名称:トルエン
CAS番号:108-88-3
物質ID: | 45 |
分類実施者: | GHS関係省庁連絡会議 |
分類実施年度: | 平成18年度 |
使用マニュアル: | GHS分類マニュアル(H18.2.10版) |
危険有害性項目 | 分類結果 | シンボル | 注意喚起語 | 危険有害性情報 | 注意書き | 分類根拠・問題点 | |
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1 | 爆発物 | 分類対象外 | - | - | - | - | 爆発性に関する原子団を含まない。 |
2 | 可燃性/引火性ガス(化学的に不安定なガスを含む) | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における液体である。 |
3 | エアゾール | 分類対象外 | - | - | - | - | エアゾール製品でない。 |
4 | 支燃性/酸化性ガス | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における液体である。 |
5 | 高圧ガス | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における液体である。 |
6 | 引火性液体 | 区分2 | 危険 | H225: 引火性の高い液体及び蒸気 |
P303+P361+P353: 皮膚(又は髪)に付着した場合:直ちに汚染された衣類を全て脱ぐこと/取り除くこと。皮膚を流水/シャワーで洗うこと。 P370+P378: 火災の場合:消火するために...を使用すること。 P403+P235: 換気の良い場所で保管すること。涼しいところに置くこと。 P210: 熱/火花/裸火/高温のもののような着火源から遠ざけること。−禁煙。 P233: 容器を密閉しておくこと。 P240: 容器を接地すること/アースをとること。 P241: 防爆型の電気機器/換気装置/照明機器/...機器を使用すること。 P242: 火花を発生させない工具を使用すること。 P243: 静電気放電に対する予防措置を講ずること。 P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
ICSC(2004)による引火点は4℃(密閉式)、かつ沸点は111℃であり、「区分2」に該当する。国連危険物輸送勧告ではクラス3、容器等級II(国連番号1294)。 | |
7 | 可燃性固体 | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における液体である。 |
8 | 自己反応性化学品 | 分類対象外 | - | - | - | - | 爆発性、あるいは自己反応性に関する原子団を含まない。 |
9 | 自然発火性液体 | 区分外 | - | - | - | - | 常温の空気と接触しても自然発火しない(発火点480℃(ICSC,2004))。 |
10 | 自然発火性固体 | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における液体である。 |
11 | 自己発熱性化学品 | 分類できない | - | - | - | - | 液体状の物質に適した試験方法が確立していない。 |
12 | 水反応可燃性化学品 | 分類対象外 | - | - | - | - | 金属または半金属(B, Si, P, Ge, As, Se, Sn, Sb, Te, Bi, Po, At)を含まない。 |
13 | 酸化性液体 | 分類対象外 | - | - | - | - | 酸素、フッ素または塩素を含まない有機化合物である。 |
14 | 酸化性固体 | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義における液体である。 |
15 | 有機過酸化物 | 分類対象外 | - | - | - | - | -O-O-構造を含まない有機化合物である。 |
16 | 金属腐食性物質 | 区分外 | - | - | - | - | 国連危険物輸送勧告がクラス3(国連番号1294)。 |
危険有害性項目 | 分類結果 | シンボル | 注意喚起語 | 危険有害性情報 | 注意書き | 分類根拠・問題点 | |
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1 | 急性毒性(経口) | 区分5 | - | 警告 | H303: 飲み込むと有害のおそれ | P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。 | ラットに対する経口投与のLD50=2,600、5,500、5,580、5,900、6,400、7,000、7,530 mg/kg(EU-RAR No.30(2003))に基づき、計算式を適用して区分した。LD50(計算値)=4,800 mg/kgから、区分5とした。 |
1 | 急性毒性(経皮) | 区分外 | - | - | - | - | ラットに対する経皮投与のLD50=12,000 mg/kg(ACGIH(7th, 2001))、ウサギに対するLD50=14,100 mg/kg(EHC 52(1985))に基づき、小さい値を採用して、区分外とした。 |
1 | 急性毒性(吸入:ガス) | 分類対象外 | - | - | - | - | GHSの定義による液体であるため、ガスでの吸入は想定されず、分類対象外とした。 |
1 | 急性毒性(吸入:蒸気) | 区分4 | 警告 | H332: 吸入すると有害 |
