすすぐこと。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットを用いた経口投与試験のLD50値 414 mg/kg(環境省リスク評価第1巻(2002)),512 mg/kg(EHC 161(1994))、400 mg/kg(EHC 161(1994))、340 mg/kg(EHC 161(1994))、445 mg/kg(EHC 161(1994))に基づき、計算式を適用して区分4とした。LD50=375 mg/kg
1 急性毒性(経皮) 区分3 危険 H311: 皮膚に接触すると有毒 P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。
P322: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P361: 汚染された衣類を直ちに全て脱ぐこと。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ラットを用いた経皮投与試験のLD50値670 mg/kg(EHC 161(1994))に基づき、区分3であった。また、ウサギを用いた経皮投与試験のLD50値850 mg/kg及び1,400 mg/kg(EHC 161(1994))に基づき、計算式を適用した結果は区分3であった。ウサギよりラットの方が値が低く、これを採用し区分3に分類した。
1 急性毒性(吸入:ガス) 分類対象外 - - - - GHSの定義による固体であるため、ガスでの吸入は想定されず、分類対象外とした。
1 急性毒性(吸入:蒸気) 分類できない - - - - データなし。
1 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) 分類できない - - - - データなし。
2 皮膚腐食性/刺激性 区分1A-1C 危険 H314: 重篤な皮膚の薬傷及び眼の損傷 P301+P330+P331: 飲み込んだ場合:口をすすぐこと。無理に吐かせないこと。
P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。
P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P363: 汚染された衣類を再使用する場合には洗濯をすること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ウサギを用いた皮膚刺激性試験のデータ(EHC 161(1994))及びヒトへの健康影響のデータ(EHC 161(1994))から皮膚腐食性があると判断し区分1とし、細区分できるデータがないため1A-1Cとしたが、安全性の観点から、1Aとした方が望ましい。
3 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 区分1 危険 H318: 重篤な眼の損傷 P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。
P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。
P310: 直ちに医師に連絡すること。
ウサギを用いた眼刺激性試験のデータ(EHC 161(1994))から数値的表示はないが10%グリセリン溶液、又は5%水溶液の眼への適用で「角膜の完全な混濁がみられた」とあり、眼に対する非可逆的作用と判断し区分1とした。
4 呼吸器感作性 分類できない - - - - データなし。
4 皮膚感作性 区分外 - - - - モルモットを用いたMugnussen and Kligman skin sensitization test(EHC 191(1994))、マウスを用いたMEST法(NITE初期リスク評価書 No.32(2005))でともに陰性、及びヒトボランティアの試験(NITE初期リスク評価書 No.32(2005))で陰性のため、区分外とした。
5 生殖細胞変異原性 区分1B 危険 H340: 遺伝性疾患のおそれ P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
CERI・NITE有害性評価書 No.32(2005)、NTP DB(Access on Dec., 2005)の記述から、経世代生殖細胞変異原性試験なし、生殖細胞in vivo変異原性試験(染色体異常試験)で陽性であることから、区分1Bとした。
6 発がん性 区分外 - - - - IARC(1999)で3、ACGIH(2005)でA4、IRIS(2002)でDに分類されていることによる。
7 生殖毒性 区分1B 危険 H360: 生殖能又は胎児への悪影響のおそれ P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。
P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。
P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。
P281: 指定された個人用保護具を使用すること。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
CERI・NITE有害性評価書No.32(2005)の記述から、親動物に一般毒性影響のみられない用量で、産児数の減少がみられたこと(Narotsky and Kavlock. 1995)による。
8 特定標的臓器毒性(単回暴露) 区分1(呼吸器、心血管系、腎臓、神経系) 危険 H370: 臓器の障害(呼吸器、心血管系、腎臓、神経系) P307+P311: 暴露した場合:医師に連絡すること。
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。
P405: 施錠して保管すること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトについては、「心臓、血管に対する影響」、「呼吸数過多、呼吸困難、心臓律動不整、心血管性ショック、重度の代謝性アシドーシス、メトヘモグロビン血症、急性腎不全、腎臓障害、暗色尿、けいれんなどの神経系への影響」(CERI・NITE有害性評価書 No.32(2005))、「心臓の律動異常」(EHC 161(1994))、「不整脈及び徐脈」(ATSDR(1998))等の記載、実験動物については、「瞳孔反射の強い抑制」(CERI・NITE有害性評価書 No.32(2005))の記載があることから、呼吸器、心血管系、腎臓、神経系が標的器官と考えられた。なお、実験動物に対する影響はいずれも区分1に相当するガイダンス値の範囲でみられた。 以上から、分類は区分1(呼吸器、心血管系、腎臓、神経系)とした。
9 特定標的臓器毒性(反復暴露) 区分1(心血管系、肝臓、消化管、血液系、腎臓、脾臓、胸腺、中枢神経系) 危険 H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(心血管系、肝臓、消化管、血液系、腎臓、脾臓、胸腺、中枢神経系) P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。
P264: 取扱後は...よく洗うこと。
P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。
P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
ヒトについては、「心血管系疾患に起因する死亡率の増加」(CERI・NITE有害性評価書 No.32(2005))、「非抱合型新生児高ビリルビン血症」(EHC 161(2000))、「吐き気、嘔吐、下痢、腹痛、溶血性貧血、メトヘモグロビン血症、糸球体変性、尿細管壊死, 乳頭細胞出血」(ATSDR(1998))等の記述、実験動物については、「赤血球数の有意な減少、腎臓で尿細管のタンパク円柱及び壊死、乳頭の出血、脾臓/胸腺の萎縮/壊死、肝細胞の空胞変性、中枢神経系への重篤な影響(傾斜板試験上での行動)、肝臓障害」(CERI・NITE有害性評価書 No.32(2005))等の記述があることから、心血管系、肝臓、消化管、血液系、腎臓、脾臓、胸腺、中枢神経系が標的臓器と考えられた。なお、実験動物に対する影響は、区分1に相当するガイダンス値の範囲でみられた。 以上より、分類は区分1(心血管系、肝臓、消化管、血液系、腎臓、脾臓、胸腺、中枢神経系)とした。
10 吸引性呼吸器有害性 分類できない - - - - データなし。

環境に対する有害性
危険有害性項目 分類結果 シンボル 注意喚起語 危険有害性情報 注意書き 分類根拠・問題点
11 水生環境有害性(急性) 区分2 - - H401: 水生生物に毒性 P273: 環境への放出を避けること。
P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。
甲殻類(ネコゼミジンコ属)の48時間LC50=3.1mg/L(EU-RAR、2002)から、区分2とした。
11 水生環境有害性(長期間) 区分外 - - - - 急速分解性があり(BODによる分解度:85%(既存化学物質安全性点検データ))、かつ生物蓄積性が低いと推定される(log Kow=1.46(PHYSPROP Database、2005))ことから、区分外とした。


分類結果の利用に関する注意事項:
 政府による分類結果は、GHSに基づくSDSやラベル作成の際に自由に引用および複写を行うことができます。ただし、引用および複写をした上で作成されたSDS・ラベルの内容に対する責任は、SDS・ラベル作成者にあることにご留意ください。
 本分類結果は、分類ガイダンス等のマニュアルで定められている情報源と判定方法に基づくものであり、あくまでもSDSやラベル作成の際の参考として公表しているものです。他の文献や試験結果等を根拠として、本内容と異なる分類結果でSDSやラベルを作成することを妨げるものではありません。

参考情報:
使用マニュアル

解説・用語集(エクセルファイル)

厚生労働省モデルラベル

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厚生労働省モデルSDS

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