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。 P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。 P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。 P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。 |
ラットに対する吸入暴露のLC50(4時間)=12.5、28.1、28.8、33 mg/L(EU-RAR No.30(2003))に基づき、計算式を適用して区分する。LC50(計算値)=18 mg/Lは換算係数(25℃)1 mg/m3=0.265 ppmを用いると4,800 ppmと算出される。飽和蒸気圧(25℃)=3.3 kPaにおける飽和蒸気圧濃度(25℃)=33,000 ppmである。したがって、LC50=4,800 ppmは飽和蒸気圧濃度の90%より低い濃度であるので、「ミストがほとんど混在しない蒸気」と考えられ、ppm濃度基準値で分類して、区分4とした。 | |
1 | 急性毒性(吸入:粉塵、ミスト) | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
2 | 皮膚腐食性/刺激性 | 区分2 | 警告 | H315: 皮膚刺激 |
P302+P352: 皮膚に付着した場合:多量の水と石鹸で洗うこと。 P332+P313: 皮膚刺激が生じた場合:医師の診断/手当てを受けること。 P264: 取扱後は...よく洗うこと。 P280: 保護手袋/保護衣/保護眼鏡/保護面を着用すること。 P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。 P362: 汚染された衣類を脱ぎ、再使用する場合には洗濯をすること。 |
EU-RAR No.30(2003)のウサギを用いた皮膚一次刺激性(4時間適用)試験結果の記述から、トルエンは中等度(moderate)の皮膚刺激性を示し、区分2とした。 | |
3 | 眼に対する重篤な損傷性/眼刺激性 | 区分2B | - | 警告 | H320: 眼刺激 |
P305+P351+P338: 眼に入った場合:水で数分間注意深く洗うこと。次にコンタクトレンズを着用していて容易に外せる場合は外すこと。その後も洗浄を続けること。 P337+P313: 眼の刺激が続く場合:医師の診断/手当てを受けること。 P264: 取扱後は...よく洗うこと。 |
EU-RAR No.30(2003)のウサギを用いたOECD test guidelineに準拠した眼刺激性試験結果の記述から、7日間で回復するので、トルエンは軽度の眼刺激性を示すと考えられ、区分2Bとした。 |
4 | 呼吸器感作性 | 分類できない | - | - | - | - | データなし。 |
4 | 皮膚感作性 | 区分外 | - | - | - | - | EU-RAR No.30(2003)のモルモットを用いたマキシマイゼーション法試験結果の記述から、トルエンは皮膚感作性を有しないと考えられ、区分外とした。 |
5 | 生殖細胞変異原性 | 区分外 | - | - | - | - | EHC 52(1986)、EU-RAR No.30(2003)、IARC 71(1999)、ATSDR(2000)の記述から、経世代変異原性試験(優性致死試験)で陰性、生殖細胞in vivo変異原性試験なし、体細胞in vivo変異原性試験(小核試験、染色体異常試験)で陽性、生殖細胞in vivo遺伝毒性試験なしであるが、in vivoでの陽性結果ははっきりとした陽性結果はなく、結果表に「+」と記載されている評価書もあるが、いずれも総合判断としては陰性としており(EUでは結果表でもすべて陰性としている)、また1970年代に旧ソ連で行われた実験ではベンゼンの混入が疑われ、Priority1の評価書では総じて陰性と判断している。したがって、他に陰性結果の試験が6試験あることも考慮し総合的に判断してin vivo変異原性試験は陰性と判断し、区分外とした。 |
6 | 発がん性 | 区分外 | - | - | - | - | IARC(1999)でグループ3、ACGIH(2001)でA4、EPA(2005)でDに分類されていることから区分外とした。 |
7 | 生殖毒性 | 区分1A | 危険 | H360: 生殖能又は胎児への悪影響のおそれ |
P308+P313: 暴露又は暴露の懸念がある場合:医師の診断/手当てを受けること。 P201: 使用前に取扱説明書を入手すること。 P202: 全ての安全注意を読み理解するまで取り扱わないこと。 P281: 指定された個人用保護具を使用すること。 P405: 施錠して保管すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
IRIS Toxicological review(2005)、EU-RAR No.30(2003)、IARC 71(1999)、IARC 47(1989)、EHC 52(1986)、ATSDR(2000)の記述から、ヒト疫学研究でトルエン暴露による自然流産の増加、妊婦のトルエン乱用による新生児の発育異常・奇形、トルエン暴露による血漿中の黄体形成ホルモン、テストステロン濃度の減少が示唆されており、EU RAR30(2003)ではNg et al.,1992の報告から"the study suggests an increased risk of late spontaneous abortions associated with exposure to toluene at levels around 88 ppm(range 50-150 ppm). The results of this study are used as a basis for the risk characterisation of developmental toxicity in humans."と結論していることから区分1Aとした。動物試験では、ラット及びマウスの催奇形性試験において母動物に一般毒性のみられない用量で、死亡胎児・骨化遅延の増加、胸骨分節の減少・未骨化、肋骨の奇形(shift in rib profile)、過剰肋骨、骨格の発達遅延、反射反応の遅延、学習障害、膣開口日齢及びtime of testes descentの早期化がみられている。なお、Da-Silva et al.(1991)によると、授乳を介した発生毒性への影響はみられなかったが、トルエンの母乳への蓄積がみとめられている。 | |
8 | 特定標的臓器毒性(単回暴露) | 区分1(中枢神経系)、区分3(気道刺激性、麻酔作用) |
警告 危険 |
H336: 眠気又はめまいのおそれ(気道刺激性、麻酔作用) H370: 臓器の障害(中枢神経系) H335: 呼吸器への刺激のおそれ(気道刺激性、麻酔作用) |
P304+P340: 吸入した場合:空気の新鮮な場所に移し、呼吸しやすい姿勢で休息させること。 P307+P311: 暴露した場合:医師に連絡すること。 P403+P233: 換気の良い場所で保管すること。容器を密閉しておくこと。 P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。 P261: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーの吸入を避けること。 P264: 取扱後は...よく洗うこと。 P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。 P271: 屋外又は換気の良い場所でのみ使用すること。 P312: 気分が悪いときは医師に連絡すること。 P321: 特別な処置が必要である(このラベルの...を見よ)。 P405: 施錠して保管すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
ヒトについては、「トルエンは、主に吸入によって速やかに吸収され中枢神経系に作用する。50-100 ppm で疲労感、眠気、めまい、軽度の呼吸器系への刺激をもたらす。200-400 ppm では興奮状態となり、錯感覚や吐き気を伴う。500-800 ppm になると中枢神経系の抑制が現れ、酩酊、精神錯乱、歩行異常などがみられる。」(CERIハザードデータ集 96-4(1997))、「眼、鼻、喉へに対する刺激」(EU-RAR No.30(2003))等の記述、実験動物については、「麻酔」(EU-RAR No.30(2003))等の記述があることから、中枢神経系が標的臓器と考えられ、気道刺激性、麻酔作用を示した。 以上より、分類は区分1(中枢神経系)、区分3(気道刺激性、麻酔作用)とした。 | |
9 | 特定標的臓器毒性(反復暴露) | 区分1(中枢神経系、腎臓、肝臓) | 危険 | H372: 長期にわたる、又は反復暴露による臓器の障害(中枢神経系、腎臓、肝臓) |
P260: 粉じん/煙/ガス/ミスト/蒸気/スプレーを吸入しないこと。 P264: 取扱後は...よく洗うこと。 P270: この製品を使用するときに、飲食又は喫煙をしないこと。 P314: 気分が悪いときは、医師の診断/手当てを受けること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
ヒトについては、「トルエンには薬物依存性があり、トルエンの嗜好的吸入により視野狭窄または眼振や難聴を伴う頭痛、振戦、運動失調、記憶喪失といった慢性的中枢神経障害が報告されている。CT 検査により脳萎縮が観察され、血尿やタンパク尿など腎機能障害も報告されている。」(CERIハザードデータ集 96-4(1997))、「難聴、脳幹聴性誘発電位の変化」(ATSDR(2000))、「SGOTの上昇、肝細胞の脂肪変性やリンパ球浸潤を伴う肝毒性」(EU-RAR No.30(2003))等の記述があることから、中枢神経系(脳、内耳への影響を含む)、腎臓、肝臓が標的臓器と考えられた。 以上より、分類は区分1(中枢神経系、腎臓、肝臓)とした。 | |
10 | 吸引性呼吸器有害性 | 区分1 | 危険 | H304: 飲み込んで気道に侵入すると生命に危険のおそれ |
P301+P310: 飲み込んだ場合:直ちに医師に連絡すること。 P331: 無理に吐かせないこと。 P405: 施錠して保管すること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
炭化水素であり、動粘性率は0.65 mm2/s(25℃)(計算値)である。 よって区分1とした。 |
危険有害性項目 | 分類結果 | シンボル | 注意喚起語 | 危険有害性情報 | 注意書き | 分類根拠・問題点 | |
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11 | 水生環境有害性(急性) | 区分2 | - | - | H401: 水生生物に毒性 |
P273: 環境への放出を避けること。 P501: 内容物/容器を...に廃棄すること。 |
甲殻類(ブラウンシュリンプ)の96時間EC50=3.5mg/L(EU-RAR、2003)他から、区分2とした。 |
11 | 水生環境有害性(長期間) | 区分外 | - | - | - | - | 急速分解性があり(BODによる分解度:123%(既存化学物質安全性点検データ))、かつ生物蓄積性が低いと推定される(log Kow=2.73(PHYSPROP Database、2005))ことから、区分外とした。 |
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